【SONG of the EARTH 311 FUKUSHIMA 2020 レポート】10年目の福島へ、未来につなぐための1日。
月命日の11日には、必ず福島に訪れ、キャンドルを灯し、祈りを捧げていたCANDLE JUNEさん。3月11日には、2017年からSONG of the EARTHを開催。今年も、多くのミュージシャンもそこに集る予定だった。けれど新型コロナウイルスの感染防止のために集客のためのイベントは中止となった。
文=菊地 崇 text=Takashi Kikuchi
photo=sumi☆photo
東日本大震災から9年を迎えた3月。今年の「SONG OF THE EARTH FUKUSHIMA」は、8日にフェス、9日に復興と支援の未来を提案するシンポジウム、11日に追悼式という3日間にわたるコンテンツが予定されていた。すべてが2021年の「10年」という区切りに向かうためのステップとして位置づけられていたのだろう。けれど新型コロナウイルスの感染拡大を防止することから、集客するイベントとしての3日間は中止となった。
震災以降、月命日である11日には、必ず福島でキャンドルを灯してきたCANDLE JUNEさんにとって、3月11日を東京で過ごすという考えはなかったに違いない。ひとりでもいいから、福島のどこかでキャンドルを灯す。その思いを感じとった「仲間たち」が、3月11日に福島に集った。ここで自分に何ができるのか。軽い気持ちで参加した人間はひとりもいなかっただろう。
3月11日の福島は、強風が止むことはなかった。14時46分に黙祷した後、最初に行われたのが凧揚げ。地元の子どもたちの夢が書かれた新潟の「三条六角巻凧」。この紙に使われていたのは、会場となったJビレッジがある広野町で生産されたバナナの茎の繊維を素材にした和紙だ。〈SONG OF THE EARTH〉は、そもそも中越地震の復興を目的に新潟で立ち上がった。新潟があって、福島がある。福島の子どもたちの夢が、新潟の凧に託され空へと舞い上がっていった。
夕方になってキャンドルを灯しはじめてからも強風は止まない。むしろ強くなっている。ひとりひとりの思いが書き込まれたキャンドル。8日と11日に出演する予定だったアーティストたちがメッセージを書いたキャンドルも並べられている。
ライブの生配信も行われた。参加したのは、渡辺俊美さん、TOSHI-LOWさん、細美武士さん。3人もまた、3月11日に東京にいる自分をイメージできなかったに違いない。
生配信の冒頭、JUNEさんはこんなことを語った。
「少しでも悲しいと待ってくれる人がいたら応援したいんです。おせっかいをやきたいんです。それをずっと続けて、9年間福島に通い続けてきました。3月11日に東京では普通に過ごせない仲間たちもたくさんいます。何かをしたいんです。その何かをしたいっていう思いを持った人間が、こうして集まってくれています。何かのせいにして文句を言うよりも、自分でできることで精一杯問題に向き合う大人たちがいるぞっていうことを、ちゃんと伝えたいんです。来年も3月11日はここ(福島)にいると思います。来年は、もっともっと多くの人に『仕事を休んで福島に行こうよ』『福島で目一杯楽しもうよ』って。そういう1日を必ず作るという約束を、今日ここでしたいと思います」
2020年3月11日から10年目の福島が動き出した。