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小林研究室

留学での研究

2020.05.05 04:02

こんにちは、修士の楠見です。

2年生の後期から、約半年間フランスに留学に行っており、3月頭に帰国しました。

今日はその留学で行った研究についてのお話をしたいと思います。

大学はESPCI Parisというところで、化学と物理に特化した高等教育機関でお世話になりました。場所はノートルダム大聖堂から徒歩20分の好立地で、研究が終わった後に夜のセーヌ川を散歩するなど映画みたいな時間も過ごせました(笑)

スマホも盗まれて、海外留学したなという実感はすごくあります。(不注意)


そんなフランス留学で私が行ったのは、水の波に対するメタマテリアルの研究です。

メタマテリアルとは、自然界に見られない不思議な現象を引き起こす人工構造物をいいます。詳しくはぜひ前のブログを見てみてください

https://kobayashi-qg-lab.amebaownd.com/posts/7454646

今回の研究では、図のような周期構造を持った水槽がメタマテリアルとして活躍します。


実はこの水槽の中では、水の波の振幅が端っこに偏在するような不思議な現象が見られます。「普通の」水槽、つまり直方体の水槽だとこの現象は見られません。

端っこに振幅が偏在するようなこの波のことを「エッジ波」といいます。

私はこれを実験で実証し、理論と一致しているかどうかを確かめました。

この研究は、波力発電に活用できる可能性があります。

地球温暖化や資源枯渇の問題から、近年再生可能エネルギーに注目が集まり、

太陽光発電や風力発電など様々なエネルギーを電気に変える方法が考えられていますが、その中の一つとして海の波のエネルギーを利用した発電方法があります。それが波力発電です。

日本は海に囲まれた国。波のエネルギーをもっともっと活用できたらこんなにいい事はありません。

波力のエネルギーを集めるための装置を広範囲でたくさんの数を設置すれば、たくさんのエネルギーを集められるのは確かですが、もっと効率よく集めるために「エッジ波」の性質が利用できます。先に記述したような凸凹の水槽を海に設置しておけば、特に特殊な機械も必要ないままに波の振幅が勝手に端っこにさささっと集まって、元々満遍なく小さく揺れていた波が偏在して大きな振幅になります。つまり、波力エネルギーを集める装置をより少ない数で大きなエネルギーを得られるのです。とても効率的ですよね。

さて、実はこの「エッジ波」というのはもともと量子力学(電子などとても小さいものの状態を記述するもの)で考えられていた現象です。この研究は、量子力学の「エッジ状態」を水の波でモデル化した研究でもあります。それについては、後日またブログにあげようと思いますので、また見ていただけると嬉しいです。

最後に、フランスで研究をしていて、あっこれ楽しいなと思った瞬間を紹介します。

失敗したときでも、成功したときでも予想外のことが起こったときなどに「Oh là là!」と言う時です。フランス人がどう使い分けてるのかもう少し観察が必要ですが、日本人の私にとっては、ウ~ラ~ラ~と言ってみると、悪い結果でもなんでもなんだか楽しい気持ちになりました。

そういう生き方がいい時もあるよな、と特に今そう思います。

では、また次回!