「陰(おん)」の国
私たちの日本は日(陽)出る国であると同時に陰(おん、いん)の国です。
「日本は日出る国」(本記事最下部リンク参照)で触れたように、ものごとは常に表裏一体で、陽が当たれば陰ができる、陰陽(おんみょう)が同居することを知っていて、これを自然の調和だと考えてきました。
■陰(おん):音(おん):恩(おん)■
音(おん)が重なると恩(おん)が重なります。恩(おん)が重なれば、縁(えん)が結ばれ円(えん)ができ、上下階級のない社会が生まれます。
また、音(おん)があるから奏(かなで)が生まれます。
奏(かなで)とは、漢字上部の「丰(ホウ)」は神様を呼ぶ木の枝を表し、漢字下部の末広がりに「天」の部分は両手でものを差し出す様子を表す。「神様が降りてくるように、ものを差し出す様子」を表している字とされ、神出(かなで)なのです。
演奏とは、神が降りてくるように演者が奏でること、神(=自然)と繋がろうとすることであって神事ということです。雅楽は、奏(かなで)を代表するものと言えます。
音(おん)によって自然への恩(おん)を感じたり応えたりしているようです。
■訪れ:音連れ:音が連れてくる■
木枯しが吹く風の音、枯れ葉が降り積もる音が冬の音連れ、雪解け水が流れ草木の新芽が芽吹く音が春の音連れ、雨音が梅雨の音連れとして知らせてくれます。足音が音連れとなって訪問者の訪れを知ります。
目に見える陽の側だけが全てではなく、耳を澄ませ陰に心を向ければ見えないものも音が連れてきます。
さて、話は再び陰(おん、いん)に戻ります。
私たち日本には「お陰さま」という言葉あり、陰に「お」と「さま」を付けるほどその存在は尊いものです。「お陰さま」は日々の恩や感謝を伝える言葉です。
西洋の文化は、陽のあたる部分を大事にします。西洋化が進んだ日本では、この度のコロナ禍においても買い占めなど、自分本位な行いが目につくことも増えて来ているように感じます。陽のあたる輝かしい部分だけに目を向けがちですが、その陰で支える人や自然の力を忘れてはいけないと改めて思います。
この日本では、陽の天照大神(太陽)と同時に陰の月読命(月)が存在し、陰陽でこの世界ができていることを表現しています。
EQの学びと関連づけるなら、音を感じたり音を奏でるように感性を豊かにすることは、感情を表現したり感情を理解することに大いに役立ちます。また、感性は神経科学的にも感情と密接に関わっています。赤ちゃんは、母親の声とそれ意外の声を生まれて間もない段階で区別ができるようになり、母親の感情に敏感に反応することが知られています。
また、「ありがとう」「おかげさま」は、共感を育む基本の基とも言えます。
私たちは、つい無いことにばかり目が向き、他人の足りないことを責めたり、物が無いことを恥じて欲にまみれますが、全てがいまそこに有ることが難い:「有難い」のです。
「お陰さま」「有り難う」
が溢れる国であり続けたいものです。