「ODQ(小田急)」がつなぐ東京カルチャーの系譜 / KANDYTOWN | 01
東京のカルチャーを語る上で原宿が欠かせないのはもちろんだけど、実はそこのコアにいる人たちの多くが小田急線沿線から輩出されてるって、みんな知ってた?
下北沢はあまりにも有名だけど、祖師谷大蔵や千歳船橋にもセンスよすぎるスケーターやパンクス、B-BOYたちがたくさんいたんだ。その先達たちの代表はWTAPSの西山徹さんやスケシンことSKATE THINGさん。そして今回紹介する紹介するKANDYTOWNも小田急の喜多見が根城。
なぜ小田急線沿線地域がセンスのいい人たちを生み出すのか?
KANDYTOWNの成り立ちを訊いたら、その理由も分かっちゃいました。
喜多見は世田谷だけど田んぼがありますよ | DONY JOINT
ーみんなの地元・喜多見ってどんなところなの?
DONY JOINT 野川とか多摩川とか川系は充実してるけど、本当になんもないですね。
IO マツモトキヨシがあるよ。
DONY JOINT スリーエフとか。
IO びっくりドンキーもあるよ。ロイヤルホストは最近潰れたよ……。
ーKANDYTOWNの曲で「ODQ」ってあるじゃない? 僕、あれ感動したんですよ。小田急線って決して都会的な電車ではないと思うんだけど、それを「ODQ」と言い換えてしまうセンスの良さに。
IO 曲のことはサンタに聞かないとわかんないけど、俺らタバコのことをふざけて「TBK」って言ったりするんですよ。「TBC」じゃなく、あえて「TBK」で(笑)。
DONY JOINT 枝豆は「EDM」(笑)。
IO 喜多見のことを「K-TOWN」ってスラングっぽく言ったり。
ーそもそもKANDYTOWNって言葉はどういう流れで出てきたの?
IO 俺らのよく溜まっていた場所が喜多見なので、ずっと「レペゼンK-TOWN」って言ってたんですよ。でもKANDYTOWNって言葉自体がいつ生まれたかはけっこう曖昧で、たぶんだれかが曲の中でスピットして、それが俺らの中でフィットしてそのまま使うことになったんだと思います。
ー喜多見って世田谷区だよね?
DONY JOINT はい。世田谷とは言っても一番端っこで、田んぼがあるようなとこなんですよ。
YOUNG JUJU 千歳船橋とかに住んでるやつもいるけど、KANDYTOWNのメインになった人たちが喜多見なんですよ。
ーKANDYTOWNって大所帯だよね。IOくんのリリースパーティに行ったとき、ステージにすごいたくさん人がいてびっくりした(笑)。
DONY JOINT (笑)。俺もステージで歌ってて「お前なんでステージにいんの?」みたいな感じでしたよ。みんないい感じに適当なんですよ。自分たちでも謎ですよ。こんだけ人数多くて、みんながどっかで繋がってて。
YOUNG JUJU KANDYTOWNは年齢が分かれてて。IOくんやYUSHIは、俺やDONYの2コ上で歳上チーム。年上チームは喜多見出身で、年下チームは千歳船橋とか経堂とか祖師谷に住んでるんです。で、俺とIOくんとかは私立の学校に通ってて、他のみんなは公立の学校なんですよね。
ー私立の学校にはいろんなところから集まってくるもんね。
YOUNG JUJU だから地元に友達もいるし、ちょっと離れた学校の人も仲間だし。本当にいろんなやつと遊んでましたね。悪いやつも良いやつも普通のやつも。
和光出身のやつらはみんなぶっ飛んでますね | DONY JOINT
ーJUJUくんとIOくんはどこの学校に行ってたんですか?
IO 和光です。
ー「ODQ」こと小田急線沿線だ(笑)。
YOUNG JUJU そうです(笑)。
DONY JOINT 和光出身のやつらはみんなぶっ飛んでますね(笑)。
YOUNG JUJU IOくんは小学校から。俺は幼稚園から中学までいて、高校で公立に行きました。
IO KANDYTOWNの和光出身でスマートなのは俺ぐらいですね。(笑)。
YOUNG JUJU でもIOくんは高校1年で辞めてるっていう(笑)。
IO (笑)。
ーどんな校風だったの?
IO 校風とかはわかんないけど、確かにストリートカルチャーの中にいると和光出身者に遭遇することは多いですね。
YOUNG JUJU 音楽が多かったよね。
IO そうだね。俺らの代でいうとYUSHIがいたから、その影響でみんながヒップホップをやるようになって。(OKAMOTO'Sのオカモト)レイジとかはバンドで。上の世代の人も今の原宿でファッションシーンを作ってきたようなスケシンさんとか、WTAPSのデザイナーさんとかもいて。なんでかわかんないけど、ストリートカルチャーと密接な人が多い。
私服通学だからダサいといじめられる | YOUNG JUJU
ー和光がそういう人種を輩出するのはなぜだと思う?
YOUNG JUJU 私服通学っていうのは大きいと思いますよ。ダサいといじめられるっていう。
ーそれは過酷……。
IO (笑)。でもファッションでどういう人となりかが、ある程度分かるじゃないですか。
YOUNG JUJU だから学年のイケてる集団は絶対にお洒落。
ー和光ではファッションがコミュニケーションツールとして機能してたんだね。それは身なりを意識せざるを得ないかも。
YOUNG JUJU そうですね。かなり早かったと思います。だれがどのブランドの服を着てたとか、すぐにそういう話題になってたし。
ーKANDYTOWNの新しい部分って、高いラップスキルとサウンドセンスがもちろんあって、そこにファッションセンスが同居しているところだと思うんだ。IOくんが表紙を飾った雑誌『Ollie』にしても、仮にあの服がスタイリストに用意されたものでも、IOくんにちゃんと着こなせる感性があったから、多くの人がこれまでのラッパーとは違う何かを感じ取ったんじゃないかと。
IO ありがとうございます。
ー何を着ても自然体というか、頑張ってる感がないよね。
YOUNG JUJU 昔からそういうスタンスだったんですよ。ずっとラップやって、ファッションも常にかっこよくいて、っていうのが普通。そう考えてるから、「表紙になるよ」って言われても特別気負うこともないっていう。
ーみんなはファッションと音楽が自然と結び付いてるね。
IO 僕らの時代は16才くらいの頃にはYouTubeが出てきて、海外ヒップホップのPVとかもすぐ観られる環境が整ってたんですよね。意識的に音楽とファッションを結び付けてたわけじゃなくて、PVを観て、好きなアーティストのファッションを好きになった感じです。逆にファッションから音楽に入っていくこともあるし。それが当たり前だった。
DONY JOINT 立ち振る舞いとかね。
IO RYOHUとかNEETZは耳から音楽に入っているタイプだと思う、俺なんかは目、視覚から音楽に入るほうですね。だから映像とかも好きなんです。YouTubeを観て好きなアーティストに影響されて、自分なりにいろいろ表現してみる。ファッションだったら、昔は36インチのパンツとかでダボダボで歩いてたし。
映像制作は……完全にノリで! | IO
ーIOくんは自分で映像を作るクリエイターでもあるよね? オフィシャルサイトに掲載されている『KANDYTOWN THE YESTERDAY』はどういうコンセプトなの?
IO コンセプトとかは特に何も決めず、「今日カメラあるから撮ろうよ」みたいな。海外アーティストがツアーの合間とかの他愛のない映像を公開してるじゃないですか。
DONY JOINT 完全にノリだよね。
ーあの動画は編集が本当に秀逸だと思うんだけど、IOくんがディレクションしたの?
IO 俺が実際に編集しています。俺、カメラ使えないんですよ。ぜんぜんわからない。仲間にカメラやってもらって、撮ってもらったデータをパソコンに入れてもらうとこまでやってもらって。俺はファイナルカット(動画編集ソフト)を使っての編集だけですね。
ーそうなんだ!? 勉強したの?
IO 独学です。昔からPVとか映画を観るのが好きだったんで見様見真似というか。
ーセンスいいよね。
IO 俺もそう思います(笑)
どうでした? KANDYTOWN、つまり、イケてるってことでしょう。彼らは常にこんなノリだけど、グッドセンスの塊なんだ。つまりスマートってこと。
その佇まいがどこで生まれたのか知りたかった。和光学園という校風(?)と、「ODQ」がつないだ私立と公立のライン。同じセンスを持つやつらって、お互いの吸引力で自然と出会っていく。そしてさらに高めあうんだよね。面白い。次回はそんなKANDYTOWNのコアな部分に迫る。
photographer : 高木 康行 / YASUYUKI TAKAKI
撮影協力 : BUILDING fundamental furniture
IO. Young Juju. Dony Joint. - We & 4Ever U
IO. DONY JOINT. YOUNG JUJU. feat. KANDYTOWN「All bout me」 / BLACK FILE exclusive MV “NEIGHBORHOOD”