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東京寫眞帖

清水窪弁財天

2020.04.26 11:19

まるまる1週間在宅勤務、という初めての体験を終えたこの週末。

仕事の合間になんどもラジオ体操やらストレッチやらをして体を動かしてはいたものの、さすがにすこし歩きたい。

不要不急の外出と健康を保つための散歩の境界線は限りなく曖昧なのだけれど、多少は歩かないと終いには達磨になる… と心の中で言い訳をして玄関を出た。


春一番のような強い風が吹く午後。

この風がコロナとやらをサーっと飛ばし去ってくれたらいいのに、と考えながら歩く。

1時間くらい歩くつもりで外に出たが、あてもなく歩くのは難しいので、大岡山の清水窪弁財天を目指してみることにした。

実はこれまで何度か行こうとしては微妙に道に迷ったりして、たどり着けずにいる。かれこれ十年近く、その弁天様には会えずじまいなのだ。

今日こそは。


せっかくなので、ハナミズキを見ていこうと思った。

旗の台の昭和大学の前は立会緑道という桜並木で、その途中、洗足駅のほうにむかって延山通が伸びている。ハナミズキで彩られたその坂道を久しぶりに歩いてみたくなった。

午後の日差しがまぶしい。

ハナミズキは白もピンクもどちらもきれいだけれど、自分はピンクのほうが好き。

日の光を透かした花びらは、友禅のぼかしのようだ。

で、途中にこんな看板が。

いやあ… 顔がこわいなあ。

なんか、この切り揃えられた髪、古代エジプトの女性みたいな感じ。

それにしても白目なのがホントこわい。


洗足駅を越えて環七に出てしばらく歩いたところで、例によって迷いかけた。

いつも、環七沿いを歩くうちに曲がる角を間違えるのだ。

すでにして曲がるべき角を通り過ぎてはいたが、今日はちゃんと地図を持参したので大丈夫。別の道から弁天様に行くことにした。

と言いつつ、その後も細い道に惑わされたりしたのだけれど、ようやくたどり着きました。


清水窪。

「くぼ」というだけあって、住宅街のこの場所だけ、がくんと土地が窪んでいる。

弁天様への入り口もこんなふうに階段で降りて行くようになっていた。

弁天様の祠の向こうには滔々と滝が流れ落ちていた。うまく写真に撮れなかったなあ… 

ところで境内の案内板によると、ここの弁天様は今は神格が上がって天八大龍王神となった、とのこと。

弁天様は当然女性だけれど、龍王と聞くとどうも男性をイメージする。神格が上がると性別も変わるのか… 神仏には本当は男性も女性もないのかもしれない。

境内には弁天様…じゃなくて龍王神の祠が浮かぶこじんまりとした池があり、池のほとりには小さな祠がいくつも並んでいた。祠の前には神号を記した五色の旗が風にはためき、崖地の陰りや鬱蒼と枝を伸ばした樹々と相まって、一種独特の雰囲気だ。曇りや雨の日だったらちょっと怖いと思うかもしれない。

昔々にこの土地の地主が、清水湧き出るこの場所に異常な霊威を感じて弁天様をお祀りしたのだそうだが、昔は日も差さないほどの杉の森だったというから、昼なお暗い森、こんこんと湧き続ける水に神を見たのも頷ける。


龍王神の境内を後にして、清水窪から洗足池まで続く暗渠をたどる。

地図で見ると川の跡であることが一目瞭然の、緩やかなカーブを描く道だ。

目黒線を越えてしばらくすると、子どもたちの歓声が聞こえはじめ、家族連れの姿がちらほら見えるようになった。

洗足池はもうすぐそこだ。


洗足池は大昔の海の名残だという話もあるらしい。このあたりまで海だったとは疑わしいと考える人もいるようだが、陸地に取り残された海、というのは少しロマンチックな感じがする。

海のなぎさを歩き、

海のほとりに佇む。

海の名残と思えば、よく見知ったはずの景色も違って見える。

吹き付ける風の強さも、打ち寄せる波の音も、それは太古の時空につながっている。