バロックの聖性4-「暗夜」苦悩の聖性
2020.05.20 11:44
1591年12月7日、十字架の聖ヨハネは49歳で帰天した。81年に彼の跣足カルメル会は承認されたが、91年6月1日、総長のドリア神父は、テレジアから続く会の精神を台無しにするような改憲を提案し、副総長のヨハネは反対したことで、すべての職務を剥奪されたのだ。
そしてヨハネの後任者のディエゴ神父は、ヨハネに恨みをもっており、ヨハネを自分の修道院に来させて、修道女と関係をもったと誹謗をいいふらした。さらに仲間の神父の修道院に行かせて、彼の世話を禁止させた。ヨハネは臨終に陥ったが、最後にひどいことをした院長は悔悛の涙を流したそうだ。
聖ヨハネは多くの神秘的著作を残したが、彼の功績は何と言っても「暗夜」である。彼は聖人達、特にアビラのテレサが神に近付いた無明の夜の苦しみを聖なるものとしたことである。肉体的ではなく、精神的苦悩を彼は高みに昇るステップとした。
「霊魂は神に近づけば近づくほどますます深い闇を感じる」苦悩は罪から来るのではなく、今や喜ぶべき神の試練とされる。
テレサとヨハネは、肉体的苦行から精神的苦行へとキリスト教的試練を転換させ、新たなカトリック的修道精神を創造したといえる。カスパー枢機卿によれば、それは近代的「個」の確立と無縁ではない。
下は「暗夜ー十字架の聖ヨハネの生涯」より