2020.03.23.「第2回三遊亭金朝の会」を振り返って
墨亭は3月23日の「三遊亭金朝の会」以降、ずっとお休みをしたままです。
今はひたすら、新型コロナウィルスの収束を待ち続けているところですが、その金朝師匠の会のご報告をしないままでした。
墨亭は私(瀧口)がみなさんにもっと聴いて欲しい芸人さんや惚れた芸人さん、気になる芸人さんにご出演願っています。勿論、墨亭貸してくれ~という方にもお願いをしていますが、その中で、もっと早くご出演をお願いすればよかった…と思った落語家さんに三遊亭金朝師匠がいました。もしかすると、まだ師の高座に接したことのない方もいらっしゃるかも知れませんが、私が推すのですから、是非、一度、お聴き下さい(ここでドンと胸を叩く)!
以下は、開催当日のパンフレットに記した文に手直しを加えたものですが、少しでも会を知ってもらえればと……。
拙著に『落語の達人』(彩流社)という一冊があります。名人・上手といった形で紹介されることは少ないかも知れませんが、寄席という落語を作り上げてきた空間で欠かせなかった、改めて聴き直したい故人の落語家を追った内容で、五代目柳家つばめ、二代目橘家文蔵、三遊亭右女助などの芸を振り返った著です。
三遊亭金朝さんの師匠・三遊亭小金馬(1949~2018)も、そうした一人に入ってくる落語家だと思っています。寄席のトリでというより、間に挟まっての15分、20分の高座が実に良かった。『居酒屋』『つる』『目薬』…。『小言念仏』は人間国宝・柳家小三治が復活させた落語ですが、小金馬師のいかにも長屋の一角に暮らしている初老の男性といった風の描写の方が好きで、それを聴けた時にはラッキーと思ったものでした。
最近は、絵で言えば油絵であったり、家系ラーメンのように濃い味付けにして演じる落語家が増えてきています。それが悪いというのではありませんが、全員がそこへ向かっていっているようで、寄席や落語会が終わった後に、余韻を味わうというより、ドッと疲れが出てしまうことがあるのです。
今後、小金馬師のような寄席の流れを大切にし、流れの中にあって、自分を出せる寄席芸人らしい落語家が出てくるのかなあと思ってしまいます。
金朝さんはどんな落語家になっていくのかなあと思いを巡らすことがあります。大ネタを確かな形で演じ、いわゆる軽いネタも程よく演じてみせる。折角のこういう場であれば、落語にはないけれど、金朝さんに演じてもらいたいなあと思う噺もあり、これからも金朝さんの落語を丁寧に追っていかなければと、改めて思っています。
墨亭では2回目となった会では、『松竹梅』や『一人酒盛』とともに、春らしさが感じられる『長屋の花見』を聴かせてくれました。ワーッと半ばヤケになって花見を楽しみに行くといった感じではなく、自分たちでなければできない花見をしに行こうじゃねえかといった、江戸っ子の達観したような感じがあって、どこか悲哀感を漂わせながらも、興じてみせるといった風が、いかにもこの長屋の住人の姿にピッタリで、他の落語家さんにはない味がありました。『一人酒盛』にしても、呑兵衛の金朝師にピッタリのネタで、“下戸の方が酒を飲むネタは上手い”といった定説(?)を覆すような、酒飲みだからこそ、知らぬ間に一人だけで楽しんでしまう様子が出ていて、袖で聴いていて、思わずゴクリと唾を飲み込む呑兵衛がここにもいた……ということを思い出させた、そんな一席でした。
墨堤の桜も咲き始めていて、花を愛でての散歩にもいい季節でしたが、何しろ終演時間が……でしたので、金朝さんの落語を聞いて春の匂いを感じ取ったという平日の夜でした。
落語はやっぱり気分良く聴きたいもの。一連の騒動が落ち着いた頃に、三回目の「三遊亭金朝の会」が開催できればと思っています。その時は是非、是非にです!(雅)