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free association

水は鮮血の夢を見る

2020.05.10 18:29

『水は鮮血の夢を見る』



 彼の手は透ける事無く。

無彩を有彩に変える力があった。

見えないものを、見えているかのように扱う感性が備わっていた。


「闇の中では些細な光源でも眩しいのだ」

うっとりと蕩けそうな艶を宿した彼の瞳こそ眩しくて、その紅くヌメヌメと照り返す光を舐め取るように、彼の眼球に舌を這わせた。

ぼくが彼の瞳の表面から奪い返した光ごと、拘束するように彼の腕が、骨よりもしなやかに白い指が、磨かれたように鋭い爪が、

獲物を逃さないと肋骨にキツく食い込んでいる。

痛くてぼくは笑った。

ぼくをもっと痛めつけてユーリも笑う。


 ぼくは彼に痛いくらいに抱かれて 彼を抱いた。

彼の真っ暗な中にぼくの透明な光を余す事無く注ぎ込んであげた。

彼は瞳や唇、終いには全身をツヤツヤと厭らしく光らせて喜んでいた。

彼に絞りとられてしまって、ぼくはますます透明になってしまった気がした。

それでも彼の手は、はっきりとぼくをとらえたままだった。

ぼくはもう自分が何色だかわからない。

硬くしている筈のペニスの形も感覚も、海の水のようにユーリと一緒に溶けてしまった。


 紅い闇に抱かれて身動きが取れないまま、

ぼくは紅く染まってしまって、

彼の中を流れ、毛細に分かれて、染み渡る夢を見た。

鮮血の海にユーリの瞳が浮かび上がり、夕焼けの双子の太陽となって、シャラシャラと照り返し乱反射する光を見つめていた。