赦しの花
娘の自死からそれほど日をおかず、2017年2月初めに『レウイシア』という花の鉢植えを私は二つ購入し、二階にある居間のベランダに並べて飾りました。
そのうちの“一つ”が今年もまた花を咲かせているのを見ると、自責の念が少しだけ弱まります。
三年前の購入時には“二つ”の鉢植えだったレウイシア。
その当時の写メが、スマホに保存されていたのを見つけました。
📸レウイシア、別名イワハナビ(岩花火)
近所の店先に売られていた、パッと明るい鮮やかな色と整った形の華やかな花を手に取ったのは、事後間もない頃の荒んだ自分の心と、寂しく暗い穴倉のようになってしまった家庭の雰囲気を、少しでも明るくしてくれる何かを求めていたからだと思います。
色味と形が微妙に違う、二種類のレウイシアの鉢植えを買い、家族皆の目につく、二階居間のベランダに飾ったのです。
亡き子が生前、寝そべってゲームをしていた場所からもよく見えます。
* * レウイシア * *
4月から5月頃に花を咲かせる多年草の植物。
アメリカ北西部の岩に着生して育つ多肉植物で、冬の寒さには強く、雪が降っても枯れる事はありませんが、高山植物なので暑さには弱く、暖地では花後の5月を過ぎると枯れてしまう事が多い。
花言葉は、ほのかな思い、熱い思慕。
さいたま市内の夏は猛暑なので、開花時期が終わり6月に入る頃には、エアコンの効いた室内に入れて大事に育てていました。
ところが二つのうちの一つ、黒い鉢の方は、ある日突然枯れてしまったのです。
――同じように大切に育てていたのに、何がダメだったのだろう………。
その時、ふと思いました。
私には六つ年の離れた二人娘がいて、どちらも特別扱いなどすることなく、大したことをしてあげたわけでもないのですが自分なりに懸命に世話をして育ててきました。
東北から埼玉に引っ越して住居が変わったこと以外は、育った家庭環境にも特別な違いはなかったはずです。
なのになぜ、次女はこんなことになってしまったのでしょう。
学校で、極端なイジメや、誰が見ても酷過ぎるパワハラ的な教師からの指導などもありませんでした。(たぶん)
どちらかと言えば長女の方が中学生時代に、同じ部活内の同級生に「死ね!」と暴言を吐かれたりして苦しんでいました。
もちろん私は親として出来る限りのことを先生にも願い出て、それらを解決してきました。
他にも眼鏡を壊されたり、様々なことがありましたけど、長女は自死しませんでした。
亡き子も、学校での嫌なことは家で話してくれていたので、それこそ私と長女とで、一緒に悩みを聴いてあげたり、部の顧問からの心無い対応があったときにも、直接電話で話しをし解決してきました。
(しかも長女に比べると友達も多く、自宅にも頻繁に連れてきて騒いでいたような子だったのに)
――同じように育ててきたのに、なぜ?
でもこの時、鉢植えの一つが突然枯れてしまったのを見ていて、少しだけ気持ちの落としどころを見つけたように思いました。
元気に咲いていた多年草の花を見て、まさか片方だけワンシーズンで枯れてしまうなんて、誰が予測できたでしょうと。
どちらも大切に育ててきたのに、なぜそうなってしまったのか。
土を掘り返して毎日根っこも観察していれば気が付いたんでしょうか?←そんなことをしたら二つとも枯れてしまった可能性の方が高くなりそうですが(^_^;)………。
予想もつかなかったことは誰の所為でもないのだと、ましてやどちらにも同じ愛情を注いできたのに、どうしてなのかという疑問も、はっきりとした答えが見つからない事もあるのだと、ほんの少し自分を赦せる材料になったようです。
病死、事故死、他殺による死、自然災害による死、医療ミスなども含め(他)、どういった死因であろうと、大抵の遺族は自責の念に苛まれてしまうようですが、自死(自殺)で大切な人を喪った場合の自責というのは、中でも複雑だと思いますし、何かの(誰かの)所為になかなか出来ないケースも多いので、そのぶん自責の念が大きくなってしまうのでしょう。
私もそれに漏れず、このような疑問と自責が常にあり、そういうときにはこの二つのレウイシアの花のことを思い出しています。
自分をほんの少しだけ赦せる気持ちになるような出来事でした。
📸枯れなかったほうのレウイシアは、去年大きめの鉢に移し替えたので、今年は更に根を伸ばし、色鮮やかな花数も増え、家の中を照らしてくれています。
しかし今年はニャンズが狙っているので(`・ω・´)更に更に用心せねばです。
◆手のり地蔵づくり◆