RightBrain-Explosion

振り返り座談会 Vol.1【パパラッチ】

2020.05.20 11:00

2016年上演作

第六次右脳爆発『パパラッチ』

【無料配信開始‼︎】

(動画へは、記事ラストのYouTubeリンクから!)


右脳爆発 振り返り座談会 

『パパラッチ』編


杉並祐二・大島麻季・渡辺岳・佐藤陽香



渡辺岳:

今回は、映像の無料配信を開始した中から、第六次右脳爆発『パパラッチ』について振り返っていきましょう、という事でございまして。


杉並祐二:

改めて映像見てみて、どうだった?


佐藤陽香:

出演してた側からすると、すごく不安なところもあったんですけど…いや、これ割と面白くないですか?(笑)


杉並:

うん…たぶん体感よりは、いけてる(笑)


大島麻季:

実際やってる時は必死で、本当にどうなってるのか自分では分からないですもんね。


佐藤:

そしてやっぱり、近年の作品とは全然雰囲気が違いますね!


渡辺:

この作品は僕が演出のみで、脚本家が別っていうのはあるけどね。(※演出:渡辺岳・脚本:岸田壮平)


杉並:

それにしたって違いすぎない?(笑)


佐藤:

冒頭からずっとギャグ。今こんなことないですよほんとに!


渡辺:

それでもやっぱり右脳爆発だから人は死ぬんだけど。改めて過去作品のパンフレットに載ってるあらすじ見たら、1行目で誰か死んでる率が高すぎてびっくりした。


大島:

ほんとだ。この作品のあらすじも1行目は「兄が死んだ」だね(笑)


杉並:

やっぱり主題はサスペンスだから、お決まりの回想シーンなんかもあるんだけど…延々ボケ続けるばかりで、最終的に伏線でもなんでもないっていう(笑)。ひたすら30分くらいかけて、出てくる新情報との費用対効果あってないよね?(笑)


渡辺:

でもある意味このシンプルさ、右脳初心者の方には良いのかもしれないっすね…。頭をフル回転させなくてもサスペンスが楽しめます!という方向で、どうかひとつ(笑)



佐藤:

今にも通じることとしては、舞台装置が面白いですよね。舞台奥のスクリーンが襖になっていて、開閉して場面転換する演出。


渡辺:

あれは最初、影を使った表現をしようという発想からだったと思うけど…。それだけじゃ面白くないし。また脚本上どうしても説明セリフが多くなってしまうから、素早い場面転換で飽きさせないようにってのもあったかな。


佐藤:

冒頭の、主人公が説明する長いセリフのところも良いですね。場面転換も激しくて、いろんな人が次々出てきて、全く退屈しない。


杉並:

でもアレ舞台裏の慌ただしさヤバくなかった?(笑)


大島:

襖を開けるタイミングミスったら終わりますしね。 かなり綿密な段取りで、早着替えもシビアだったような。


佐藤:

大変でしたけど、楽しかったですよ。勿論こなさなきゃならない段取りは多いんですけど、なんというか全てがリズムに乗って、不思議と軽快で。


渡辺:

でもそこは稽古中には全く試せなかったことだからね…。いざ本番、会場に入ってみないとどうなるか全くわからなかった。


大島:

仕込みがほんとに大変だった…!


佐藤:

そうでしたね…!渡辺さんが襖にブチ切れてた記憶しかないです(笑)


渡辺:

開閉に使った、あのカーテンレールがね…。西宮のホームセンターで買って、自転車のカゴに突っ込んで自分の肩で支えて担いで武庫之荘まで帰って…。それがもういざ舞台に取り付けたら全くうまくいかない!!


大島:

最悪(笑)。それだけは忘れられないね。ものすごい人数で設営したし。


杉並:

仕込み中も、本番のステージ前にも、ずっとメンテし続けながら。取り扱い注意!って何度もアナウンスして。


佐藤:

でも今映像で見たら、意外とちゃんといけてますね!良かった本当に。



杉並:

右脳爆発における舞台装置のギミックのヤバさは、この辺りから始まってるよね。


大島:

最近で言うと、第九次公演『溝音』のカーテンとか。舞台ギミックが複雑化していったルーツかも。


渡辺:

確かに。でもこの公演に関しては『溝音』と違い、決してギミックありきの発想ではなかった。脚本の内容を舞台でどう表現するかというスタートだったから。役割としては全然違うかな。


佐藤:

そうか。冒頭、「男がビルから飛び降りて死亡する」っていうところをどう表現したらいいのかっていう話をしてましたね。その結果の、スクリーンに影を投影するっていう演出。


渡辺:

そこからどんどん派生していった。



大島:

それにしても思うのは、何度見てもすごい絵面のシーンが多いなぁって…。出てくるキャラクターも混沌として。画面だけ見てたら本当にどういう物語かわからない(笑)


杉並:

これね、見ようによっては新たなサスペンス像だと思うんですよ(笑)


渡辺:

と言うと? 


杉並:

近年の右脳爆発の舞台は、時系列を入れ替えたり、細かく多くの伏線を張ってミスリードしたり…そうやって物語の本質から観客の目線をそらしていくのが特色だと思うんだけど。


佐藤:

でも『パパラッチ』は、そこまで複雑な構造をしてるわけではないですね。


杉並:

そう、だから展開の予想もしやすく物足りないのかと思いきや…最初からひたすら繰り広げられる怒涛のギャグやメタ展開が、完全にストーリーの目くらましになってるのよね。


佐藤:

ああ、確かに!そうなんですよ、事件の真相とか犯人は誰かとか、そういう冷静な思考から否応なく遠ざけられて(笑)


大島:

なるほどー。サスペンスなのに、犯人探しのほうに全く目がいかない!斬新なミスリード!


杉並:

演出、計算通り?(笑)


渡辺:

いやあ……そこまで考えてたのかなあ(笑)。でも、とにかく面白くして!とは言った記憶はある。サスペンスの脚本は、額面通りやるとすごく重苦しくなってしまうので。最近の作品でも、役者さんには「字面に引っ張られないで、明るく面白く出来る余地を探して」ってよく言うんですけど、この公演がルーツだったかもしれませんね。




大島:

そういう意味では、やっぱり客演さんの力は大きかったね。いつも思うことだけど。


渡辺:

この『パパラッチ』で初出演して頂いたのが、河田尉さん。この人の存在が作風を決定づけた部分はあるかもしれない。率先して、なにより明確にコメディの空気を作ってくれるから、先程言ってたところの笑いによるミスリードが成立し得たというか。


佐藤:

今ちょうど、その尉さんともう一人、客演の岸田さん〔※岸田功平(劇団演陣)〕の共演シーンを見てたんですけど…なんだろう、やばい。


杉並:

詳細は是非見てもらいたいんだけど、「それ北海道!」っていうセリフがね、もう、凄いのよ。クオリティが。それで例の襖が開いてパーン!と場面転換、もはや快感すら(笑)


佐藤:

岸田さんに関しては…改めて見ると、いろんな役に扮しての出番が多すぎて、なんか申し訳なくなってきます(笑)。舞台自体は、間違いなくこの方中心に回ってましたね。


渡辺:

彼も演じ分けこそが際立つ役者だしね。その他にも、安定の暴走をする川辺美紗子さん然り、このギャグ要員の多さが決め手だった。


杉並:

こういうところを皮切りに、脚本の行間をいかに面白く埋めるか、みたいな勝負が始まっていった気がする。


渡辺:

行間どころか、「会話に横入りして、セリフ一言ごとにバカヤロー!ってツッコミ挟んでください」って尉さんにお願いしたシーンありますね。


大島:

先に突っこんで、お客様に一切考えるスキを与えない(笑)


杉並:

「ここの情報はまだ気にしちゃダメですよ!」って(笑)


渡辺:

そして、その結果生まれたのが『奈良歴史民俗博物館のシーン』ですよ。


大島:

あー!! あった!!


佐藤:

「ぱーぱーぱー、ぱぱー」っていうやつ!


杉並:

いや、これは絶対読んでる人に伝わらない!ご覧の方々、是非とも、どのシーンのことなのか判別してください(笑)


佐藤:

振り返ると、色々やってましたねえ…。どうですか渡辺さん、今改めて、こういう方向に原点回帰というお考えは。


渡辺:

これだけギャグで押せと言われると……いや、辛いなあ……(笑)



YouTubeにて期間限定
【全編公開中!】

2016年7月17日上演

@大阪 十三 Black Boxx

脚本:岸田壮平 演出:渡辺岳


▽あらすじ

兄が死んだ。

疑われた妹は、自らの無実を晴らすべく

兄の過去を調べることに。

行く手に次々と現れる記者、警察。

彼らの思惑とは──

右脳爆発が贈る、サスペンスコメディ!


▽CAST

舟田 静   :暮森芹

新門 聡一  :杉並祐二

九木隹 言志朗:河田尉

藤田 景子  :佐藤陽香

舟田 真之介 :岸田壮平

臼井 幸子  :川辺美紗子

編集長    :岸田功平(劇団演陣)