ひらかれたPR
はじめましてPR BANK編集長のShintaroです。
私たちは日々事例収集をしながら、新たなアイディアを模索しています。
そうした事例をPR BANKのメンバーが少し深堀りし、今後コラムの形で少しずつご紹介できればと思います。
今回はその1発目。複数の事例から見出せる昨今のコミュニケーショントレンドについて考えをまとめてみます。
目次
---
コロナ禍で加速した「オープンソース化」
事例① 「レシピを大公開」Mr. CHEESECAKE
事例② 「20-Second Soap」アイルランドのソーシャルキャンペーン
事例③ 「撮影マニュアル大公開」テレビ東京
ひらかれたPR
---
コロナ禍で加速した「オープンソース化」
新型コロナウィルスによって社会秩序が大きく変わろうとした時。
コミュニケーション領域でいくつか注目すべき動きがありました。
その中でも私が注目したのが「オープンソース化」です。
記憶に新しいところで、台湾のデジタル担当大臣、唐鳳(オードリー・タン)氏が
東京都のコロナ対策サイトのオープンソースプログラムに自らの手で改善提案をした—
こんなエピソードが世間の注目を集めました。
「オープンソース」という言葉は元々はIT用語です。ソースコードを公開しその使用を自由に認めること。
ですが、転じて「ノウハウを提供して改変を認めること」の意としても、様々な業界で使われ始めています。
前例のない事態に晒された時、人々は——とりわけ企業はそれまで内にとどめていたノウハウを公開することで、社会全体に価値を提供しようとしました。
「先に与える」ことで、共感や支持を得る。
ここでは代表的な事例を3つご紹介します。
事例① 「レシピを大公開」Mr. CHEESECAKE
Mr. CHEESECAKEは、2018年からInstagramに載せてチーズケーキを販売。数分で売り切れてしまう為「幻のチーズケーキ」とも言われている。
そんな有名店の公式ブログで4月に投稿されたのがこのチーズケーキのレシピだ。
記事では“「おうち時間」が増えていませんか?” という投げかけと共に、食材や調理法が丁寧に綴られている。
これを有名女性誌やTV番組が「おうち時間」企画としてすぐさま報道。バナナケーキ疲れした視聴者に幸福な時間をもたらしたことは想像に難くない。
事例② 「20-Second Soap」アイルランドのソーシャルキャンペーン
アイルランドのPR会社が新型コロナウィルス感染拡大防止の為に行ったキャンペーン。
「ちょうど20秒で洗いきれるサイズの石鹸を作る方法」を公開し、入念な手洗いを促した。
材料は普段使っている石鹸とナイフのみ。子ども達が夢中になって手を洗う姿が目に浮かびますよね。
政府やメーカーが「手を洗おう」と大規模な啓発キャンペーンを仕掛けるよりも、こうした遊び心をくすぐるアイディアこそが人々を動かすのではないでしょうか。
事例③ 「撮影マニュアル大公開」テレビ東京
外出自粛要請の影響はテレビ番組にも及びました。4月・5月と日を追うごとに収録が難しい状況となり、各局ともロケは必要最小限に。ロケを中心とするバラエティ番組は苦境に立たされましたが、そんな中ナナメ上からアプローチしてきたのがテレビ東京。
人気番組「家、ついて行ってイイですか?」は、ロケができない状況を受けて番組の「撮影マニュアル」を公開。外観撮影のコツや動きのある画の撮り方などを細かく書き記したマニュアルを番組HPに掲載しました。
ノウハウ流出しちゃうんじゃ…と心配になりますが、実はこれ視聴者投稿映像を募集する為の仕掛け。番組Pが今の若い世代はネイティブに映像を撮影&編集できる点に着目し、家で過ごす時間を楽しく使ってもらおう、と発案したのがきっかけ。天才か。
番組を見るだけでなく「つくる」という体験によって、また番組の楽しみ方も変わってくるのではないでしょうか?そんなところまで設計されているのでは?と深読みしてしまいました。
ひらかれたPR
そう遠くない未来に新型コロナウィルスが終息した時、何が残って何が残らないか?
私はこう考えた際、この「オープンソース化」の流れは残るのは?と考えています。
オープンソースは以下の3つの価値をもたらします。
①体験を通して顧客とのエンゲージメントが強化される
例)自分でチーズケーキをつくってはみたけど、やっぱり本家のものが食べたい!
例)「家、ついて行ってイイですか?」作り手目線で見ると良くできてるな~
②コストを抑えることができる
例)石鹸を全家庭に配布 → 楽しい手洗い方法を公開
例)マスクを全家庭に配布 → マスクの作り方を全家庭に周知
③イノベーション
例)あの視聴者の動画反響良かったな、番組に取り入れてみよう!
例)みんなこんなお茶とチーズケーキ食べてるのか、セットで販売してみよう
何より、懐の深い企業って好感をもてますよね。
実際のコミュニケーションに落とし込むのであれば、
① 人々が興味を持つようなアセットを自社が持っていればそれを活用
② 無ければ「事例②」のように目標とする行動から、その「動機」を導き出すという
といった手順で「オープンソース化」を実践できるかもしれません。
個人的にはマーケティング・コミュニケーション、Public Relationsもどんどんオープンソース化が進めばよいと思っています。ひらかれたノウハウがイノベーションを生むことで社会に潜む様々な課題を、変化の速さに負けずに解決できるのでは?と思います。
こうした「ひらかれたPR」の為に、しこしこと5年ほどストックし続けた事例がこちらに格納されています。今後はフレームワークなども積極的に公開していく所存ですので、宜しければチェックしてみてください。