グレ&アンがナンパしたら その2
いつものたまり場に12~15歳の少女たちが十数人集まっていた。彼女たちは、人待ち顔にしきりに道路の方を見ながら話し合っていた。
「今日来るかしら、アンジー」
「そろそろ来るんじゃない」
「あ、見て!来たわよ」
少女たちの一人がそう叫んで指さし、皆が一斉にその方角を見た。薄紫色のシャツを粋に着こなした長髪の少年が少女達のいる場所へ向かってやってくるところだった。隣にもう一人、黒髪の少年が肩を並べて歩いていた。
「相変わらず派手なカッコね」
「似合うからいいのよ」
「隣にいるの誰?初めて見るわ」
「アンジーの友達かしら?」
「知らないわ。でも、結構可愛くない?」
口々に批評する少女達の目の前に、ほどなく「派手なカッコ」と評された出で立ちのアンジーと連れの少年が近づいて立ち止まった。
「ハイ、アンジー。久しぶりね」
「私たちのこと忘れちゃったのかと思ったわ」
ガールフレンドたちにしばらくぶりを軽く責められてもアンジーは悪びれなかった。
「まさか!そんな訳ないでしょ」
「本当?」
「ホント、ホント」
「そう?なら許したげる」
ひとまず挨拶を済ますと、彼女たちは早速興味津々にアンジーの連れを見た。
「ところで、今日は可愛い人を連れてるのね」
「ああ、こいつは・・・」
アンジーがグレアムを紹介すると、少女たちは一斉に叫んだ。
「え~アンジーのお兄さん?!」
「噂の?!」
「アンジーとは真逆のタイプ!」
「地味系ネクタイ派」
「でもそこが素敵」
アンジーのガールフレンドたちはグレアムを取り囲むと、次々と質問を浴びせかけた。
「アンジーとは3ヶ月しか違わないんでしょ?」
「一緒に養子になったって本当?」
「どうして右目を出さないの?」
「ピアノ弾くんでしょ?」
「え!そうなの?聴きたいわ!」
「ピアノの置いてあるカフェ知ってるわ。今から一緒に行きましょうよ!」
「え、えっと、あの・・・」
殆ど反論する隙を与えない少女達の勢いにグレアムは面食らっていた。
「おい、ちょっと待てよ。そいつは・・・」
このままではグレアムを強引に連れていきかねない少女たちを、アンジーが止めに入ろうとした。
「放っておきなさいよ、アンジー」
「そうよ、お兄さんはお兄さんで楽しくやるでしょうよ。それより、私たちの相手をしてよ」
残った数人のガールフレンド達がアンジーに忠告した。
「そんな訳にはいかねェ。あいつはこーゆーことはからきしなんだ」
珍しく真剣な顔をしたアンジーは、グレアムを取り囲んだまま移動を始めた少女たちの後を追って行ってしまった。
「・・・行っちゃったわ」
残された少女たちは、ろくに話もせずに慌ただしく行ってしまったアンジーに呆気にとられた様子だった。
「あんな心配そうな顔のアンジー初めて見るわ」
「私たちのことなんて眼中になしよ」
「本当。お兄さんのことばかり気にして」
「ねえ、アンジーって、ひょっとして・・・」
少女たちは顔を見合わせた。全員の頭の中に一致して、一つの単語が思い浮かんでいた。
「ブラコン?」