70か国以上の多国籍な従業員をマネジメントする経営者に聞いた、ビジネス視点から考察する「人間関係のあるべき姿」
こんにちは!ニューヨークでコリビング(Co-living)ビジネスを展開する「Crossover」が提供する、起業家支援プログラムに参加している増澤望美です。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」
日本でベストセラーとなった、心理学者アルフレッド・アドラーの心理学を解説した書籍。その中で潔いほどハッキリと断言されている言葉です。
今回のプログラム中、グローバル環境下で組織をマネジメントする経営者より話を聞く機会がありました。お聞きしたのは、従業員とのコミュニケーションなど「人間関係」に関するポイント。
日頃から従業員と丁寧なコミュニケーション行うことや、個々が発揮できる能力や役割を知っておくこと。
それが円滑な人間関係構築し、組織づくりに活かせる秘訣ではないかと感じたのでご紹介します。
想定外のできごとを乗り越えるには。仲間と価値観を共有できる関係づくりこそが重要
「ビジネスで予想外のことが起こるのは当たり前。ただそのときに一緒にビジネスを行う仲間との意思疎通がスムーズに進むよう、日頃からコミュニケーションを取っておくことが大事ではないか?」
わたしがそう感じたのは、フィラデルフィアで活躍する経営者のお話からでした。その方は70か国以上の国からきた多種多様な従業員を雇用しています。
たとえば、制服を作り、従業員に配布しようとしたときのこと。ある国の従業員が絶対に着ないと拒否したそうです。
わけを聞くと、その制服の色が自国で「不倫をした人」を意味するものだったから、とのことでした。
また別のときには、ある国の従業員が次々に辞めていく事態が発生。何ごとかと思い調べたところ、その国の身分制度が関係していたとのことでした。
「自国では自分より身分の低い人が、上司になるのは我慢ならない」との理由で、身分の高い授業員が辞めてしまったのです。
これらのできごとは日本の常識では考えにくく、起こりうるすべてを予想するのは正直、難しく感じました。
ただ日頃から従業員とコミュニケーションを取り、お互いの価値観を理解しやすい関係性を作っておけば、いざ衝突が起こったとしても、それを最小限に留めることができるかもしれません。
相手を気にかける、そして知ろうとする姿勢をつねに持っておくこと。
よい人間関係を築くためのすべてのベースですが、こうした日々の小さな積み重ねが、いざというとき大事になってくるのではないかと感じました。
社員それぞれの個性や価値観を生かすことこそ、組織づくりには大切
「自分とは違う意見を持つ人でも、人それぞれの得意分野や能力がある」
ニューヨークの経営者からのアドバイスで、そう気づくことができました。
かつてわたしは「よい組織とは関わる全員が経営者視点を持ち、会社の目標や数字をつねに意識して行動できること」だと考えていました。
ところがニューヨークの日本人経営者のもとで働く、ある従業員と会話をしたときのこと。彼から聞いたのは「自分は会社の経営には、まったく興味がない」という言葉でした。
それを聞いて感じたのは、絶望にも似た寂しさと、孤独。その会社のトップの方が、従業員のことを気にかけ、大切にされている方だったので、なおさらでした。
「自社の経営に関心を持つことは社員として当たり前」と考えていたわたしにとって、もしそうではない人と一緒にビジネスをしなければいけなくなった場合、果たして円滑なコミュニケーションが取れるのかと悩みました。
そのような悩みを、ある経営者の方に相談し、いただいたアドバイスは「人にはそれぞれできることがあって、役割がある」ということ。
その方は社員がなにをやりたいか、どこまでできるのかを、相手と一緒に考えながら仕事をまかせているそうです。キャパシティ以上のことを求めてしまうと、お互いに苦しくなってしまうからです。
それを聞いたわたしは、「経営には興味がない」と言い放った彼も、もしかすると経営視点とは別のところで、能力を発揮しているのかもしれないと思うようになりました。
たとえば、管理能力が抜群に優れていたとすると、社内ルールを整備し、社員が秩序を守るための仕組みづくりが得意かもしれません。
そうすると、社員をまとめることに長けているので、結果的に会社の経営を支えていることになるでしょう。
このように「人それぞれに得意なことがあって、それをだれかのために生かすことができる」と考えられるようになったのは、ニューヨークにくる前後で、わたしが大きく変わったところ。
なぜなら、優秀な経営者の方々とお会いすることができたからです。新たな視点や物ごとの捉え方は、今後の人生に生かせる、大きな学びとなりました。