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Yocco18

横浜市西区の花「すいせん」〜横浜18区花めぐり Vol.01〜

2020.05.23 01:30

あなたのまちの花は、どんな花かご存知ですか??横浜18区には、それぞれ区の花や区の木が定められています。

ふだん何気なく歩く道にも、もしかしたらそのまちにゆかりのある花々が咲いているかもしれません。

このシリーズでは、まちの花である「区の花」を知り、鑑賞する・育てる・訪れるといった視点から、身近な花々に親しみ、新たなまちの楽しみ方を提供していきます。

Yoccoたちと一緒に、四季折々の花を楽しみましょう!

本シリーズで花の解説をしていただくのは、横浜市港北区在住、種苗会社の社員で、ご自宅でさまざまな植物を育てている園芸家でもある、新井裕之さんです。

シリーズ第1回は西区の花「すいせん」を紹介

どうして「すいせん」が選ばれた?

横浜市公式サイト内にある、「西区の概要~人口・特徴~」から、引用します。

昭和59年に区制施行40周年を記念し、公募により選定されました。

区の花「すいせん」は、1984(昭和59)年、公募により決定したそうです。ですが、気になるのはその由来ですね。公募の結果がなぜ、「すいせん」だったのか、経緯も含めて何もわかりません。別のページ、西区のマスコットキャラクター「にしまろちゃん」にも、「すいせん」についての記載がありましたので、こちらも引用してみます。

にしまろちゃん誕生話

西区のマスコットキャラクター「にしまろちゃん」は、平成19年に西区の花である「すいせん」をイメージして作成しました。当初は名前がありませんでしたが、区民の皆さんからの「かわいい」、「名前はないの?」との声を受けて、一般公募を行い決定しました。

名前には、「西区の活動がまろやかに進んでいきますように」という願いがこめられています。(中略)

にしまろちゃんプロフィール

こちらは詳しく語られています。

水仙の花のよう精のキャラクターで、ナルシストな性格のようです。ですが西区の花になぜ、「すいせん」が選ばれたのか、その理由がわかりません。念のため、西区が発行している郷土史などを調べ、区役所の担当者にも問い合わせてみましたが、当時の資料がなく答えにはたどり着きませんでした。すいせんが選ばれた経緯について、どなたかご存知の方がいらっしゃいましたら、Yocco18(yokohama18ku@gmail.com)までご連絡をいただける嬉しいです。


「すいせん」ってどんな花?

チューリップと並んで、春爛漫を象徴する、球根性の草花です。色数が多くて華やかなチューリップと比べると、黄色と白が中心で、若干、地味。ですが、ヨーロッパを中心に品種改良が進み、数百を超える様々な品種があります。普及しているスイセンを大別すると「日本水仙」と、その他のスイセンになります。

まだ寒い季節に咲く日本水仙

「日本水仙」は、国内各地に自生があります。静岡県伊豆半島の爪木崎、福井県の越前岬、兵庫県淡路島の灘黒岩などが観光名所として有名で、神奈川県では三浦半島先端の城ヶ島に群落があります。「日本水仙」の名はあるものの、元々の原産地は地中海沿岸で、古代に渡来した、自然帰化植物という説が有力。開花時期は冬、12月の後半から、2月まで。早咲きのウメと揃って、上品な香りを競っています。スイセンとしては小さめで、白と黄色の2色になる花を、1本の茎に数個咲かせます。

冬満開になる日本水仙

その他のスイセンは、多くが春、3月から4月が開花時期になります。代表的なのは、ラッパズイセン(ラッパ咲スイセン)。1本の茎に1つの大きな花。外側に6枚の花びらが広がり、その内側にラッパのように先を広げた筒状の花びら(副花冠といいます)が。そのまた内側中心にはおしべとめしべがあります。副花冠が筒状ではなくお皿のように開いているタイプは、カップ咲きスイセン。


ラッパとカップが代表格

典型的なラッパズイセン

更に、おしべやめしべが花弁化し、副花冠も外側の花弁と同じような形に変化して、バラのような咲き方になるのは、八重咲スイセン。これらは1本の茎に1個の花。一方、「日本水仙」のように、1本の茎が先端で枝分かれして、いくつかの花をつける品種は房咲きスイセン。春に咲く房咲きスイセンもたくさんあります。

バラのようにゴージャスな八重咲

まだまだスイセンのタイプ(13の系統として整理されています)はあります。最初はここで紹介した「ラッパ咲き」「カップ咲き」「八重咲き」「房咲き」を覚えましょう。どのタイプか、見分けられると楽しいですし、この4タイプに当てはまらないスイセンを見かけたら、園芸植物図鑑などで調べてみてください。

副花冠が平べったいカップ咲きスイセン

さて、西区の花、「すいせん」は、どのタイプでしょうか。マスコットキャラクター「にしまろちゃん」のイラストから推定すると、カップ咲きスイセン、のようですね。プロフィールをよく読むと、誕生日が2月4日、その頃には日本水仙が咲き終わります。バトンタッチして3、4月まで咲く、カップ咲きスイセンやラッパズイセンが、西区の花に選ばれた「すいせん」と一致しそうです。


西区のスイセンは?

カップ咲き「にしまろちゃん」と同系色の品種

そして、「にしまろちゃん」がよく行く場所のうち、気になるのが、野毛山と掃部山。野毛山公園のホームページによると、春になると公園内にスイセンの花が咲いているそうです。ほか、掃部山公園でも、スイセンが咲いているという情報を耳にします。次の開花シーズンにはスイセンを確認したいですね!


「すいせん」を育ててみよう!

綺麗な花が咲いていると、育てたくなります。スイセン、あるいはチューリップ、満開の春。園芸店に「今育てたいのですが、売っていますか?」という問い合わせが入りがちです。球根植物であることを知っていても、「チューリップの球根は売っていますか?」と尋ねる人が多いです。気持ちはよくわかりますが、花が咲いて切る時期、球根は養分を使って小さくなっています。その後、真夏になる前までに、光合成をして養分を貯め、翌年に開花できる球根ができて、葉が枯れて休眠に入ります。

栽培開始は秋、準備は夏

スイセンの球根を購入できるのは、この休眠期の後半、植え付ける適期の少し前です。8月旧盆過ぎから、9月初めにかけて、園芸店やホームセンターに、チューリップ、スイセン、ヒヤシンスを筆頭とした、秋植え(春咲き)球根が並びます。この時期に購入するのが王道です。暑い時期に急いで植える必要はなく、適期は10月から11月。球根のパッケージ、花の写真と品種名が印刷されたラベルの裏側に、詳しい育て方が書いてあります。栽培難易度としては、とても易しい部類です。

冬でも間に合う「芽出し苗」

冬になってしまったら、球根に替わって、ビニールポットに球根を植えて芽が出た状態の「芽出し苗」が販売されます。球根と比べて「芽出し苗」は流通量が少なく、1株当たり高額になります。またラベルが小さくて詳しい栽培方法が書いてないデメリットも。ただし、春に近づくともう、蕾がのぞいているか、咲き始めた状態で売っています。それなら、そっとポットから抜いて、お庭やコンテナ(鉢などの栽培容器)に植え替えてあげれば、まず確実に開花します。

その後、早春には、ポットより大きな、鉢植えが並ぶようになります。花も咲いています。これはあまり、おすすめできません。促成栽培でかつ、少ない土で咲かせていますから、翌年、また楽しめる可能性が低いからです。その年限りであればむしろ、切り花を買って飾るのがおすすめ。ということですので、戸外でスイセンの花が満開になる時期には、お店ではもう、売っていないのですね。

翌年も咲かせるためには

花が終わったら、翌年もさかせることができるのでしょうか? 答えは、できます。スイセンは、概ねできます。大切な作業は花がらつみ。花がらとは枯れた花のこと。花の基部にある膨らみ、実になる部分、子房を必ず切ります。実がついてしまうと、球根が育たないから。葉は、決して切りません。葉が枯れるまでの間、鉢植えであれば適切な水やりを続け、太陽光線にできるだけ当ててあげます。6月から7月の始め、自然に葉が枯れたら、休眠です。ここで方法は2つ。そのまま、植えておく。もう1つは、掘り上げて球根を乾かす方法です。

夏は植えたままでも、掘り上げてもOK

スイセンの場合、夏の間に、雨などの水がかかる場所に植えたままになっていても、腐ったりしません。庭に植えたのなら3年くらい放っておいても大丈夫。3~4年経つと混みあってしまうので、夏に掘り上げて間隔をとって植えなおします。鉢植えの場合は、秋10月に、新しい用土に植え替えます。秋の植え替えでは、根が生きていたら、切らないように。

葉が枯れた夏、球根を掘り上げる場合は、土をよく落として、日陰で乾かします。枯れた茎葉や根を整理して、風通しのよい日陰に保存します。できればミカンなどのネット袋に入れて吊るしておくと良いですね。植え付ける時期と方法は球根を購入した場合と同じです。

決して食べてはいけません

さて、園芸ビギナーやお子さんでも育てやすいスイセン。重要な注意事項があります。スイセンは、葉や球根を含む全体に、有毒成分が含まれています。触ってかぶれるというような毒ではありません(特別なアレルギー体質の方は別で要注意です)。葉が、ニラに似ているのです。ニラと間違えてスイセンの葉を収穫し、食中毒で救急車、という事例が少なくありません。症状は下痢と嘔吐。猛毒というほどではありませんが、口にすることは厳禁です。小さなお子さんや、ペットがいる家庭では要注意です。


参考にしたWebサイト

西区の概要

https://www.city.yokohama.lg.jp/nishi/shokai/profile.html

西区のマスコットキャラクター「にしまろちゃん」

https://www.city.yokohama.lg.jp/nishi/shokai/mascot/nishimaro.html

野毛山公園

http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/nogeyamapark.php

掃部山公園

https://www.city.yokohama.lg.jp/nishi/kurashi/machizukuri_kankyo/jimusho/koen/koenshisetsu/ka/kamonyamakoen.html

自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スイセン類

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075843.html

辻堂海浜公園 水仙ガーデンオープン!(PDF)

http://www.kanagawa-park.or.jp/tujidou/top/suisengarden.pdf


ご協力 新井 裕之

(あらい ひろゆき)


種苗会社社員、園芸家。10歳から園芸を趣味として始める。東京農大を卒業し横浜の大手種苗会社に勤務。自宅と貸農園で家庭園芸、家庭菜園を実践。花の名所巡りと写真撮影、生け花もたしなむ。最近は横浜市内を中心に、園芸ボランティア活動を広げている。