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天皇賞(春) 紹介記事

2020.05.01 10:04

 この記事は、今週末5/3(日)に行われる、GⅠ・天皇賞(春)を初心者向けに説明をする記事です。①天皇賞(春)ってどんなレース?②どんな馬が出走するの?の2章に分けて解説していきます。


 それではさっそく①天皇賞(春)ってどんなレース?から参りましょう。


 ①天皇賞(春)ってどんなレース?

 

 天皇賞(春)は、4歳以上限定・京都競馬場芝3200mで行われるGⅠレースです。皇族にちなむスポーツの大会には、サッカーの天皇杯などいろいろありますが、競馬の天皇賞はその元祖とも言えるものです。

 1880年に横浜競馬場(現在では馬の博物館という施設になっています)で行われたMikado’s Vaseというレースで明治天皇から銀製の花瓶が下賜されたことが始まりとされ、1905年のエンペラーズカップ(のちの帝室御賞典)へと繋がり、戦後の天皇賞へと引き継がれました。天皇皇后両陛下がご来場されて競馬を観戦される天覧競馬は、天皇賞(秋)においては2005年と2012年に行われ、優勝騎手の松永幹夫騎手やM・デムーロ騎手が最敬礼したことも話題となりました。

 

 天皇賞には、GW中の日曜日に京都競馬場芝3200mで行われる天皇賞(春)と、10月末(年によっては11月初旬)に東京競馬場芝2000mで行われる天皇賞(秋)があります。天皇賞は長らく「古馬の最高峰」の戦いとされており(古馬とは4歳以上の馬のこと)、現在でも有馬記念、ジャパンカップ、日本ダービーに次ぐ4位タイの1着賞金1億5000万円のレースでもあり、重賞視されているGⅠレースだと言えるでしょう。

 

 天皇賞(春)の特徴は何といっても、GⅠレースで一番長い3200mを走るマラソンレースであるということでしょう。向こう正面でスタートし、一度ゴール板を通過してもう1周して戻ってくる、京都競馬場を1周半ほどするコースになっています。そのため、1周目のゴール板を本当のゴールだと勘違いして、全力で走りそうになる馬もいたりします。

 馬は、騎手の抑える指示に応え、動くところで動く従順さや、長距離でも走り切るスタミナが求められます。

 騎手は、馬を上手にコントロールし、周りの馬の動向を見て位置取りを上げるのか脚を溜めるのかを判断する判断力が求められます。

 馬の能力ももちろんですが、距離が長い分、騎手の駆け引きを楽しめるのが天皇賞(春)の楽しみのひとつでもあります。

   

 では、伝統の長距離戦であるGⅠ・天皇賞(春)に出走するのはどのような馬なのでしょうか。次の章では、天皇賞(春)に出走を予定している注目馬6頭を紹介します。


 ②どんな馬が出走するの?

 

 本章では、天皇賞(春)の注目馬6頭を紹介します。なお、天皇賞(春)は騎手にも注目してほしいレースなので、騎手の紹介もいつもより多めに取り入れています。

 

 では紹介していきます。

(JRAのHPを最後に掲載していますので出走馬全頭の情報を知りたい方はそちらもどうぞ。)


 8枠14番 フィエールマン

 

 ☆戦績:9戦4勝。主な勝鞍はGⅠ・菊花賞、GⅠ・天皇賞春。

近走はフランスのGⅠ・凱旋門賞で12着、GⅠ・有馬記念で4着。レベルの高いメンバー相手に負け続けているが、昨年の天皇賞(春)の覇者が連覇を賭けて挑む。

 

 ☆ここに注目!

 ○レーススタイルは「差し」。2000m前後のレースでは後ろから猛烈な末脚を使うも惜敗というレースが多いが、去年の天皇賞(春)は直線前で動き出し、直線入るころには先頭に立つ、「まくり」という戦法で勝利した。今年もこの馬がどこで動くか注目だ。

 ○GⅠ2勝は今回のメンバーでも最多。しかもGⅠ・菊花賞は京都3000m、GⅠ・天皇賞(春)は3200mのGⅠレースで、長距離レースへの適性は抜群。1番人気も納得といったところだろう。

 ○騎手はC・ルメール。ここ3年はリーディングジョッキー(年間最多勝騎手)に輝いている。

天皇賞春は昨年このフィエールマンとのコンビで挙げた1勝。GⅠレースで2番目に長い菊花賞でも2016年サトノダイヤモンド、2018年フィエールマンの2勝を挙げている。実績はあるといえる。

 ○前走の有馬記念は1番人気のアーモンドアイをマークしてのもので、負けてなお強しの内容だったとは言えるが、上位陣には離されてのゴールとなった。その前の凱旋門賞に遠征した馬は帰国してから本来の強さを取り戻せないことも多く、改めて今回は本馬の能力が問われるレースになりそうだ。


 5枠8番 キセキ

 

 ☆戦績:21戦4勝。主な勝鞍はGⅠ・菊花賞。

GⅠでは2着が3回、3着が1回あり地力は上位。近走ではフランスのGⅠ・凱旋門賞7着、GⅠ・有馬記念5着、GⅡ阪神大賞典7着。今回は川田騎手から武豊騎手にジョッキーを替えて、再起を図る。

 

 ☆ここに注目!

 ○レーススタイルは、序盤から先頭で最後まで押し切る「逃げ」だったのだが…。前々走GⅠ・有馬記念と前走GⅡ・阪神大賞典ではゲートで出遅れて後方からリズムに乗れず凡走してしまった。この馬は特にスタートにレースがかかっていると言っても過言ではない。

 ○2017年の菊花賞馬。この馬もフィエールマンと同様に3000mのGⅠ・菊花賞を勝っていて地力は上位。去年もGⅠ・大阪杯2着、GⅠ・宝塚記念2着とGⅠでいいレースを見せていた。ただしこの2戦は「逃げ」てペースを自分で作ったレース。能力はあるので後はやはりスタート次第。

 ○騎手は生けるレジェンド武豊。

GⅠは一つでも勝つのが大変なのだが、この天才騎手は天皇賞(春)だけでなんと8勝を挙げている(バケモノ)。一応全部上げると、1989年イナリワン、1990年スーパークリーク、1991年1992年メジロマックイーン、1999年スペシャルウィーク、2006年ディープインパクト、2016年2017年キタサンブラック。どのレースも名レースなのでお時間あればYouTube等でぜひ見て頂きたい。

 この中ではキタサンブラックが「逃げ」の戦法で強いレースを見せていて、武豊騎手のペース配分も絶妙だった。キタサンブラックの再現となるレースをキセキと見せたい。


 5枠7番 ユーキャンスマイル

 

 ☆戦績:15戦6勝。主な勝鞍はGⅡ・阪神大賞典、GⅢ・新潟記念、GⅢダイヤモンドステークス。

GⅠでは菊花賞3着(その時の勝ち馬が、今回1番人気と思われるフィエールマンだった

)。前走GⅡ・阪神大賞典を制した勢いのまま次はGⅠ獲りだ。

 

 ☆ここに注目!

 ○レーススタイルは「差し」。直線前の3コーナーから4コーナーで早めに動き出すかもしれない。

 ○前走で阪神大賞典を走った馬は、過去5年の内4年は3着以内に入っている。2015年1着馬ゴールドシップ、2018年1着馬レインボーラインは前走が阪神大賞典1着だった。相性のいい前哨戦を勝ち切って、ローテーションとしては1番と言えよう。

 ○騎手は若手のホープ浜中俊。

もともと岩田康誠騎手が乗る予定だったが、先週落馬で戦線離脱。浜中騎手は初GⅠを2009年に制しているがそのレースが長距離の菊花賞だった。昨年は「競馬の祭典」とも言われる、GⅠ・日本ダービーも制した、今勢いのある騎手だけに侮れない。

 ただ、騎手の腕はともかくとしてもやはり馬との呼吸を合わせることが特に大事な長距離レースにおいて、乗り変わりは懸念材料だ。


 4枠5番 ミッキースワロー

 

 ☆戦績:19戦5勝。主な勝鞍はGⅡ・日経賞、GⅢ・七夕賞、GⅡ・セントライト記念。

前走で前哨戦のひとつであるGⅡ・日経賞を制した。これまでGⅠでは5着が最高着順だが、前走勝利の勢いそのままGⅠ制覇へ意気込む。

 

 ☆ここに注目!

 ○レーススタイルは「差し」?基本的には脚を温存して直線一気に伸びるタイプの馬である。ただ後述する横山典弘騎手は何をするか分からない騎手なので、あまり戦法に囚われない方がいいかもしれない。

 ○重賞3勝を挙げているが、それは中山や福島の小回りコース(直線が短めのコース)でのもの。基本的に差し馬は直線が長い方がいいのだが、この馬は差し馬にも関わらずなぜか小回りコースに良い成績が集まる印象だ。京都競馬場は内回りと外回りがあるが、天皇賞春が行われるのは外回りコースで直線は長め。うまく脚を温存することが求められる。

 ○騎手は52歳のベテラン横山典弘。常識に囚われない自由な発想でレースをするという持ち味がありファンも多い。

 天皇賞(春)は1996年サクラローレル、2004年イングランディーレ、2015年ゴールドシップの3勝。このうちイングランディーレは後続を大きく離す「大逃げ」で10番人気の低評価を覆しての勝利だった。ゴールドシップはGⅠ6勝馬ながら、よくいえば個性派アイドルホース、悪く言えば気まぐれ屋のネタ馬扱いされる馬だったが、このレースで横山騎手は1周目の直線で観客の近くを走らせ馬のやる気に火を点け、位置取りを押し上げてスタミナに物を言わせて押し切るという、馬の特性をつかんだ好騎乗を見せた。

 今回も彼がどんな騎乗をするのか注目される。


 7枠11番 メイショウテンゲン

 

 ☆戦績:13戦2勝。主な勝鞍はGⅡ・弥生賞。

3歳だった昨年はクラシック3冠に挑戦したが結果は振るわず。以後は3000m以上の長距離重賞に挑戦し、前々走3400mのGⅢ・ダイヤモンドステークス2着、前走3000mのGⅡ・阪神大賞典3着とまずまずの結果を残している。得意の長距離で一花咲かせることができるか。

 

 ☆ここに注目!

 ○レーススタイルは「差し」or「追い込み」。直線一気で方をつける末脚は魅力だ。

 ○本馬の母メイショウベルーガは、牝馬(ひんばと読む、メス馬のこと)にしては珍しく長距離が得意で、牡馬(ぼばと読む、オス馬のこと)を相手に3000mのGⅡ・阪神大賞典で3着に入り、この天皇賞(春)にも挑戦した(結果は10着)。母から受け継ぐ豊富なスタミナを武器に戦う。また、母から芦毛の馬体も受け継ぎ、グレーがかった白い馬体はかわいいので、そのルックスにも注目だ。

 ○騎手は幸英明騎手(名字はみゆきと読む)。

爽やかなルックスの44歳でお菓子が大好き。騎乗回数の多さが特徴で、勝ち目がなさそうな馬でも騎乗依頼を引き受けることも多く、馬主からの信頼も厚い。GⅠはJRAでは6勝。今回は落馬負傷の松山騎手からの乗り替わり。回ってきたチャンスに結果で応えたい。


 6枠10番 メロディーレーン

 

 ☆戦績:16戦2勝。主な勝鞍は1勝クラス。

 戦績としては上で挙げた有力馬には遠く及ばない。牝馬では珍しく長距離のレースを使われて、GⅠ・菊花賞5着、前走GⅡ・阪神大賞典5着という成績を残している。だが牝馬というだけではなく、後述の理由からちょっとしたアイドルホースとして注目されているので、今回特別に紹介することにした。

 なお、彼女はその人気から専用のインスタグラムも開設されている。身近で鍛える調教師だからこそ撮影できる、メロディーレーンちゃんのかわいい姿を見たい方はこちらをどうぞ。 




 ☆ここに注目!

 ○レーススタイルは「差し」or「追い込み」。直線一気に賭けると考えられる。

 ○注目点は何といっても馬体重。サラブレッドの平均体重は470kgあたりとされるが、本馬の馬体重は前走時で342kg。実際に他の馬といるところを見ても一回り以上小さい。

 競走馬は一般に小さいと非力で、大きすぎるとケガのリスクが高まる。だが本馬はただ出走するだけでなく2勝を挙げ、2勝目を挙げたときの馬体重338kgはこれまでJRAで勝利した馬の馬体重で一番軽いものだった。歴史を塗り替える牝馬は、さらに牡馬交じりのGⅠ・菊花賞に出走し、12番人気ながら猛然と追い込み5着に健闘した。前走のGⅡ・阪神大賞典も5着だったが、3着のメイショウテンゲンとはタイム差なしで走破。

 今回2度目のGⅠ挑戦。1953年のレダ以来67年ぶり2頭目となる牝馬の天皇賞(春)制覇に向かって、「小さすぎる牝馬」が屈強な男馬たちを相手に堂々とした走りを披露だ。

 ○騎手は岩田望来(みらい)。ベビーフェイスが特徴的な2000年生まれの19歳。

 父は同じく騎手の岩田康誠。JRAには、若手騎手の騎乗機会確保のために重賞などのレースを除き、斤量(騎手の体重と鞍等の馬具の総重量のこと)を数キロ軽くして有利にする減量制度があり、馬体重が軽い本馬には少しでも乗せる斤量が軽い方がいいと新人騎手の岩田望来騎手に白羽の矢が立った。彼はその期待に応え本馬とのコンビで2勝を挙げた。GⅠに乗れる通算31勝以上という条件を満たしていなかったため、昨年のGⅠ・菊花賞には乗れなかったが、今回はその条件を満たして騎乗する。将来有望な若武者が初GⅠ制覇を賭けて「小さすぎる牝馬」と大レースへ臨む。


 以上が注目馬6頭の紹介になります。

 

 ほかにもGⅡ・日経新春杯勝ち馬モズベッロ、「最強の1勝馬」エタリオウ、前走久しぶりの勝利で頂点狙うミライヘノツバサなど、いい馬がそろっていますのでJRAのHP等でご確認ください。

 

 レースの展開予想は長距離なだけに難しいのですが、スタートを決めればキセキが「逃げ」るかもしれません。フィエールマンが上で挙げた6頭の中では前目の方で「先行」するか徐々に位置取りを上げていく「まくり」をすると思います。ユーキャンスマイルもフィエールマンを見ながら2周目の直線までには進出を開始するでしょう。ミッキースワロー、メイショウテンゲン、メロディーレーンは直線にすべてを賭けるレースが多いので、普通ならそうするのでしょうが、ペースが遅ければ途中で位置を押し上げていくことになるかと思います。いずれにせよ2周目の4コーナー(最終コーナー)を回ったあたりでは前を射程圏にいれるレースをしに行くでしょう。

 大逃げする馬もいたり、有力馬が直線に至る前に早めに進出したりすることも多く、道中も目が離せないレースです。

 

 出走は5/3(日)の15:40です。それではGⅠ・天皇賞(春)をお楽しみに!


( JRAのHPはこちらになります。

「出馬表」のページを開き、今週の重賞レースにある天皇賞(春)をクリックすると出走馬全14頭の情報が見られます。)