藍こそ植物染料の中で最も複雑微妙な、神秘の世界と言ってもいいと思います。
染織作家 志村ふくみさんの書籍
「一色一生」より引用して考察も交えながら
草木染や染織のおもしろさについて皆さんと共有していけたらなと思います。
陽紀で栽培、発酵させた蒅↓
昔から藍は建てることを瓶を守ることを染めることの3つを全うして初めて芸と言われています古来藍小屋には愛染明王を祭り祈りながら染めたと言うことです。それ故この藍の色には深い精神性が称えられ歴史や風俗に浸透した色として風格を備えています。
インド中国アフリカ日本と全世界で藍ほど人間と深い関わりを持ち愛された色はないと思います。ここに日本人の顔立ち心情に愛ほどふさわしいものはなく藍染は一時期驚くほどの発展をとげ深い内面性のある色にまで及びました。
藍には一つ一つの藍の一生があって揺籃期から晩年まで1朝ごとに微妙に変化していきます。藍瓶のふたを開けると中央に暗紫色の泡の集合した藍の花がありその色を見て機嫌の良し悪しを知ります。盛んな藍気を発散させて純白の意図を一瞬翠玉色に輝かせ縹色に変わる青春期から落ち着いた瑠璃紺の壮年期を経て日毎に藍分は失われ洗い流したような水浅黄色に染まる頃は老いた藍の精のようでその色を瓶覗と言うことをずいぶん後にしりました。瓶覗といえば瓶にちょっとつけた淡い水色を言うように思いますが実は藍の晩年の色を言うのです。
笛吹きしだいで藍はどんな色を出すか藍の微妙なグラデーションはやがて緑に通じる道なのです。水浅葱、浅葱、縹、花紺、濃紺と藍は瓶をくぐらせる度数によって、徐々に深さを増します。そのうつりゆく濃淡の美しさは水際の透明な水浅葱から深海の濃厚まで海と空そのものです。あの蓼藍と言う植物からよくぞ人々はこれほどの自然の恵みを引き出したものです。
その10段階に近い藍の濃淡に黄色の染料、刈安、くちなし、黄檗、沖縄の福木などで染めた黄色を掛け合わせますと、それぞれ少しずつ違った黄色に十段階の藍がかかり、緑のバリエーションが生まれます。初冬、橙色に熟し切ったクチナシの実を煎じて染めた黄色は暖かく黄金色に輝いていますし、穂出す前に刈り取ると刈安を染めますと(椿媒染)、青みのある金属質の黄色になります。沖縄の福木の黄色は明るいレモン色です。それらの黄色をしっかり糸に定着させ最も盛りの縹色に掛け合わせますとまぶしいほどの緑が生まれます。青と黄、水と光、自然はこの2つの色を結合させることによって緑を誕生させました。
以上が志村ふくみさん著「一色一生」からの引用でした。
藍の深さをまだまだ知る由もない未熟な私ですが、藍は魅力的で私を惹きつけて止みません。真っ黒な液体につけると緑や茶色の色を発色し、空気に触れさせると美しい青を発色させます。藍と光は一体なのです。
暗闇に光が注ぎ、結ばれて命が生まれる。
この世界の縮図を藍に見つけることができると私は思い、染めるたびにワクワクさせられます。
私達を楽しませ、懐深く包んでくれる藍。どのように感じられましたでしょうか?
最後まで見ていただいてありがとうございます。
次回は私も栽培している紅花の色「赤」について次の文章で語っていきたいと思います。
今後も草木染から学ぶ地球や宇宙の神秘を皆様と共有できたらと思います。
また次回もお楽しみに。