山梨で農業をやりたい方への手引き-本気で就農編-
田舎・地方での生活の醍醐味といえば、"農ある暮らし"もその一つ。
このシリーズは、山梨で農業をやってみたい方の最初のステップとなる情報です。家庭菜園・専業(兼業)農家・自給自足 といった農スタイルのはじめ方をご案内します。
第二弾は、本気で農業による収入を得るスタイル(専業農家)編です。
この記事で解説する農業・農家とは
前の記事で紹介した自給的農業・家庭菜園は、あくまでも自分たちで食べる分がメイン。現金収入を得るには、ある程度の規模・準備・仕組みをもって、仕事として行うことが必要です。
ちなみに農林水産省のWEBサイトによると、農家とは
経営耕地面積が10アール以上の農業を営む世帯 または農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯
とされています。
10アールとは1000平方メートル(100m×100m)。年間15万円ということは12で割ると月1万2千円くらい。そのどちらかを超えていれば農家と呼ばれるんですね。
さらに農家の中にも細かい定義があり、所得の何割が農業所得で、年間何日以上農業に従事して…といった分け方がされています。
ここではいったんシンプルに考えて、
”一家の収入の大部分を農業で稼ぎ、生計を立てる”働き方を就農と呼び、それを実現するステップについて書いていきます。
農業で生計を立てる二つの手段
その1.独立就農
農業で食べていく、といったときに多くの方は”独立して農業経営する農家”を思い浮かべるのではないでしょうか。
栽培技術を身につけ、土地や農機具を準備し、何をどう植えてどれだけ収入を得るか計画し、生産そして出荷(販売)する。全て自分で決めて自分の責任で行う、言うなれば起業家です。
もちろん簡単な道ではありませんが、気に入った環境の中で働き、自身のこだわりや工夫を発揮できる…この自由こそが独立就農の大きな魅力です。
あわせて、リスクやコストについても知っておきましょう。農地や農機具の購入には一千万円以上かかるとも言われますし、現金収入を得るまでに時間がかかります。さらに自然災害や病害虫で収穫がゼロになるといったリスクも。多くの人は安定するまで副業で収入を確保したり、地域の補助制度、協同組合、保険などを上手に活用したりして経営しています。
その2.雇用就農
農業を仕事にしたいけど、リスクを負って初期投資するのは怖い、単身だから広い家や土地の管理は大変そう、農業経営の自信もない…。
そんな方は、農業法人で働くというスタイルを検討してはいかがでしょうか。
一般的な会社員と同様に、会社や団体に所属し毎月給料をもらいながら農作業に従事します。農機具や土地の準備などを心配することなく、安定した環境で働けることが魅力。ただし大規模な農園や農場が多いので、自分の好きなものを作るというよりは、決められた作業をスケジュールに沿って行なっていくことになります。
山梨県内にも、山梨市・北杜市・中央市などを中心にいくつも農業法人があります。
農業を始める前に 研修で学習&実践!
独立か雇用か、大まかな方向性が見えてきたら、就農までの準備について確認しましょう。ある程度農業経験がある方(例えば実家が農家で毎年手伝っているなど)は別ですが、まずは研修を通して知識や技術を取得する必要があります。
山梨県では段階に応じて次のような研修メニューが用意されています。
◆農業体験研修(平日や週末1~2日 単発で開催)
内容:果樹、または野菜の栽培(職業訓練農業科の実習に参加)
日程:平日は5月、土日は8月より設定
◆週末農業塾(年間10日の体験)
内容:もも・ぶどう・野菜・有機農業の中から1コース選択
日程:5月~12月の土曜日 午前9時~午後4時
◆職業訓練農業科(9か月間の長期研修)
内容:果樹コース、野菜コースから選択
日程:例年1~2月頃募集、4月~翌年1月開講
毎年度ごとに開講されます。詳細日程や申込方法は下記のリンクよりご確認ください。
この先のステップとして、先進農家や農業法人でのより実践的な研修も可能です。
研修の進め方(一例)
「農業に興味があるけどやったことがない」
→体験研修または週末農業塾に参加
→決意が固まったら、就農支援センター(後述)に進め方を相談しながら、翌年の職業訓練に応募(応募期間:例年1~2月)
→4月からいよいよ長期研修!農業大学校での職業訓練スタート
→その後希望により、先進農家での研修or農業法人への就職etc...
といった形が例として挙げられます。
なお雇用就農(農業法人への就職)の場合、未経験・研修未受講者でも求人応募可能ということもあります。が、熱意や覚悟は見られますし、体験したり独学で勉強したりといった下準備はやっておくべきでしょう。(これはどんな分野の仕事でも一緒ですよね)
研修中の生活費はみんなどうしてる?
農業の基礎を身につけなければいけないのはわかるけど、その間収入ゼロは厳しい!という人がほとんどだと思います。
まず、9か月間の職業訓練実施中には、失業保険を生活の糧とすることができます(前職で雇用保険に加入していれば受給可能、詳細条件は要確認)。アルバイトをしたり、家族の収入で支えあったりというパターンもあります。
また、研修中から農業が軌道に乗るまでに活用できる制度が農業次世代人材投資資金(旧 青年就農給付金)です。
「準備型」と「経営開始型」の2パターンがあり、研修中は準備型が利用可能。就農予定時点(つまり研修終了時)に49歳以下の方へ、年間150万円が支給されます。細かな条件があるので農林水産省のWEBサイトでご確認ください。
その他、県や市町村で独自の就農支援制度がある場合も。例えば、ブドウ栽培が盛んな甲州市には研修プログラム、受講期間中の生活費補助、農地の貸与など、助走期間から独立までサポートする仕組みがあります(要事前相談)。
いざ就農!
農大や先進農家などでの研修を終えたら、いよいよ独り立ち。独立就農の場合には営農計画を立て、土地(農地)、農機具、家、倉庫などを用意する必要があります。
中でも一番重要なのが農地。農地の貸し借りは法律で定められた条件があり、家を建てる土地(宅地)のような感覚ではできません。自治体の農業委員会や県の農業振興公社を通じて賃借を行います。
新しい土地で新しい仕事を始めるのは苦労の連続。「研修先の農家グループから農機具を貸してもらった」「知り合いの伝手で家を借りた」など、皆さん研修先や周辺の農家、自治体、農業委員会、農協など様々な人・機関の力を借りています。
農村での暮らしは助け合っていくことが当たり前。もらってばかりでなく、手伝って、お返しをしての繰り返し。農業をやっていくにあたり、田舎の付き合い・互助の精神は最も大事な要素の一つです。
移住して就農した先輩の事例も参考にしながらイメージしていきましょう。
サポート万全!「就農支援センター」に相談しよう
農業を始めるまでの大まかな流れはご理解いただけたでしょうか。しかし私の説明は一般的な情報であり、作りたい作物や有機農業といったこだわり、地域、経験、そしてタイミングなどによってさまざまな方法があります。
山梨県には総合相談窓口「就農支援センター」があります。新規就農を考える方はもちろん、農地の貸し借り、資金調達などさまざまな相談に乗っていただけます。ぜひ経験豊富な専門相談員とお話ししながら理解を深めてください。
もっとライトな情報・ご相談(たとえば県内地域の農作物の違い、体験ツアー情報、まずは就職も検討したいなど)の場合にはやまなし暮らし支援センターもあわせてご活用くださいね。ご希望を伺いながら事例なども紹介させていただきます。