雲のてんらん会
http://www.hico.jp/sakuhinn/2ka/kumonote.htm 【雲のてんらん会 いせひでこ作・絵 】
時のうつろいとともに刻々と色合いを変えていく空のカンバスに、さまざまな表情を映し出す雲。なんて気まぐれで、なんてドラマチックで、なんて魅力的なんだろう。
最初のページを開いたときに目に飛びこんでくる朝焼けの空の鮮やかな色合いに、まずうなってしまう。そうそう、この色なんだよな。地平線にまだ姿を見せない太陽の光を受けて、横にたなびく筋雲の色が、あかね色に染まり、万華鏡のように多彩な色彩を弾き出して夜のカーテンがあがっていく。空と雲の物語の始まりだ。
画家の目は、夜明けとともに空をさまよい、ブルーのカンバスに描かれた、たくさんの雲の物語を写しとっていく。波状雲は空の階段。霧雲は白い海。ひつじ雲は空の牧場。雲海は青のサンドイッチ。澄み渡った青空に、光のプランクトンが浮遊している。まるでカンジンスキーの描いた空の夢想のように楽しい。秋のはじめの夜の浮雲は、空のかくれんぼ。そして雲はまた感情も映し出す。雷雲は泣きたい気持ち。積乱雲は交響楽を奏でる。雲に多彩な感情と物語を込めて、雲の展覧会は見る者の心をさまざまに揺さぶる。同じ時期に刊行されたエッセー集『空のひきだし』(理論社)を合わせて読むと、この絵本の深い味わいと、そこに込めた作者の思いが鮮やかに伝わってくる。
https://smcb.jp/communities/4752/topics/1506459
【課題「雲」の参加吟を発表いたします。】
1 青空をもりもり食べて太る雲 2 茜雲靴を出船に脱いでおく
3 秋の雲噂話に弾みだす 4 雨の夜逢いたい人は雲の上
5 暗雲が少し気になる戦中派 6 暗雲に負けじと走る一張羅
7 いい人の振りに疲れて雲隠れ 8 雲州に神が集いし神無月
9 おーい雲郷の天気はどうだっぺ 10 怒ったり泣いたり雲は自由だな
11 母さんの眼に映る雲綺麗過ぎ 12 過去がばれ雲行き悪く低姿勢
13 刈り終えて腰を伸ばせばいわし雲 14 キノコ雲二度と見る日の無い平和
15 雲母(きら)でよい金やダイヤの真似はせず 16 草に寝てお国訛りの雲に逢う
17 雲だって一人でいたい時もある 18 雲つかむ話の尾ひれ踏んじゃった
19 雲の上身動きとれずブロイラー 20 雲行きが怪しくなるとポチを呼ぶ
21 雲行きをじわりにらんで風見鶏 22 クラウドが語源どおりで掴めない
23 ケセラセラ別れ上手なあかね雲 24 妻子あり雲隠れなど夢の夢
25 水脈の果て友を見送るあかね雲 26 大の字に寝ると雲まで落ちそうな
27 大漁旗揚げて帰港の鰯雲 28 天地逆になれば釣れそういわし雲
29 土手をゆくちょっとセンチな雲になる 30 亡き母の面影映す秋の雲
31 入道雲見ると綿菓子欲しくなる 32 寝過ごしに入道雲の待つ車
33 ビル街の窓に小さなあかね雲 34 抱擁に雲が遮る月明かり
35 マスコミに扇動されてちぎれ雲 36 またひとつ名もない雲が涙する
37 満月を隠しておくれ逢瀬には 38 無心なる老母の心雲の中
39 名演技気分や雲の七変化 40 名月に妬心もくもく羊雲
41 名月も団子いらぬと雲隠れ 42 予報より雲に相談お洗濯
43 ワタクシの心奪って雲隠れ