自粛生活は、シンプルな暮らしの中にある たくさんの大切なことを気づかせてくれたきっかけに。 「目に見えないことの中にある大切なこと」を 「ヨガ」と「食」を通して伝えていきたい。/綾(あや)
ヨガインストラクター・食養生コーディネ―タ―
綾(あや)
仕事への愛にPRが掛け合わされれば「POWER」になる。自分の仕事に誇りと自信、そして何より「愛」を持つハートフルな愛すべき仕事人たちを取材する「LOVE×PR=POWER」プロジェクト(略してL.P.P.P)。いまだからこそポジティブに、いまだからこそ力づよく、これからに向かって歩み始めている彼らの温度をお伝えしてまいります。
今回のゲストは、ヨガインストラクターであり、食養生コーディネーターである綾(あや)さん。新型コロナウィルスの感染拡大によって、飲食店同様に、ヨガインストラクターの方々も大変な苦境に直面しています。オンラインヨガに移行するインストラクターの方々も増えてきている中、綾さんもこの5月よりオンラインレッスンを開始。ヨガや食養生を通して心や体を支える大切さを知る彼女が今肌感覚で感じていること、またこれから思い描いている夢について聞いてみました。
■新しい挑戦、オンラインをスタート
―まず新型コロナウィルス感染拡大による影響 をお伺いしたいです。このコロナショックの中 で一番大変だったことはどんなことですか?
綾:ヨガスタジオが閉鎖してしまって、基本的には仕事ができない状態になったことですね。ヨガインストラクターはテレワークというわけにはいかない仕事なので。オンラインでクラスを開催していますが、やはり生徒さんたちに直接 会って、対面でヨガを教えられないということがとてもショックでした。
―オンラインでやるヨガと対面のヨガは、教える側からするとどう違いますか?
綾:生徒さんを見る時に、直接見るのとパソコンの画面越しに見るのは全然違い、対面での指導だと角度を変えて見たり、ポーズも手で触れてより良い方に調整することができます。オンラインでもできないことはないのですが、対面だとそれだけコミュニケーションも濃くなり、 お互いに信頼関係も築けますね。そして、今どういう呼吸をしているか、苦しそうか、疲れているか、心地よさそうかなど細かい感覚が画面越しだと伝わりづらいです。それでも、オンラインの指導では画面を通して生徒さんたちの持つエネルギーをよく見るようにしています。
―なるほど、オンラインを始めてみた感想もお聞きしたいです。オンラインのいいところはどん なところだと思いますか?
■ペットや子ども、「自宅から離れられない」人でも参加できる良さ
綾:自宅で出来て、気軽に参加してもらえるところですね。ペットとか、小さな子どもがい て、自宅から離れられない人でも気軽に参加できるところ。あと時間ですね。私の場合子どもがいるので、夜家を空けることはできないけれど、週に1、2回程度 オンラインヨガを行うのであれば、自宅を空けずに仕事ができる。そこはとてもいいですね。
<幅広い年齢層の方が気軽に参加しているオンラインヨガ>
―オンラインヨガレッスンはいつ頃から始めましたか?
綾:コロナが流行り出したころに「あ、もしかしたらオンラインかな」と感じ始めました。
わたしはスタジオと契約してレッスンを受けもって活動しているのですが、 3 月初旬くらいからスタジオを臨時で閉める日 が増えてきたので、「もしかしたら、違うやり方を考えていかなければいけないのでは」と思い始めたんです。私もそうだし、多くの人がそう思っていたと思います。
やってみてよかったと思えたのはコロナのこうした状況下で、家に閉じこもりきりになって誰とも話さない人や、人とのつながりが薄くなる人がいる一方で、家族と密になりすぎてひとりの時間が欲しくなる人もいますよね(笑)。ヨガで体を動かし、ただ感じることや自分の内側に向かうことで、細かい思考が止みます。気持ちの切り替えにはとても良いですよね。ヨガを教え続けたい、という気持ちもありながら自分にできることで何か役に立てたら、という思いもあったのでオンラインクラスを開催してよかったです。
―コロナが収束した後でもオンラインのヨガレッスンはやっていきたいと思いますか?
綾:はい、オンラインヨガも一つの方法だというのがわかったので、この方法も残したい とは思っています。でもメインは「戻したい」「戻らないといけない」という気持ちも‥‥。
―確かにオンラインは便利ですが、そういう点では対面の大切さもあるのですね。逆にコロナが きっかけとなって、今後のヒントになったことはありますか?
綾:そうですね、どんな状況でもその状況の中で自分にできることはあるのでそれを見つけることが 大切だと思いました。普段から様々なことに敏感になって目を向けること。これは自分に関係ないと思わないで、興味をもってその中に自分が関われる可能性があるかどうかを頭と心を柔らかくして見る。そういうことはすごく大事だなって。
■「食養生(しょくようじょう)」という考え方
―続いて、「食養生」という考え方についてもお聞きできたらと思います。
綾:元々食について興味があり、発酵食品やマクロビのレシピを取り入れた健康食を自宅で作っていました。自分や家族の食事や食べ方などをきちんと学びたいと考え、数多くある食の講座の中から目に留まったのが「食養生」という考え方でした。
「食養生」は何をどのように食するのが健康維持のために良いのかという、東洋医学に基づいた、食べ方や、食物についての選択の仕方ですが、食べ物について学ぶだけではなく、自分を知り大切にすることや、自然と調和し、身体に取り入れる食物について知ること(食べ物を取り巻く環境などを含む)そしてそれを継続的に実践し、健康を維持していくということです。その根底にはいつも感謝の気持ち(心)が存在します。
「食養生コーディネーター」とは「食養生」のホリスティックな視点で食と健康に関する情報を伝える専門家です。東洋医学や食養生についてまだまだ私は新米ですが、「枝葉よりも根幹を見る」というように、多くの健康情報にまどわされることなく、本質を見て食について取捨選択できるようにするために様々なことを学びました。そして今も実践中です。
<食への感謝の気持ち(心)を大切にする「食養生」という考え方>
―はじめは耳慣れない言葉でしたが、なんとなく今の時代にフィットしているというか、これからもっと求められていきそうな考え方、ライフスタイルという感じですね。
綾:まさにそうですね。何をどう食べるか、を考え実践すること、そしていつもそこに感謝の気持ちがあることはヨガを実践していて感じることと非常に似ています。
本当の豊かさとは、物や情報にあふれる中で忙しく生きることなのか、それとも、簡素でも心豊かに生きることなのか・・ヨガも食養生も人生を「どう生きるか」のヒントになり得ると思います。ヨガ哲学の根底にもある「どう生きるか」ということが食養生の中にも存在しているということを食養生を勉強している中で気づき、共感しました。私にとって「食のヨガ」である食養生を多くの人に知ってほしいと思っています。
■夢は「ヨガ×食養生」のワークショップを開くこと
―アフターコロナ・ウィズコロナ、これから、近い未来で一番やりたいと思っていることはありますか?
綾:そうですね。いつか「ヨガリトリート」をしたいと思ってます。ヨガリトリートって、例えばお寺で開催されている 1 泊 2 日の座禅会ってわかりますか?朝早く起きて座禅して、お掃除して、精進料理食べて、また座禅してというルーティーンがありますよね。そのヨガバージョンです。 片田舎の自然が多いところで、宿泊型のヨガのワークショップを一泊二日で。それをしたいですね。そういうのを食養生と一緒にコラボレーションで開催できたらいいなって。コロナが流行して今こういう状況なので、それをいつ実現できるかがまだ見えなくな ってしまいましたが、いつか近い将来に、ヨガも食養生も共感できる活動をしている人たち とともに実現出来たらいいと今は思っています。
―最後に、綾さんにとって仕事とはなんですか?
綾:わたしにとって仕事は、「生きるための軸になるもの」。嫌々やっている仕事だったら、多分食べていくための手段でしかないですね。でも私にはそれができないと思ったので20代ですごく模索しました。
「好きなことを仕事にしたい」「自分がずっと納得してやって いけることを仕事にしたい」と思って、この 仕事を選びました。クラスに出てくれた人が、レッスンを受けたことで、いい顔になって帰っていくのを見ると一番うれしいですね(笑)。
-近い将来の目標がヨガリトリートだとしたら、将来の目標、人生を通して実現していきたい目標ということではどうですか?
綾:老若男女関係なく、もっとヨガを広めていきたいと思っていますが、特に女性にはもっとヨガを身近に感じてもらえるような活動をしたいですね。
■ヨガは人生のどのステージにも必ず寄り添ってくれるもの、特に女性には。
<老若男女、とくに女性のためのヨガをもっと広めていきたい>
綾:わたしは女性のためのヨガを今まで学んできて、たくさんの女性たちを教えてきました。「ヨガは人生のどのステージにも必ず寄り添ってくれる」ということが私の信条であり、老若男女すべての人にヨガを、と思っていますが、特に日常的にヨガが必要だと思っているのは女性たちです。
現代女性は社会の中で様々な役割を担い、とても忙しい毎日を送っています。平日は仕事をしながら、家事、育児をこなし、時間に追われて過ごし、週末もゆっくり休む暇もない人たちが多くいます。女性には月のホルモンリズムがあり、人生においてもホルモンの波があるため、体の健康や感情を一定に保つことが難しいのです。それに気づいて立ち止まり、リラックスすること、癒しを受けることが何より大切です。そんな女性たちに向けた、ヨガのワークショップや、生活改善リトリート、料理や献立の提案、本を書く、などなど『食×ヨガ』でやりたいことはたくさんあります。
―時間や仕事に追われている時こそ必要なのかもしれませんね。
綾:そうですね。コロナの流行で目の前の日常が急変して、自粛生活というスローでとても素朴な生活を経験しました。でもそのおかげで「目に見えないものの中にある大切なこと」へ目を向けることができた人も多いのではないでしょうか。忙しさを理由に立ち止まることをせず、ただ時間の流れと科学の進歩に身をゆだね続けて、自分が自然の一部であることも忘れ、本当のつながりとは何か・・ということを見失う。コロナ以降はもっと人間が謙虚に、真の人間らしさを取り戻す世の中であってほしい、そう願っています。
そのためにもヨガと食で健やかな体、心、思考を育む。私もその一助として活動していきたいですね。
綾(あや)
埼玉県出身・1975 年生まれ/ヨガインストラク ター・食養生コーディネーター、東京・三鷹市にあるヨガとアーユルヴェーダサロン「Harmony」主宰
幼少期からクラシックバレエや体操など、様々な ジャンルのスポーツを経験。ヨガの呼吸とバラン スの取れた動き、疲れた心身への絶大な効果に感激し、ヨガの道へ。2005 年よりヨガインストラ クターとして活動。「ヨガは私たちの人生のどの ステージにも寄り添ってくれる」を信条とし、老 若男女すべての人を指導できるインストラクター であるために、解剖学、瞑想、産前産後のヨガ、月経、更年期のためのヨガ、整形外 科ヨガ、シニアヨガなどのトレーニングを修了。専門は女性のためのヨガ 月経、妊娠・出産、産後そして更年期~閉経後の人生までヨガでサポートすることに力を注ぎ 勉強を続けている。二児の母であり日々の家族の食事や、職業柄不規則になりがちな自分の食生活を整えるために食について学び、2020 年に食養生コーディネーター に。現在は共通点が多いヨガと食養生を広めるために活動をしている。
インタビュー聞き手:WORKING FOREVER