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コーチTim Reilly「棒高跳のはじめ方」

2020.05.11 13:39

コロナウイルス感染拡大の影響により活動が停止しているアメリカのコーチ陣が、毎週Youtube上でコーチカンファレンスを行っています。今回はその中からコーチTim Reillyの回をピックアップして紹介します!!

【Tim Reillyって誰?】

Northwest Pole Vault Clubのメインコーチ

自身も棒高跳をしていたが、棒高跳専門のコーチに巡り合えず、学生のうちに競技を引退し、コーチとしての活動を開始。Carl Ericksonコーチ(ベイラー大学の黄金期を創り上げ、オリンピアンも育てた)と出会い、彼から棒高跳についての多くを学んだそう。

これまでコーチ歴35年、11,000人以上のジュニア選手たちの指導をしてきたが、一人も大きな怪我もなく安全に、かつ高いレベルの選手を育てている。2018-2019年に女子でアメリカ高校記録(4m47)をクリアしたChloe CunliffeのコーチもTimの教え子。ジュニア世代の指導者としてはカリスマ的な存在である。


今回紹介するコーチTim回では、初心者への棒高跳の教え方がテーマでした。

コーチTimが、初めて棒高跳をする子供たち(ジュニア選手)にどうやって棒高跳を教えるているのか?

今後の指導へのヒントが見つかるかもしれません!それでは、本編です!


『How to Start Pole Vault』

by Tim Reilly


【棒高跳における4つのポイント】

①助走

・効果的な疾走動作

・コントロールできる中でスピードを高める

・ズレの無い助走

・踏切に向けてピッチを高める


跳躍全体をピラミッドに例えると、助走は土台にあたるポイント。


②突込み動作

・ポール降ろしは、後半5歩で行う(トップ選手は7歩)

・突込み動作は踏切への後半3歩で行う

・突込み動作はポ―ルの先が目線の高さになってから開始

・下の手(右利きの場合の左手)の手首は肘の上になるようにする


ドリルやピットでの跳躍を行う際も、5歩から行う。

初心者の多くが、ポールの先が高すぎる、または低すぎるところから突込みを行っているので、注意が必要。


③ばねのように弾み、伸びあがる踏切

・減速を最小限に抑える必要がある

・しっかりと踏み切る


砂場でのドリルなどで練習する。

やや抑えたスピードで練習すると選手が習得しやすい場合がある。


④踏切後は長く、力強い姿勢になる

・胸や膝から進む(腰ではない!)

・踏切脚が長く後方に伸びる

・上肢が大きく伸び、頭や胸の後方にまで位置する

・下の手は上に押す(前方で固めない!)


上半身がストレッチされ、エラスティックな状態になること。

スイング前にポールをすぐに曲げてめようとせずに,身体をストレッチさせ、スイングに向けてエネルギーを創り出す。

身体は締めるが、伸展させること。


【指導のポイント】

・完ぺきな練習をしないと、完璧な跳躍は生まれない

・全ての動作は自然に習得できるものではない。しっかりとコーチングをすることが必要。

・新しい動きの流れは、速い動きでは習得できないため,主に短助走で動きを練習する。

・完ぺきな動きのドリルを繰り返す

・安全に、そして選手が自信を持った状態のまま行う

(選手が不安になる、動きが畏縮するようなグリップ高やポールを使用して跳躍しない)

⇒棒高跳の指導において最優先すべきは、「安全」であること。

;硬いポールや高すぎるグリップは、目先の記録には繋がるかもしれないが、選手を危険にさらし、動きの習得も妨げる可能性があることを、理解しておく必要がある。


【初心者への棒高跳の教え方(4段階)】

⓪これから行うドリルを全て見せる。


①高さのある台から踏切の練習を行う

・上の手はできるだけ高く、下の手は顔の高さで持つ

・上肢は伸び続け、踏切脚は大きく伸びる

(腕は引かない。足が踏切後に曲がらないようにする)

⇒腕を引かず、かつ足を伸ばした状態で空中にいられることを覚えるために、高さのある所からのドリルを始めに行う。

・大きい姿勢でスムーズに行えるまで続ける


②歩きながらの突込み動作

・5歩で歩きながらポールの突込みを行う

・はじめは背伸びをして持てるグリップ高

・慣れてきたら歩くスピードを上げながら、グリップ高を高くしていく


※注意点

・ポールが正面から見てもまっすぐに動くことを確認する

・踏切時に身体が大きく前傾してしまっていないかを確認する

(垂直に近い姿勢で、力強い踏切姿勢を取る)

⇒このような動きは、初心者にうちに矯正しておくことが重要!


③ミニハ―ドルでの突込み練習

最も選手の動きが変化するポイント。


・背伸びをして持てるグリップ高+2グリップで開始する

・ミニハ―ドルを5台、3足長で置く

・5歩で踏み切る動きを覚える

・踏切に向けて、徐々にリズムを高めていく

(5>4>3>2>1の順でリズムが高まる)

・慣れてきたら、スピードを上げながら、グリップを高くする

・目安として、最後の5歩が1秒ぴったりになるまでリズムを高める


選手が【棒高跳における4つのポイント】の動きで紹介した4つの動きができるようになったら、ピットへ移動する。


※注意点

・初心者はよく、正面から見るとポールの先端が円を描くように降ろす傾向がある

⇒できるだけ狭い幅の中をポールの先端が通りながら降ろすように、イメージさせる。


※補助ドリル

ここまでの動きをマスターするためのドリル

一時的にピットから離れ、休憩したりドリルを行うことで、動きの学習を促進する。


a. 塩ビ管での突込みドリル

(塩ビ管ポール作成の目安:長さ3m30、直径2.5cmの塩ビ管を使用)

・上肢がストレッチしながらポール突っ込むことを覚える

・決してポールを曲げようとしてポールを押し曲げたりしない

・ポールと頭(顔)との間にスペースをつくる

・体の真ん中で突込みを行う


b. 高鉄棒での飛びつき(踏切)ドリル

・5歩のリズムで踏み切る

・踏切後に体全身を締めながらも、大きく(長く)する

踏切足が曲がってしまう癖がある選手には、鉄棒の下部にゴムを張り、そのゴムをキックするように意識させることで、姿勢の改善につなげる。


④ピットでの跳躍

ミニハ―ドルでの練習が上手くできるようになったら、ピットに移動する。

・まずは5歩(助走位置初心者の場合、体格にもよるがスタート位置は約8.5m~9.2m)

・助走のスタートにミニハ―ドルを2台(2足長、4足長の間隔)で置く

・慣れてきたら半足長づつ助走距離を長くしていく

・動きに慣れると、7歩の助走に伸ばす


※注意点

・最初に示した【4つのポイント】の動きが出来ていない状態で助走を伸ばしたり、グリップを高くすることはしない。(最初にずれた動きで跳躍をさせないことが重要)

・簡単に使える(扱いやすい;短い、軽い)ポールで行うこと

・ポールが立つ動きを大事にする

・徐々に動きを早くしていく

・選手が自信を持った状態のまま行える範囲で進める

(自信がない選手は、ポールを体の中心から外して突込みを行うことがある。正面から動きをチェックすることも重要。)


==


コーチTim Reillyは始めて棒高跳をする子供たちに、以上のような流れで教えるそうです。

しかも、棒高跳初日、わずか2時間でこの4段階の練習をほぼ全て終えるそう。

2時間後にはほとんどの選手が素晴らしい動きで突込み動作を行っていました。


以前からコーチTimの選手たちの跳躍はとても気になっていました。

彼は、棒高跳を始めて短い期間のうちに、選手たちの記録を非常に高いレベルまで伸ばします。

棒高跳を始めた初日に、正しい動きのなかで跳躍を行い、ずれを矯正しておくことは、選手たちがその後も、跳躍を乱すことなく、よりスムーズに成長することに繋がっていると感じました。


今回紹介した内容は、初心者が棒高跳を始める時のステップです。

これから始める中学生や高校生、また混成選手の皆さんが、効率よく上達するために、棒高跳”初日”に対する指導は大切に、そして丁寧に行いましょう。