墨の戯言11~「古典・新作落語事典【補遺】」その7:2020.05.13.
2020.05.12 16:18
拙著『古典・新作 落語事典』の【補遺】その7は、珍しいネタから『殿集め』です。
一昨年、鬼籍に入った三代目三遊亭小金馬師匠が演じ、その音が残っています。
果たして、近年、演じる落語家さんはいるのでしょうか?
他愛もない噺で、今にも飛び降りようとしている娘を眺めている観衆が、ああでもないこうでもないと話している様子が見ものの「間」が命とも言える一席です。
尚、今回も検索ワードのカスタマイズは、よろしくお願いいたしますw。
《と》
殿集め(とのあつめ)
【種別】滑稽
【あらすじ】 京都のある大家の娘が、清水寺の舞台から飛び降りるという噂が流れ、それを見たいと大勢の人が集まった。人々が娘の飛び降りる理由をあれこれ言い合っていると、美しい着物で着飾った娘が女中を連れて現れた。そして本堂へ入り、舞台の上から方々を見回すと、急に女中を連れて帰ると言う。騙されたと思った見物客が騒いでいると、娘が女中に向かって「これだけ殿御(とのご)を集めても、よい男は居ないものじゃ」。
【解説】 『宿屋の富』や『富久』などで、一番富に当たったらどうするかと勝手な夢を語る場面が聴きどころになるように、この噺では、何故、娘が飛び降りるのかを巡って想像する場面で噺を盛り上げる。その中で一人の浪人者があの娘は自分に惚れていて、飛び降りたところを自分が助けて、親元へ届けて婿になるといった場面を挟み込むことがある。寛政9年(1797)『臍が茶』の「百鳥おどし」に原話が見られる。上方で演じられてきた噺で、東京では三遊亭小金馬が演じていた。
※検索ワード※
場所・舞台→清水寺、京都
職業・人物(普通名詞)→見物客(人)、女中、娘、浪人
行事・行動・習慣→嘘、噂、空想、騙す