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心と心の距離は近く 一人ひとりのあたたかい気持ちが一本の線につながって、コミュニティの大きな力に

2020.05.12 20:00

このカップを手掛けた、太田翔伍さん

人の想いをぬくもり溢れる一本の線で描いてきたアーティストです。

そんな太田さんにカップのお話を伺いました。


――今回の特別なデザインに込めた思いとは?

 文字を使わず、アートでメッセージを伝えるのは、なかなかむずかしいことだと思います。

 僕はメッセージを文字から読み取るのではなくて、シンプルにパッと見て雰囲気から読み取れるようなものをつくるように心がけています。説明がいるものは、伝わり切れていないものだと思うからです。


 今回のプロジェクトでは、「人と人とのつながりや思いやりが、小さなことでも、みんなで一つに合わせれば大きなものになる」ということを、ひと筆書きの一本の線で表現しています。

 今、人と人は離れなくてはいけないので、人をたくさん描いたものを出すというのは勇気のいることです。

 けれども、このアートでみんな正面を向いて、笑顔でいいコミュニティをつくろうとしています。

 それぞれが別々でも、協力していけば大きな力になります。


――今回のテーマを表現するときに特に意識したことは?

「身近にいる大切な人達を気遣い、思いやり、気持ちを一本の線のようにつなげ、笑顔をかわそう」という、スターバックスのメッセージのとおり、一人ひとりが身近にいる人を大切にして思いやっていけば、小さなことが全部つながって、集まって一緒に何かをするということではなくても、大きなサポートや思いやりになると思うんですね。

そういうモチベーションや理想的なゴールを表現したかったんです。


――デザイナーになるまでのご自身のこれまでの道のりは?

 高校卒業後、大学進学に失敗したのをきっかけに、母親のすすめがあって、兄貴の知り合いがいるからということで、渡米しました。

 アイダホ大学に行って、在学中、最初はグラフィックデザインに興味を引かれました。友だちに、「見た目がデザインとかやってそうだよね」と言われたのがきっかけで、見た目で入ったんです(笑)。

 昔から「手先が器用だ」と親から言われていたり、中学生のときに学校でちょっとした賞をもらったりもしていて、友だちからも見た目のことを言われたし、ちょっと試してみようかなと思って、やっているうちに、のめり込んでいきました。

 大学卒業後にインターンで入った会社は、アートもデザインもやっているところで6、7年働きました。今のスタジオを持てるようになったのは、その経験のおかげです。

 そのころのボスに「別にひとつのスタイルを持たなくていいんだよ」とか、グラフィックデザイン会社なのに、最初のころは「コンピューター使いすぎじゃない?」と言われたりして、そういうことが刺激になりましたね。

 自分のスタイルがないのがスタイルというか、どんなクライアントにも対応できるスキルを少しずつ学んでいけたと思います。

 今でも毎日、クライアントに合ったいろいろなスタイルをつくっていこうとしています。

 作品はほとんど手描きです。このカップはエディティングが多いので、タブレットを使って、画面上に描いていますが、元々は紙に描いてスキャンして……の繰り返しですね。

 

――アメリカをベースに活動していて、人とのぬくもりの大切さを実感することは?

 僕はひとりでスタジオを経営しているんですけど、日本だと仕事相手にプライベートなことをあまり聞かないじゃないですか。こちらはオープンなので、今回のような問題があると、「シアトルは全面封鎖されているけど、家族はみんな大丈夫か」と、やさしいメールが気軽にいつもくるんです。小さなことなんですけど、うれしいですね。

 それから、僕はシアトルのミュージシャンと仕事をしていて、今はライブができない状況で経済的にみんな困っているんですよね。それで、ストリーミングで有料でも無料でもコンサートをやったりとか、音楽配信プラットフォームが、売上をすべてアーティストに還元する日をつくってくれて、そのタイミングでTシャツやレコードを買ったりして、サポートをしています。

 ないものを提供する、困っている人を助けるっていうストレートな助け合いが、よく見受けられるような気がしますね。

 日本だとあまり人に対して踏み込めないようなイメージがあるんですけど、こっちではカジュアルにいろいろなアイディアを絞って、進んでどんどんやっちゃうので、いいことだと思いますね。

――太田さんにとってのスターバックスの存在とは?

 僕はコーヒーが大好きで、特に朝は一杯のコーヒーから始まらないと気合いが入りません。

 キャンプやスノボなどのアウトドアが好きで、よく出かけるんですが、スターバックスに寄ることが多いですね。頼りになるお店です。

 

 今、スターバックスに仕事で関わって思うのは、社会的にもリーダーシップのある会社なので、これからもお店に行ってサポートしたいなって思います。

 

――最後に、メッセージをお願いします。

 今は物理的な距離は離れていても、オンラインで飲み会をしたり、会議をしたりして、人はつながっていないとダメな生き物なんだと、みんな感じていると思います。

 そして、みんなで集まって盛り上がれる日が来ることを願って、今はがまんをしながら、心の距離は近いままで、距離を保つ――。

 このカップが、みんなで乗り切ろうと背中を押せるような存在になれたらいいなと思っています。

[Artist Profile:太田翔伍]

岐阜県郡上市出身。高校卒業後、渡米し、アイダホ大学でアートを専攻。卒業後にシアトルのデザインスタジオに勤務した後、2012年11月に同シアトルにTireman Studioを立ち上げ独立。2016年米国大統領選の直前に結束のシンボルとして米スターバックスが発表したGreen Cupや、2018年のスターバックス コーヒー ジャパンで行われたYou & STARBUCKSキャンペーンなどを手掛けるなど、幅広く活躍中。