オフィスの存在意義が問われているが、それと同時に仕事の存在意義も問われている
ほぼリモートワークになってはや1ヶ月経つ。どうやら緊急事態宣言もあと1ヶ月程度延長されるようだ。ちなみに私が4月に外出したのは、全部で2回。8割どころか9割以上、外出を自粛できていることに自分自身でも驚いている。
先日、久しぶりに仕事のため、新宿に行ったが、変わり果てた街の光景に驚愕した。まさに北斗の拳の世界である。街は軒並みシャッターが閉まり、人もまばら。凄まじい光景である。
ただ、個人的に思うのが、この状況をあと1ヶ月も続くと、確実に経済状況は大変なことになるだろう。物凄く楽観的に考えると、感染者数も減少しているので、さっさと経済活動を再開したほうが良いのかもしれない。何事もバランスが大事なのだが、このままほぼほぼ経済活動を停止させると、その反動はとても大きいものであるように思う。
とはいえ、この1ヶ月散々リモートワークをやっていて気付いたこともたくさんある。それは、多くの企業が自社に必要以上の余剰人数を抱えていたということを理解し始めているということだ。もっとストレートにいえば、「無駄に人が多く働いていた」ことが鮮明になっている。
今回、リモートワークになり、どの企業もサービスの最適化を図らなければいけない局面に立たされているが、その局面において、圧倒的に人が余ってしまっている。これは「外出規制のため縮小せざるを得ない」という文脈と「サービスの最適化を進めると人が無駄に多いことに気づいた」というふたつの軸があり、混同しがちになるが、このふたつは根本的に異なる。
これを機に自社のサービスを見直してみると、あれ?こんなに人って必要ないよね?という企業がおそらく水面下では頻繁しているのではないだろうか。そうすると、いよいよ企業の人員整理は進み、社会構造は大きく変わっていくだろう。
「組織スラック」という概念がある。組織スラックとは、組織の余剰人材が組織間の衝突の緩衝材になり、またイノベーションを起こす源泉になる可能性を持つことがある。人が余剰であれば、その際にイノベーションが生まれやすく、新規事業を立ち上げやすい。このような組織スラックを上手く活用する企業も多いだろう。
これまではこの組織スラックを企業としてどのように活用するのかがとても重要だったのだが、今やその組織スラックの人員の最低限度数も減り始めている。これはテクノロジーの進化や情報取得ハードルが低いことが起因している。
そう考えると、これからますます企業は人員整理を進めていくだろう。逆に労働法上、それが困難な場合、企業は人件費というコストがとても重くのしかかる。
オフィスの存在意義が見直されている今、オフィスだけではなく、そこで働く人々の存在意義が見直され始めている。改めて、企業で働く人々は自分自身の能力、スキルを見つめ直さなければいけない。
今後、世界は大きなパラダイムシフトが起こるだろう。その際に自分がどうやって「メシを食うか」は当然重要になる。必要以上に贅沢をする必要はない。しかし最低限のメシも食わなければいけない。リーマンショック以降の、自分の会社は大丈夫だ、という時代は、終わりを迎えた。
また、今回のコロナの問題で、経営者や実業家、経営幹部層の大半の人間が自分自身の事業の立ち位置や今後の方針を真剣に考えている。しかし、サラリーマンのかたは、その意識は希薄なように感じる。自分の会社にも今、まさに危機が迫っていて、それが自分も影響を受けてしまうことを忘れてはならない。たとえそれが不条理であっても。