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鈴木桂一郎アナウンス事務所

5月16日(土) 「コロナウイルス流行下での生活。いつも家にいて新婚生活のようだ」

2020.05.16 07:26

家にいる事が圧倒的に多くなった。というよりずっと家にいる毎日が続いている。仕事で忙しい毎日を送って定年を迎えたが、その後もアナウンサーという同じ仕事を続けてきて、毎日家で過ごすという事はなかった。仕事が休みの日には、ほとんどの日に予定が入り、歌舞伎や文楽に行ったり、知人と会食をしたり、スポーツ大会を観戦に行ったり、句会に出たり、茶道の稽古をしたりと、かなりぎっしりと予定を詰め込んでいた。それがコロナウイルスの流行で激変した。外に出歩けなくなり、自宅待機生活が長く続いている。ゴールドジムが閉鎖されたため、何とか伊勢さんのジムで、週に二度筋トレさせてもらっているが、その2回新宿に行くのに家を出るだけで、後は早朝の散歩だけが外出のチャンス、残りのほとんどの時間を自宅で過ごしている。

これだけ長い時間家にいると、何をしているのかと思うが、何もしなくても時間は立っていく。朝ごはんを食べて、新聞を読み、昼ごはんを食べて、撮り貯めたDVDや時代劇を見て、風呂に入り、夕ご飯に、ウイスキーを飲んで、8時からのBSフジのプライムニュースを見て、10時には寝るという生活だ。時には買ったものの読まなかった本を読もうと思ったが、まだ一冊も読んでいない。倉庫に仕舞っていたダブルカセットプレーヤーを取り出してきて、CDを聞いている。イヤホンで聞くより、実際スピーカーから流れてくる音の方が、気持ちがいい。サイモン・ラトルのベートーベン全集を今日は、一番から聞いていて、今7番が流れている。ハードディスクに録画をためていたオペラ、バレエをブルーレイに落とす作業も始めて、50GBのブルーレイディスク一枚にオペラなら5つの演目が収録できるが、ダビング時間が10時間もかかり、効率的には、あまり良くない。トスカが好きなので、違う歌劇場の作品を見比べると、やはり主役のトスカは歌手としても能力もさりながら、ビジュアル的な美しさも必要だと思う。巨乳はまだとして、デブのトスカは見たくない。

この二カ月ずっと妻といる事が多くなり、まるで新婚生活の様に暮らしている。怒ると怖いし、喋り方も、やくざの情婦に似て悪いが、元々美人だし、情がある人だし、一諸に長くいて結構楽しい。お互いが気を使っているが、あまり干渉せず、ゆるく家で過ごしている。食事もおいしいし、週に一度は、近くの寿司屋から寿司を取り寄せ食べている。近くに新しくパン屋さんが出来て美味しいパンが食べられるし、飲み屋の前で急に売り始めたお弁当も時には買って楽しんでいる。お菓子やケーキも切らすことはない。ボディビルの大会もなくなり、減量を中断しているので、元々好きな甘い物を食べない選択はない。何もできない生活だけど、それなりに楽しい毎日だ。考えてみると、この生活は、NHKのアルバイトをやめ、いわゆる公職をすべて退いてからの、近い将来の生活を先取りしているように思える。収入は年金だけとなり、歌舞伎はイヤホンガイドの解説員になったので見に行くとしても、ジムに行かず、句会に行かず、買い物に行かず、知人との会食も行わず、本屋にも行かない。多分、完全リタイヤ後の生活を、今はテスト的に行っているような気がする。年金だけで生活する、本当の老後の生活が始まるとしたら、その前触れなのかと思っている。