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歯ぎしりが起こる原因とその対応法

2020.05.25 03:01

参考:LIFE DESIGN 2018/2/7 臨床ライブラリ

歯ぎしりが起こる原因とその対応法
(主な症状と治療について)

日頃の診療で歯ぎしりをしていると思われる方はたくさん見受けられます。

歯がすり減って、歯やあごに痛みがあったり、知覚過敏がなかなか治らなかったりして悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

酷い場合には歯ぎしりで歯を失うこともあり、口の中に様々なダメージを残してしまいます。

歯ぎしりの原因はまだ完全に解明されているわけではありませんが主な原因はストレスと言われています。

ストレスは無意識に歯ぎしりとして現れることがあるのです。

今回は歯ぎしりが起こる原因とその対応法、歯ぎしりの主な症状と治療についてお伝えします。


1.歯ぎしりを引き起こす原因と対応法

A.環境や人間関係などによる精神的ストレス

歯ぎしりの原因で最も有力なのがストレスです。

仕事や学校での人間関係・結果によるものや転勤、転職、入学、結婚、引っ越しなどの環境の変化で歯ぎしりが強くなることがあります。

また、自分や家族が健康を害して入院したり、良く知った方が亡くなったりしてもストレスはかなり強くなります。

その結果、歯が欠けたり、詰め物が取れたり、歯に痛みが出たりと口の中に症状が出ることがあります。

対応法

現代社会でストレスを無くすことは極めて難しいです。

ストレスとうまく付き合っていくしかありません。

ストレスを感じる自分自身の考え方を改善する努力をすることはとても大切です。

また、時間に余裕をを持ったり、趣味の時間を楽しんだり、家族や友人と楽しく過ごすなどストレスをうまくコントロールすることで歯ぎしりも軽減していきます。

また、自覚症状のある方で自分でコントロールしづらい場合には、マウスピースを使って歯を守ります。

B.歯並びが悪いことによる影響

歯並びだけが原因で歯ぎしりが起こるわけではありませんが、歯並びが悪いことで噛み合わせに影響が出て、歯ぎしりもしやすくなります。

歯の中で一番感覚が鋭いのが下あごの前歯だと言われています。

この歯が噛んでなかったりすると顎の動きが不安定で動きやすくなり歯ぎしりを助長します。

また、歯並びが悪い人が歯ぎしりをすると、噛み合っている歯が少ない場合、噛んでいる歯に過度の負担がかかって大きなダメージを受けやすくなります。

対応法

子供の時に姿勢や習慣を改善し、顎の成長育成を行うことで歯並びが悪くならないことが理想的です。

しかし、残念ながら歯列不正になった場合、歯列矯正や部分矯正をして一部分だけに噛む力が集中しないようにしておきたいですね。

日本でも矯正治療をされる方が増えて参りました。

矯正している期間は気を使うこともありますが、見た目やメンテナンスのしやすさ、かみ合わせのことを考えると必要がある方は矯正治療をした方がよいと思います。

C.噛み合わせの変化の影響

人の素晴らしい適応能力だと思いますが、噛み合わせは常に変化しています。

成長や老化、歯科治療、歯周病、歯の喪失、歯の破折などの変化に対応するために歯ぎしりによっても噛み合わせを自己調整しています。

普通の自然な変化は体にとって必要なことです。

20代の時と70、80代の時では顎や歯の形も変わってきます。

しかし、虫歯の放置や歯周病など短期間で極端な噛み合わせに変化があると歯ぎしりを助長する可能性があります。

対応法

虫歯や歯周病によって歯ぎしりが助長されることもありますし、逆に歯ぎしりによって虫歯や歯周病が悪化していきます。

病気にならないように予防すること、手遅れにならないように治療をして、歯ぎしりを引き起こさない噛み合わせを維持することが大切です。

そのために日頃からメンテナンスに通い、自分自身でのプラークコントロールをできるようになるよう心がけてください。

D.くいしばり癖

無意識に行っている癖が夜寝ている時に出てしまうこともあります。

日中に食いしばる人は筋肉が記憶していて癖になっていますので、寝ている間も行なってしまうのです。

また、顎を閉める筋肉が発達していると歯ぎしりによるダメージも強くなりますから日中は食いしばらないようにすることが大切です。

対応法

日中、意識があるときに歯と歯を噛み合わせないようにすることです。

人は安静にしているとき、常に歯と歯の間に約1mmの隙間があり、普段は接触していないのです。

正常な場合、1日の中で接触するのは食事の際の15分~20分程度です。

日中、歯と歯を接触させないように意識することによって、寝ているときの歯ぎしりを予防することができます。


2.歯ぎしりによって引き起こされる症状

A.噛むと痛む

歯ぎしりによって歯の根と骨との間にある歯根膜という組織が炎症を起こし、噛むと痛みを出します。

歯ぎしりは長時間続くと、歯や歯の周りの組織にダメージを与えていきます。

特に奥歯が噛んで痛いときで上も下も左も右も痛いなどの場所が複数におよぶ場合は、虫歯ではなく歯ぎしりによって痛みが出ている可能性があります。

B.歯がしみる

歯ぎしりによって歯が揺さぶられて歯の神経が過敏になったり、歯の根元や噛む面が削れて歯の内部の象牙質という部分が露出したり、歯に亀裂が入ったりすると歯がしみて来る場合があります。

口の中が酸性状態で歯の質がもろくなっているときに歯ぎしりが起こると歯の擦り減りは助長され、しみる症状が出やすくなります。

C.何もしていなくても歯が痛い

歯ぎしりによって歯に亀裂が入ると、その隙間から細菌の感染が起こり神経に炎症を起こして痛みを出したり、さらに神経が死んでしまうことで歯の周りの組織にも炎症が波及して痛みを出します。

初期の頃はしみたり、噛んで多少痛い程度でも、その後、強い痛みが出ることがあります。

歯医者のレントゲンでは小さな亀裂を確認できないですし、亀裂の方向によっては写らないため、急に痛みとして出る場合、亀裂が入ったことによる可能性があります。

D.修復物が壊れたりはずれる

歯ぎしりによって歯に強い力がかかると、セラミックの詰め物やかぶせものが割れることがあります。

また、割れない金属などでは、はずれてきたりします。

歯ぎしりする方はこれを何度も繰り返す傾向があります。

E.顎が痛い

歯ぎしりによって顎関節に負担がかかり、顎が痛くなることがあります。

顎は左右の関節の部分だけで頭蓋骨と接しています。

歯ぎしりによって顎の関節に過度の力が加わると、顎の関節にある軟骨がずれたり、穴が空いたり、変形したり、関節の周りに炎症が起こったり、顎を動かす筋肉に問題が起こって顎が痛くなります。

F.歯が割れる

歯ぎしりによって歯に過大な力がかかると、歯が割れてしまうことがあります。

特に神経のない歯は削っていることで自分の歯の部分が少なくなっているので、割れやすくなっています。

亀裂から細菌が入いり、神経が死んでしまうと、歯茎が腫れたり、膿が出てきます。

大きく割れてしまった場合は歯を抜くしかありません。

神経が残っている場合も割れることがあり、この時は強い痛みが出ることが多いです。


3.歯ぎしりの治療

A.マウスピース療法

歯ぎしりは原因が混合しておこるため、治療を行なっても確実に止めることは難しいです。

しかし、そのままでは歯や顎に悪い影響を及ぼすためマウスピースによって歯を守る必要があります。

マウスピース自体は歯ぎしりを止めたり、軽減したりすることはありませんが、歯ぎしりの力が歯に負担をかけるのを和らげることはできます。

歯より柔らかいものを間に挟むことにより歯自体への影響を軽減しているのです。

B.矯正治療

歯並びが綺麗な方でも歯ぎしりをする方もいるので、矯正治療をしたからといって歯ぎしりが止まる訳ではありません。

しかし、噛んでいるところが少ない方は、矯正治療をすることで歯ぎしりや顎の痛みが軽減する場合があります。

特に下顎前歯が噛んでいない方は顎の動きが不安定になり歯ぎしりしやすいと言われているので、矯正治療で改善することは手段の一つです。

C.噛み合わせ治療

歯の治療途中や歯が喪失した後放置している場合、噛み合わせが不安定になりやすいので、確実に治療して、あご全体で噛めるようにする必要があります。

そうすることで個々の歯の負担が軽減しトラブルが起こりにくくなります。

D.ボツリヌスキトシン注入療法

ボツリヌス菌の成分を抽出した薬剤を使用して顎の筋肉の過度の力を抑制します。

確実に効果が表れますので、筋肉の力が強い方や早期の改善を図る必要がある方には良い選択肢だと思います。

効果は最長半年ぐらい続きますが、その後は効果が消えて元通りに戻っていきます。

普段何か特別にすることなく、違和感も特にないので、マウスピースが苦手な方や歯以外に症状がある方にはお勧めです。

E.自己暗示療法

日中かみしめないように意識し、寝る前にも歯と歯を当てないように自己暗示をかけて寝ます。

毎日の習慣にして確実に行うと効果が出てきます。