わたしが好きなシーン(自萌え
こんばんは、サイジョーサイコです!
「また、あれやろうよー」となんとも軽いノリで谷崎さんに申し上げまして。
そういや渡海くんの裏話とか聞いたときも、「書きなよーぅ」と書き上げる労苦なんか微塵も考慮せず、軽いノリで言ったんですよね。
萌えと好きは放出してこそ。ってことで、私の自萌えいきまーす。
①赤い牡丹
結衣子は一歩一歩、確かめながらあとに続く。寝室に足を踏み入れた刹那、仲秋の手により襖が閉じられた。アトリエも隣の和室とも隔たれた気がした直後、目の前の襖を隠すように掛かった鮮烈な赤が飛び込んできた。
「……牡丹、の花……」
幾重にも花びらを重ねて誇り高く咲き乱れる華麗な赤い大輪と、舞い散る花びら。白地のほとんどを埋め尽くす圧倒的な総柄に、結衣子は暫し息を飲んだ。
「ああ。赤の牡丹だ」
~中略~
腰を下ろし、ポーチの中からリップパレットを出す。そこに並んだピンクから赤の六色の中から、一番端の鮮やかな赤に紅筆を沈めた。
唇のふちをなぞってから、全体に色を馴染ませる。色ムラのないよう塗ったあと、ティッシュを一枚唇で食んだ。
丸めたそれをポーチと一緒にバッグに放り、結衣子は糸切りバサミを置いた文机を一瞥したあと立ち上がる。
のっけから中略挟むほど長くてすみません。純文テイストを意識したここのシーンは、最初から最後まで全部好きです。
仲秋の背に彫られた赤い牡丹。この赤い牡丹は感情を動かすモチーフとしてたくさん使いました。
八年前にその総柄の浴衣を誂え、今贈る意味。それを受け取る結衣子も、いろんな思いを汲み取ります。
「爛れてる!!」と連日大騒ぎして書いていましたが、根っこにあるのはどちらもとても純粋な気持ちなのですよ。
②赤と白
「私、あなたのこと苦手よ」
組んだ両手を固く握って太ももの上に下ろしながら、結衣子は瑠衣に正直に告げた。
「えっ?」
驚いた瑠衣が結衣子を振り仰ぐ。丸く見開かれた目に結衣子は笑いかけたが、うまくできたかはわからなかった。
「私が、こうだったらよかったのに、って思うもの、たくさん持っていて」
隠したって仕方がない。かといって投げやりな気持ちは一切なかった。きっとそうしなくては、結衣子は彼女と向き合えない。
正面の瑠衣の表情に戸惑いが広がっていく。しかしその目から、結衣子は目を逸らさなかった。
結衣子と瑠衣。ついに書かなきゃいけないか、と大層絶望した覚えがあります。だって結衣子、瑠衣のこと苦手なんですもん。まぶしすぎるんですよね。
ゆえに瑠衣と相対した結衣子は正直に「苦手」と言いました。あの結衣子がです。
嫌なら切り捨てる彼女がです。 苦手意識は話を続けても変わらなかったけど、最後に彼女はこう締めくくります。
「この前よりずっと、あなたのこと好き」
③ルカマジック
「あああごめんなさい! みんなの中で一番わかってないの私だから、下手なこと言っちゃいけないって思って。でも前見たときも、今縛られ始めてからも、ずぅーっと違和感でもやっとしてて……」
謙虚なふうに言っているがその実、とても鋭い言葉の刃だと結衣子は思った。
違和感は、最も無視してはいけない危険信号だ。遥香の感じたそれは正しい。受け手と縛り手の信頼関係の重要性を、彼女は身を持って知っている。
静まり返ったアトリエの中応援したくなるような気持ちが募って、結衣子は縛られた手をそっと握る。肩に触れている稜の手も、固くなっていた。
臆する必要はどこにもない。縛り手と受け手は対等なのだ。
そう思いながら固唾を呑んで見守っていると、遥香はどこかさみしげに、しかし意を決したように渡海を振り仰いだ。
「渡海さん、受け手と向き合ってない」
谷崎さん命名、『ルカマジック』
女王でも度々転機を引き起こしてきた遥香が、ここでもやってくれました。
癖もなく、ショー的な経験値も低い。稜いわく「熱心な弟子」である彼女が渡海に言うからこそ意味がある。見守る結衣子と稜もまたよき。
④獅子と牡丹
「……『金の屏風に墨絵の牡丹、中に二人の狂い獅子』」
ゆったりとした調子で仲秋が続けたのは、文机の柄見本に結衣子が残した落書きだった。
この浴衣の柄のページにあった名のすぐそばに、艶っぽい都々逸を寄り添わせたのだ。糸切りバサミを文机に置いて、仲秋がまた覗き見ることを期待して。
つくづく、打てば響く。結衣子も嬉しくなって思わず口角を上げたが、仲秋の両手が浴衣の合わせにかかって思わず息を飲む。
「君も狂え」
郷愁に囚われた二人が、皆の前で本気を出す。とすると仕込みが必要だなー、先生が浴衣贈るかー、それじゃそこから結衣子も対抗するよなー→落書き という塩梅でした。
ここの前段、縛られるところからずーっと好きです。結衣子の独白も最初はもっとチープでしたが、谷崎さんから指摘をもらいつつ、ごんごんと高めていきました。なかなかの迫力に仕上がったんじゃなかろうか。
⑤稜の狂気
「先生の背中、赤い牡丹が彫られてるんだね」
突然頬に平手打ちを食らわされたように突きつけられた現実感と、差し迫った恍惚。
戸惑って目を見開くと、稜は獣じみた凶暴な笑みを口元に浮かべていた。
「これ着てる結衣子は先生に抱かれてるみたいだ」
あーあーあーあー、って内心危ぶんでいた稜のNTR属性が、ここにきてドカンとなっております。
結衣子の願いを聞き届けることが彼の使命。結衣子が仲秋との行為を望むなら、それすら受け入れたでしょう。
⑥牽制する瑛二
稜に自分のような思いをさせるのは御免だ。結衣子には今度こそ幸せになってほしい。そのために瑛二は、稜に結衣子を託したのだ。
仲秋は依然として矢じりを尖らせたような眼差しを瑛二に向けながらも、警戒と平静を装っている。
瑛二は頭から下ろした手で、仲秋の胸ぐらを掴んで力任せに引き寄せた。
「結衣子に近づくな」
きゃーっ、瑛二くんかっこいいー! っと茶化すのも忍ばれるシーンです。ここの瑛二は本当にいい。稜を、結衣子を思う気持ちは彼だからこそのものです。
以上、追憶の自萌えでございました。
明日は谷崎さんの、追憶萌えをお届けしまーす!
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