何が違うの?『シティズンシップ教育』と『主権者教育』
Q. 『シティズンシップ教育』と『主権者教育』のちがいってなに?
NPOで何をやっているか聞かれて、シティズンシップ教育って言ったら分かりにくいかなと思い、主権者教育という言葉を使いました。どういう風に使い分けていますか?(高校3年生)
A. 「選挙啓発」の主権者教育、「市民性を育む」シティズンシップ教育。けど、本来の目的は同じ。
シティズンシップ教育は、『市民としての資質や能力を育むため』の教育です。文部科学省「子どもの徳育に関する懇談会(第5回)議事要旨」によると、『その教育内容としては、社会的・道徳的責任、コミュニティへの関与、政治的リテラシーの3つで構成され、後にアイデンティティと多様性が加わった』とあります。
一方主権者教育は、2016年の改正公職選挙法に伴い、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことから、全国的に注目されるようになりました。そのため主権者教育とは『投票率向上が目的であり、投票への意欲を持ち、実際に投票するように関心を促す』というイメージが強いようです。
ところで、僕たちは「投票率向上のために、投票への意欲を持ち、投票に行けばいい」のでしょうか?物事を決定する投票には、やはり責任が伴います。その責任を果たすには、本来シティズンシップ教育で育む素養が求められるはずです。そのため、そういう立場に立てば、主権者教育の目的もシティズンシップ教育の目的も、大きな違いはありません。
しかし、現状の主権者教育は選挙の「制度」や「ルール」を学習することに重点が置かれ、本来の目的に適っているとは言えません。また、『投票率向上が目的である』主権者教育には限界があることも分かってきています。実際、初めて18歳が投票をした2016年参院選と比べ、2019年参院選は投票率が大きく低下をしました。
2022年からスタートする『18歳成人時代』や2030年をゴールにしている『SDGs』など、現代のこども達を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。そのような中で、主権者教育も「選挙啓発型」から脱皮をし、「シティズンシップ教育型」に変化していけるか。
主権者教育も過渡期を迎えています。