ヴィクトリアマイル 紹介記事
この記事では今週末5/17(日)に行われる、GⅠ・ヴィクトリアマイルを初心者向けに解説する記事です。①ヴィクトリアマイルってどんなレース?②どんな馬が出走するの?の2章に分けて解説していきます。
それではさっそく①ヴィクトリアマイルってどんなレース?から参りましょう。
①ヴィクトリアマイルってどんなレース?
ヴィクトリアマイルは、4歳以上牝馬限定・東京競馬場芝1600mで開催されるGⅠレースです。
東京競馬場では先週のNHKマイルから安田記念まで5週連続でGⅠレースが開催されますが、ヴィクトリアマイルはその第2戦目です。
ヴィクトリアマイルは「春の女王決定戦」とよく呼ばれます。古馬(4歳以上の馬)で牝馬限定のGⅠレースはこのヴィクトリアマイルと、11月のエリザベス女王杯の2つしかありません。
ヴィクトリアマイルは2006年に新設された新しいレースです。歴史は浅いですが、GⅠ6勝馬ブエナビスタや、歴代最多タイのGⅠ7勝を挙げたウオッカなど歴史に残る牝馬も出走し勝利を収めたレースです。
今年もGⅠをすでに6勝しているアーモンドアイが参戦し、一段と熱気を増したレースになるでしょう。
一方で、荒れるレースとしても有名です。12番人気―9番人気―8番人気で決まった2007年(勝ち馬コイウタ)、2014年は11番人気ヴィルシーナが勝利し、その後は2015年5番人気、2016年7番人気、2017年6番人気、2018年8番人気、昨年2019年は5番人気の馬がそれぞれ勝利と、人気馬が勝ちにくいレースと言えます。
中でも、2015年は18頭中18番人気だったミナレットが後続を離す大逃げから3着に粘り込み、1着5番人気ストレイトガール―2着12番人気ケイアイエレガント―3着18番人気ミナレットで決着しました。
3連単(1着から3着まで順番通りに当てる馬券)の配当は、100円買うと20,705,810円になって戻ってくるというもので、GⅠ史上最高額の配当金となりました。
今年は現役最強馬との呼び声高いアーモンドアイも出走しますので、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラックに並ぶ歴代最多タイのGⅠ7勝を達成できるか、はたまた波乱の結末になるのか、という観点からも注目の1戦です。
②どんな馬が出走するの?
この章ではヴィクトリアマイルに出走予定の有力馬4頭を紹介していきます。
前の章で述べたように11番人気の馬が買ったり、18番人気の馬が3着になったりするようなレースなので、最後に簡潔にですが、残りの14頭も紹介したいと思います。詳しくはJRAのHP等で確認してみてください。
それでは、まず有力馬4頭を紹介していきます。
アーモンドアイ
☆戦績:11戦8勝。内GⅠ6勝の名馬。
一昨年は牝馬3冠+ジャパンカップのGⅠ4勝を挙げ年度代表馬に選ばれた。
昨年はドバイのGⅠ・ドバイターフを制覇、続くGⅠ・安田記念は不利もあったが僅差の3着に入った。夏休み明けの天皇賞(秋)で3馬身差をつける完勝、GⅠ6勝を達成。その後は香港のGⅠ・香港カップを使う予定だったが、熱発(発熱のこと)で回避、予定を変更し年末の大一番GⅠ・有馬記念に参戦し単勝1.5倍の1番人気に推されるも、9着敗退となった。
今年は連覇も賭けてGⅠ・ドバイターフから始動の予定も、出国後にコロナウイルスの影響でレースが中止に。今回そこから約2か月経って今年最初の1戦、歴代最多タイのGⅠ7勝がかかった戦いに挑む。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「先行」or「差し」?3歳時は直線一気で「追い込み」もしたが、最近はポジションをある程度取れるようになった。ただ、前走が2500mの有馬記念だっただけに、今回1600mに距離短縮となり道中速いペースに戸惑って「差し」や「追い込み」といった後方からの競馬になる可能性もあるだろう。
○なんといってもGⅠ6勝はこのメンバーどころか現役で最多(2位は3勝のフィエールマン、アドマイヤマーズ、ラッキーライラック)。今回は牝馬限定戦、距離も比較的得意の1600mになり負けられない1戦と言えよう。単勝1倍台の人気はこれまでの戦績からも当然。歴代最多タイのGⅠ7勝を達成したい。
○騎手はC・ルメール。アーモンドアイの11戦すべてで手綱を取ってきた。ルメール騎手は3年連続年間最多勝騎手で、サートゥルナーリアやフィエールマンといった牡馬の1流馬に乗ることも多いが、それらの馬とアーモンドアイが同じレースに出走する時でも必ずアーモンドアイに跨っている。「特別な存在」と語るだけにこの馬にほれ込んでいる様子だ。今回も不動のタッグでGⅠに挑む。
○不安点は、昨年12月の有馬記念以来の出走になるということか。久々のレースでも力を発揮できる馬ではあるのだが、今年3月にドバイに出国までして一度馬を仕上げているだけに、態勢を立て直せているか不安は残る。また、2500mのGⅠ・有馬記念以来で1600mのGⅠを使うと、馬が道中のペースの速さに戸惑ってついていけなかったり、ついていけても力みすぎてガス欠を起こしてしまったりすることも考えられる。
サウンドキアラ
☆戦績:17戦7勝。主な勝鞍はGⅢ・京都金杯、GⅢ・京都牝馬S、GⅡ・阪神牝馬S。
昨年は重賞未出走で格上挑戦ながらこのGⅠ・ヴィクトリアマイルに出走。15番人気ながら1着のノームコアから0.7差の7着と善戦した。今年に入ってからは1月のGⅢ・京都金杯、2月のGⅢ・京都牝馬S、そして4月のGⅡ・阪神牝馬Sと重賞3連勝中。勢いに乗る牝馬がGⅠ獲りへ臨む。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「先行」。確実にいい位置につけて直線抜け出すレーススタイルが安定感の元となっている。
○重賞3連勝は偶然では不可能。GⅡ・阪神牝馬ステークスはこのレースの前哨戦で、過去4年のヴィクトリアマイル3着以内馬計12頭の内、8頭が前走GⅡ・阪神牝馬Sに出走していた。最大の前哨戦を制して大一番に向かう。
○騎手は若手の松山弘平騎手。今年は重賞6勝で、GⅠ・桜花賞もデアリングタクトと制していて今一番勢いのある騎手。サウンドキアラとは年始のGⅢ・京都金杯で久々にコンビを組んで勝利。そこからこの馬と重賞3連勝している。この人馬の快進撃がGⅠ・ヴィクトリアマイルでも続くか。
ラヴズオンリーユー
☆戦績:5戦4勝。主な勝ち鞍はGⅠ・オークス。
4歳馬。昨年はデビュー以来4連勝で牝馬クラシックのGⅠ・オークスを制覇した。その後は11月の牝馬限定GⅠ・エリザベス女王杯に出走し万全の態勢ではなかったものの、年上の牝馬相手に3着に入った。この馬もアーモンドアイと同じ今年3月のドバイGⅠを目指して出国したが中止となり仕切り直しの1戦となる。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「差し」。オークス制覇までの4戦はすべて上がり最速(ゴールまで残り600mのタイムが出走馬イチ速いこと)で、強烈な末脚が武器。
○騎手はM・デムーロ騎手。先週の東京マイルGⅠ・NHKマイルを9番人気ラウダシオンで制した勢いのある騎手。この馬とはオークス制覇を果たした。GⅠで一際勝負強さを見せる騎手だ。
○デビューから負けなしでGⅠを制覇するのはただものではできない。オークスの勝ちタイム2:22:8は2012年ジェンティルドンナが記録した2:23:6の0.8更新するレコードタイムだった。ちなみにアーモンドアイがオークスを制したタイムは2:23.8だった。東京コースで速いタイムで走れるというのは強調材料になるだろう。
○不安点は約6か月ぶりのレースとなることか、レースの感覚を忘れているということもありうる。また、近2走は2400mのGⅠ・オークスと2200mのGⅠ・エリザベス女王杯だったが、今回1600mのレースとなると道中のペースが速くなり、脚を温存することができなかったり、自慢の豪脚を発揮する前にゴール板が来てしまったりということも想定できる。
ノームコア
☆戦績:12戦5勝。主な勝ち鞍はGⅠ・ヴィクトリアマイル。
昨年のこのレースの覇者。「究極の普通」という馬名に反して昨年のこのレースでは1:30.5という衝撃的なレコードタイムで制覇した。今年は連覇に挑む。
☆ここに注目!
○レーススタイルは「差し」?昨年のヴィクトリアマイルは「差し」で制した。ただ、3歳時のGⅢ・紫苑Sは「先行」、昨年秋のGⅢ・富士Sは「追い込み」で制しているので自在性のある脚質だ。
○騎手はベテラン横山典弘。常識に囚われない発想でレースを進めるため、どの位置取りでレースをするか読みにくい騎手。府中のマイルGⅠはこのレースでも2勝するなど相性がいい印象だ。
○今年も速い時計が出るような馬場になれば、今年も実績あるこの馬に注目が集まる。もともとこのレースはリピーターレース(過去にそのレースで好走した馬が好走しやすいレースのこと、馬の能力に加えて、独特の適性が求められるレースとも言えるかもしれない)でもある。この馬は東京1600mで2戦2勝していて舞台適性はばっちりだ。
以上が有力馬4頭の紹介です。
以下、残りの13頭を簡潔に紹介していきます。順番はおおむね予想される位置取り順です。上から「逃げ」、「先行」、「差し」、「追い込み」です。
「逃げ」
○コントラチェック 重賞2勝。武豊騎手。逃げると4戦4勝で逃げればチャンスも。
○トロワゼトワル 3走前1600mの重賞で1:30.3の日本レコードで逃げ切り勝ち。
○セラピア 前走勝ちタイム優秀。逃げ粘りに期待。
「先行」
○ダノンファンタジー 2歳時にGⅠ勝ち。前走叩いてここで復活なるか。
○メジェールスー母エイジアンウインズは同レースでダントツ1番人気ウオッカを撃破。
「差し」
○プリモシーン 昨年同レース2着。マイル重賞3勝で適性ある。
○シゲルピンクダイヤ GⅠ・桜花賞2着、GⅠ・秋華賞3着の実績。悲願のGⅠ制覇へ。
○シャドウディーヴァ 東京競馬場は重賞2着2回で得意の舞台。血統も魅力。
○ビーチサンバ 父クロフネは東京マイルGⅠに相性いい。相手なりに走るタイプ。
○アルーシャ 左回りは7戦4勝、2着1回、3着1回。得意の左回りで。
「追い込み」
○スカーレットカラー 昨秋GⅡ・府中牝馬S好タイム勝ち。末脚強烈。
○サトノガーネット 4走前左回りで重賞勝ち。一撃必殺の末脚魅力。
○トーセンブレス 前走で久しぶりの勝利。GⅠで4着2回と相手なりに走るタイプ。
こうして書くとどの馬にもチャンスがあるような気がしてきますね…。
最後に展開の予想ですが、今回はコントラチェック、トロワゼトワル、セラピアと3頭の逃げ馬がいるので彼女たちが「逃げ」争いすることになるでしょう。人気馬の中ではサウンドキアラが「先行」し、以下アーモンドアイ、ノームコア、ラヴズオンリーユーという順番になるでしょうか。ペースは速くなると予想されるので、あまり前にいると最後の最後にスタミナ切れする危険性もありますが、一方で前が止まらない良好な馬場でもあるのであまりに後ろからレースをすると差し切れないことも考えられます。
人気馬、特にアーモンドアイはある程度の位置を取って長い直線で真っ向勝負に持っていきたいでしょう。
他の馬たちは、自分のレースに徹する者、早めにスパートをかけてセーフティーリードを築きに行く者、直後でアーモンドアイをマークする者、アーモンドアイが前の馬を捉えるために早めに仕掛けて脚を使ったところで、末脚を炸裂させ差し切ろうとする者、みなそれぞれ勝利へのプランを練っているはずです。
アーモンドアイがGⅠ7勝を達成するのか、はたまた別の人気馬が勝つのか、はたまた大波乱になるのか、今からとても楽しみですね。
それでは、GⅠ・ヴィクトリアマイルをお楽しみに!