🌸ブログで読む『ただいま大須商店街-前編-⑥』~正さんと優太のお散歩~ 2021.08.03 07:15 後継者問題。街の老朽化…。今の"大須商店街”が抱えている問題を浮き彫りにした【OSU五番街計画】。昔からずっと、この街を支え続けている人たちは何を選択し、何と、戦わなければならないのだろう…。それは…この街で、4代目当主として「まつだ屋」を営みこの街へ来る人たちの面倒を見、街と人とを繋いできた正さんも、逃れられない問題。”反対派”の中心に居ながらも…その正さんさえも、拭えない不安がたくさんあったのではないだろうか… 🌸前回のお話し🌸 🌸ブログで読む『ただいま大須商店街⑤』~OSU五番街計画・賛成派vs反対派~ 居間のちゃぶ台でひとり、絵を描いている優太。正さん「優太…?お母さん、どうしたぁ~?」優太「(見上げて)…面接、行った。」正さん「あっ…面接か…。」優太「(見上げたまま)」正さん「そっかぁ…。」居間を後にする正さん。また、絵を描き始めた優太。 思い直して優太を振り返った、正さん。 小さな肩が…小刻みに揺れる。正さん「優太?(微笑んで)」優太「…(見上げて)」正さん「出掛けるか…?」何も言えず…黙って正さんを見つめる優太。正さん「(察して)ははは(笑)」笑いながら優太に近づく、正さん。正さん「じいちゃんと お散歩行かんか…?」優太「…」 少しだけ、顔が曇った優太。優太「…(恐る恐る)お店は?」 正さん「ははは(笑)今日は早じまいして…。じいちゃんと…、遊びに行こう…」 優太「…うん」 正さんは優太の肩をポンポンと叩きながら豪快に笑った。 観音さまに手を合わせる、正さんと優太。手を合わせながら…優太は、正さんの気配を伺った。 祈りを終えた正さんは…本殿をまっすぐに見つめた。 正さん「(向き直り)この、観音さまはね…」優太「…」 正さん「400年以上も前からずっっと…。この大須の街を見守ってくれとるんだよ…」 優太「400年…? 凄いね!」 正さん「徳川家康っていう将軍さまの命令でね…。岐阜県の羽島市というところからここへ、引越して来られたんだ。」優太「じゃあ…僕と一緒じゃん!!」 正さん「そうだ!優太と一緒だね…」両手で優太の肩を包み本堂を後にする、正さん。正さん「だからね…」 正さん「この街は…来る者拒まず…。『みんな、来ていいよぉ!』っていう街なんだよ。」優太「…」 正さん「優太は…大須の街には、もう…慣れたか?」優太「うん…」正さん「そうかぁ…」和らかい、正さんの声。優太「(思い切って)大須は…ニューヨークみたいにカッコよくなるんでしょう…?」 正さん「いやぁ…(笑)」 正さん「(遠くを見つめ)それは、どうかなぁ…」優太「…」正さん「優太は、このままじゃ…嫌か…?」 優太「ううううん。そんなことないよ…」優太は即座に首を振った。正さん「…」優太「でも…。カッコイイ方がいい…」正さん「そうだねぇ…」 正さんはそのまま…遠くを見つめた。正さん「(向き直り)カッコイイ方がいいねぇ…」 正さんは、そう言って目を細めた。