〜海の歌〜
2020.05.10 02:22
#気紛れのエッセイ #非母語 #激妄想
毎年必ずやってくる母の日。
今日という一日を思い出深く楽しく過ごせる人はどれだけ幸せなことか。
今日という一日、人の幸せぶりを見て憧れながら戸惑ってしまう者もどこかにいるはずだ。
輝く月の裏面なら、永遠に人目に触れることなく、永遠に忘れられてゆく。
話題にすることさえ、こんな日には不都合らしい。
旅先は今日も雨の中。
雨の音とと共にいつまでも胸に響くのは、
雨宿り先のドアの閉まる音。
雨のたびにずぶ濡れてしまう迷子たちからすれば、
これは昔から何度ともなく繰り返してきた光景。
だからこそ一雨ごとに、果たして自分に生きる価値があるのかという迷いがより一層深まっていくばかり。。。
そんなはずがないんだよ。。。
ねえ、まだ覚えているのか。
あなたが生まれるずっと前から歌っていた海の歌。
その歌を教えてくれたのは誰の声だったのだろう。
ねえ、覚えているのか。
物心がついたばかりの頃から、時々どこからともなく蘇ってきたその懐かしさ。
それは、何かとても大切なものから引き離された気持ちみたいなものだ。
これ以上もなく愛しくて切なくて、思い出すたびに涙が溢れるほど懐かしいそれが何だったのだろう。
触れようにも取り戻そうにも手が届かなくて、
いつか再び出会える日を夢見て、
いつまでも旅を続けているのね。
彷徨う人よ、いつまでも忘れないでいてよ。
遠い昔に教えてもらったその歌は、
今日もあなたの中で流れているのではないか。
脈の音よりもずっとひそやかなそのメロディーは、
あなたの魂が生まれた時に喜んでくれた誰かの声に似ているのではないか。
一人になったからこそ歌声が聞こえてくる。
一人になったからこそ、どんな時も一人ではなかったことに気がつく。