六方を礼拝する人に(令和2年5月法話)
お釈迦様が、朝の行乞(ぎょうこつ)に行かれた時、
長者の子シカラオツが東南西北上下の六方を4度ずつ礼拝しているのを見られて、
「長者の子よ。今、六方を礼拝していたが、これには何か訳があるのか?
私に聞かせてくれまいか」とお釈迦様が。
すると長者の子が答えて、
「世尊よ。
父が存命の時に、私に教えてくれたことです。
私は、その理由は分かりませんが、父の死後も引き続き、毎朝やっているのでございます。
世尊よ。私のために『六方礼拝』の意味をお説きください」と。
「長者の子よ。六方礼拝には深い意味がある。
よく聞きなさい。そしてよく考えなさい。
六方礼拝するには、六方の意味を知らねばならぬ。
東方は父母。南方は師。西方は妻子。北方は友。下方は召使い。上方は僧・バラモン。
これらの六方の人々に対して、善くつかえたり、接したりすること。
逆の立場の場合は、慈悲をもって接し、自分の役割の義務を果たすこと。
これ等の意義をよく理解して六方を礼拝することで、六方礼拝の意義は徹底するのである」と。
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私達は仏教を信心しています。
しかし、その意味をしっかりと理解しているか、どうか?
そのことを教えて頂くお話にも思えます。
先祖代々、信仰しているから手を合わせている、とか。
願い事があるから、お参りをしています、とか。
ただ何となく信仰を続けています、とか。
私達が仏教の信仰をする本当の意義をよく知って、理解して、実行することで、仏教を信仰する意義が徹底されるのだと思います。
「六道輪廻」と説かれるように、私達の「命」は六道の世界のいずれかで生きていくことになるのでしょう。
それは、自分自身の行い(身口意の三業)の結果によって生まれる世界が決まります。
仏教では、少しでも皆が幸せになり、苦しみを受けずに済むようにと願っています。
幸不幸は、神仏が決めることでなく、自分自身の行いによるものだということを知っていただき、
正しい仏教信心を実行して、幸せになって頂きたいと願っています。