フェミニズムの地平Ⅱ
高まる「#MeToo」 社会の転換点に 詩織さんから勇気もらった女性たち「もう黙らない」
2019年12月19日 東京新聞転載
性暴力被害を巡る訴訟の判決後、東京地裁前で「勝訴」と書かれた紙を掲げるジャーナリストの伊藤詩織さん=18日午前
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勝訴判決までには、「#MeToo」の高まりなど、性暴力被害者を巡る国内外の変化があった。
日本外国特派員協会で記者会見する伊藤詩織さん=2017年10月24日、東京都千代田区で
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二〇一七年の伊藤さんの告発会見は、大勢の被害者を勇気づけてきた。翌一八年、テレビ朝日の女性社員が、当時の財務事務次官のセクハラを告発。東京都内では若者が性暴力に「私たちは黙らない」と訴える街頭行動を始めた。性的対象として女子大学生をランク付けする雑誌の特集に、当事者の大学生らが編集部に抗議し、対話を求めた。
今年三月に相次いだ性犯罪事件を巡る無罪判決が、さらに世論を動かした。嫌がる娘をレイプした実父が無罪となるなど、被害実態を反映しない司法への抗議から、四月に東京駅前で花を持って被害者に思いを寄せるフラワーデモがスタート。毎月一度のデモは各地に広がり、今月は全国の三十一都市で開催された。デモでは一般の参加者がマイクを握り、震える声で被害体験を告白している。
性暴力の被害者の告白に耳を傾け、根絶を訴える支援者たち=JR浦和駅前で
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二年前に職場の上司から性暴力を受けた関東地方の女性(36)は、今回の判決のニュースを知り「勇気づけられた」と涙ぐんだ。
自らの被害の数カ月後、伊藤さんの会見が報じられ、会社に訴えようと決意。加害者は事実関係を認めたが、口頭注意だけで処分は終わった。「詩織さんがいなかったら、私も泣き寝入りしていた。(判決が)日本社会の転換点になってほしいです」と話した。
性犯罪の現場は多くが密室で、立証が難しい。だが判決は、伊藤さんの供述や事後の行動を、被告の主張と比較して丁寧に検討し、一貫性や合理性を認めた。裁判を傍聴してきた作家の北原みのりさんは「詩織さんの闘いの意味を認め、被告の言い分を完全否定した強い判決。社会が被害者の声を聞き取ることが重要だと感じる。この判決が来年の刑法見直しにつながってほしい」と期待を込めた。(出田阿生)