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郷愁の風景

【奈良県】奈良町(奈良市)

2020.05.13 08:35

奈良市内に「奈良町」という地番は存在せず、狭義はかつて元興寺の境内地だった辺りの町を総称している。

観光ガイドでも「ならまち」という形で紹介され、古町家を活用した土産店や飲食店も目立つ。

広義としての「奈良町」はエリアが広く、猿沢池西側の旧花街「元林院町」や旧遊廓「木辻」なども含まれる。

共通して碁盤目状の区画に江戸時代以降の町家が細い路地に沿って並び、中近世から商業地として発達して来たことをうかがわせる。

表構えは統一されておらず、格子や虫籠窓など多様な意匠で変化を持たせているため、街並みとしては飽きさせないものとなっている。


【奈良県】奈良町「中新屋町」(奈良市)202005

古い店構えの漢方薬商「菊岡」さんがある「中新屋町」界隈。

虫籠窓を持つ白壁の商家が並ぶが、軒下にある防火用の赤いバケツやこの町特有の「身代わり申」が彩を与える。

突き当り正面に見えるのは大正10年創業の「吉田蚊帳」さんだが、店舗は江戸末期に建てられたもので登録有形文化財指定。

中新屋町「吉田蚊帳」店舗


【奈良県】奈良町「芝新屋町」(奈良市)202005

奈良町は旧平城京の区画を基本としているものの、互いに直行しているとは限らずに交差をずらしたり、通りが一本線上でなかったりしている箇所が少なくない。

そうした傾向は大和国内の寺内町などでよく見られるように、防衛的要素も多分にあったのだろう。

南北に通る「芝新屋町」の通りはその典型で、細い路地が一本直線でなく鋸歯状に古い町家が建っている。

観光客相手の土産店や飲食店がなく地元民の居住生活空間であるせいか、閑静な佇まいを保ち続けている。

反対側から撮影


【奈良県】奈良町「元林院花街」(奈良市)202005

猿沢池のすぐ西側にある「元林院町」は旧花街で、全盛時には芸妓が200人程で、戦後も43人だったが、現在は僅か3人が残るのみ。

現在も往時の名残りと共に飲食店が入り混じり、奈良きっての夜の歓楽街として健在である。

絹谷家住宅 旧芸妓置屋「萬玉楼」

元林院町の町並み