オンライン
オンラインで対話する場合の面白味は、直接触ることができないことだと思います。
また、相手の動きが見にくいのも利点です。
自分が見たいところが見えないとか、マイクから入る雑音で、集中できないのも大きな利点でしょう。こちらから相手に言葉と画像で伝えたい場合も、相手に伝わるように見せる努力が必要です。
つまり、かなり工夫するという利点があります。
もっとも大きな利点は、悪環境下でしか見えない何かがあるということに気づけることです。
これは自分自身の能力を最大限に引き出せるという意味になります。
わかっているように思っていてもわからないこと、わからないように見えてわかること。
沢山のことに気づかせてもらえます。
それらが実際に診る場合と違うとても良いところです。
普通の鍼灸治療では、ベットに寝て診療を行うのが一般的です。つまり、普通の人どうしが、対話をする時以上に親密な距離で治療を行うことが殆どです。だから、その人の内情に踏み込んだ治療に自然になっていきます。それはそれで良いと思いますが、それしか行っていないと木を見て森を見ずになってしまいます。
絶対に見えないものが一杯あることに気づかない場合があります。これが今までの一般的な鍼灸治療の弱点だと気づきます。もちろん近づいて見えることも一杯あるのですが、それが過ぎるとお節介になりやすい。感情移入し過ぎると全体像が見えにくくなります。適度な距離を保つというのは医療の基本だと思います。
私が診療する時は、ずっと前から坐位で、必ず一定の距離を保ちます。だから、今回のような感染のリスクはもっとも低い鍼灸院と言えます。そして接触するのは、僅かな時間です。しかも換気をかなり丁寧にやっているので、その効果は明白だろうとも思います。
このような診療をしているので、オンラインで人の身体を診るのは慣れています。
特に大勢でオンラインにすると画面に表示できる大きさが決まってきます。もちろん、その人にフォーカスすることも可能なのですが、離れている感覚としては5~10mぐらい離れて見える感覚に似ています。キチンと顏を認識できないレベルになります。
この距離は、流石に普通の診療ではとれない距離です。しかし、この距離でしか見えないものが一杯あることにも気づきます。
雑音が入ると途中で相手の声が聞こえなかったりしてコミュニケーションがとりづらくなったりします。もちろん、通信環境が良い時は、そんなことは全くないので、普通に話しはできます。また、レイテンシーと言って会話が遅延することはありますが、対話なら成立するレベルです。
そうすると声のトーンであったり、相手の反応の仕方に敏感になります。ちょっとでも聞き逃さないように耳をたてます。
悪環境では全く違う能力を使い、その能力が進化します。
こんなにも沢山の利点があるのですから、とても良いツールだなと再認識しました。