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墨亭 -BOKUTEI-

墨の戯言9~「古典・新作落語事典【補遺】」その6:2020.05.01.

2020.05.01 15:44

拙著『古典・新作 落語事典』の【補遺】その6は、古典的新作落語の『電報違い』です。

先年、鬼籍に入った三代目三遊亭圓歌師匠がよく演じ、最近では現・三遊亭歌奴師匠が演じる、まさに圓歌一門のお家芸とも言えるネタです。

本文に出てくる「ぎなた読み」とは、「弁慶が薙刀(なぎなた)を振り回し」という一節を、「弁慶がな、ぎなたを振り回し」と誤読したことが由来とされるもので、歌の方では『金太の大冒険』などが有名かも知れません。この作品では、どのように勘違いされるのか。そのあたりが聴きどころと言える一席です。

尚、今回も検索ワードのカスタマイズは、よろしくお願いいたしますw。


《て》

電報違い(でんぽうちがい)

【種別】 滑稽、新作

【別題】 早合点(はやがてん)

【あらすじ】 日本橋石町の生薬屋の主人が植木屋の信太を連れてお伊勢参りへ。その帰り道、名古屋までやって来ると、一組の男女が線路の上へ頭を乗せて、心中しようとしているところへ出くわす。旦那は二人を助けることにするが、その晩に東京へ帰ることになっていたので、明日の朝の汽車で帰ることを電報で知らせるために、信太を郵便局へ行かせる。信太が局へやって来ると、転勤で東京から来ていた職員がいたので、何かと話している内に盛り上がってしまい、やっとのことで「アスアサケエレン ダンナ シンタ」と頼むことができた。信太が主人のいる宿へ戻ると、「このお嬢さんは大きな病院の娘さんで、ご子息はお寺さんの息子だ。親御さんがどちらも許さないので心中となったが、私が親御さんに会って許してもらうことにする」と主人が話して聞かせた。それを知った宿の番頭が「人を助けると『余慶あり』と言いますが、まさしくそれです。今夜、お乗りの予定だった列車が貨物列車と正面衝突をして、全員亡くなったという情報が入りました」と伝えてきた。一方、東京では駅まで主人を迎えに行った二人が、「列車事故があって乗客全員が死んだということで、列車が動いていないので戻ってきました」と店へ帰って来た。そこへ号外が届いたので番頭が読んでみると、事故のあらましが書いてあり、ああだこうだと話しているところへ、今度は電報が到着。そこには「アスアサケエレンダンナシンタ」としてあるので、旦那が死んだことを知らせる電報が来たのだと、葬儀の準備に取りかかることに。翌朝、信太が店へ帰って来ると忌中の札が下がっているので、「旅に出ている間に誰が死んだのかな。奥さんかな。ただいま帰りました」「信さんが帰って来たよ。ビックリしただろうね。旦那さんの身柄はどうなっている?」「旦那の身柄? 心配いりません。今、お寺に行っています」。

【解説】 初代三遊亭圓歌(1876~1927)が大正期に作った新作落語で、二代目円歌、三代目圓歌、そして三遊亭歌奴と、一門がこの噺を伝えている。電報が新しい通信手段であった時代に、カタカナの文章しか送れない中、それをどう読み間違えるか。いわゆる「ぎなた読み」という、文章の区切りを間違えて読むことで騒動が起こるという一席。


※検索ワード※

場所・舞台→駅、名古屋、日本橋石町、郵便局、

職業・人物(普通名詞)→植木屋、生薬屋、局員、主人(店)、番頭、宿屋

職業・人物(固有名詞)→信太

行事・行動・習慣→勘違い、事故、心中、葬式、読み違い、

事物・事象・その他→汽車、電報