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陽は中天を過ぎて 2nd season

花咲く前

2020.05.01 03:58

今日は有休を取った。

夏日の午後、窓を全開にして風を入れる。

踏切の信号が鳴り、すぐ近くを電車がごとりごとりと重たい音を立てて通る。その振動で自分のいる部屋も揺れる。

隣の家からテレビの音。電話でもしているのか、くぐもった話し声にときどき大きな笑い声が混じる。

なんとも奇妙な4月が終わって、これだけ晴れあがっているのに屋内にいるのを余儀なくされる日々はまだ続く。

一年前の令和のはじまりの時、誰がこんな今日を予想しえただろう。

去年の4月、改元を目前にして自分はけっこうたくさんの書類を整理した。家でも会社でも。

古いもの、もう抱えきれないものは平成に置いていこう。そして新しい時代に踏み出していこう、と。なにかを変えたい、変わりたい、という漠然とした希望があった。

こうして今、ぽつんと家の中にいてふと思う。

それでもあの時、元号こそ平成から令和に変わったけれど、私たちの生活は以前と変わることなく、それどころかさらに速度を増していったのではなかったか。

元号が改まるというめったにない機会に、立ち止まって静かに自分を、周りを省みるような暇もなく、ただただ、これから迎える新時代、世界じゅうの人たちがこの日本に集まる数々のイベントに向けて、陽気に、跳びはねるように走ってきた。

私たちは、すくなくとも私は、古くなったなにものかを「平成に置いていこう」と決めていたにもかかわらず、気がつけばそれまで通りの毎日を送っていた。

やかんがしゅんしゅんと鳴る。

しばらく放って置いたらゴボゴボと激しく熱湯が噴き出して、慌てて火を止めた。

コーヒーを淹れる。

インスタントだけれど香りがいい。

ベランダに出る。

膨らんだエニシダの蕾が風に揺れる。目に鮮やかな黄色の花が咲くまであともう少し。

そしてきっと今は、私たちも花が咲く前。

未知の状況に怖れ戸惑いつつも、いままでにはあり得なかった時間の余裕を得て、来し方行く末を考えることができる。

風に身をまかせつつも、自分の花を大切にまもって、毎日を生きていく。そしていっせいに花開かせるそのときを待っている。


とりあえず、このひと月をぶじに乗り切ったことに記念?に今夜はワインを開ける予定なり。お酒を美味しくいただけることに感謝。