福島原発事故から9年 (6) 「原発事故裁判」
「 国・東電は、福島第一原発事故による放射能被害を認め、事故を起こした責任を明確にし、誠意ある補償を行なえ! 」
東電福島第一原発事故に関しては、東電幹部の責任を問う刑事告訴、被害の賠償を求める裁判、国の避難基準の不当性を問う裁判など、全国で多くの裁判が闘われています。
【東京電力刑事訴訟】 ―原発事故の罪を問う―
レベル7の甚大な事故でありながら、加害者東電には誰一人責任を負うものがいません。2012年6月、東京電力福島第一原子力発電所の事故により被害を受けた住民1万4716人は、原発事故を起こし被害を拡大した責任者たちの刑事裁判を求めて、福島地方検察庁へ告訴しました。福島地検は2度不起訴としましたが、2015年7月検察審査会は2度目の起訴を議決し、ついに被疑者、勝俣恒久、武黒一郎、武藤栄の3人が「強制起訴」となり、刑事裁判がスタートしました。福島第一原発事故の責任を問う業務上過失致死傷事件は、2017年6月30日の初公判から異例のハイペースで審理が行われました。しかし、2019年9月19日、全員無罪判決!が出され、「この不当判決の破棄、全員有罪禁固刑を求め控訴し、現在は東京高裁に舞台を移して闘いが続いています。福島地裁では東電の過失責任を示すたくさんの事実が立証されました。まず、原発事故の象徴ともいえる双葉病院等で多くの方が死に追いやられたこと、また原発事故による震災関連死について関係者や遺族からの証言がなされ、「事故の責任を明らかにして処罰してほしいと当然でまっとうな意見が述べられました。
そして、事故直後から東電は「津波は想定外であり、自分たちも被害者だ」と説明してきましたが、実は2008年には最大15mの巨大津波が福島第一原発に押し寄せるという解析結果を得ていたこと、その対策を取るために担当社員たちが奔走したことが明らかになりました。対策費用が莫大になるとわかり、被告である元幹部らはその対策案を握りつぶしてしまったのです。一方、日本電原東海第二原発では、東電土木グループからの示唆により、津波の想定を引き上げ対策工事をしたことによって、ギリギリのところで大惨事を免れました。東電が安全より経営を優先させた結果の事故だったと言えます。経営陣の責任は重大です。
この無罪判決は原発の運転に高度の安全性は必要ないと言っているのと同じことです。何としても逆転勝訴を得なければなりません。
全国の【原発事故被災者賠償裁判】― 多様な被害の補償を求める―
弁護士会は3・11事故後、震災支援法律相談活動を行いました。被災者(避難者・滞在者)が法律相談をする中で、ADR-裁判外紛争解決手続-申し立てでは十分な賠償が受けられない損害(特に慰謝料)について、2013年3月から各地で次々と集団訴訟が提起されてきました。全国の原告は12,000人を超えています。
提訴から約4年、2017年3月の前橋地裁を皮切りに、今年3月10日札幌地裁で15件目の判決が下りました。いずれの判決も東電の責任を認定。国を相手取った11件の内、国に賠償命令を下したのは札幌地裁で7件目になります。責任を認めても、どの判決も賠償額が低く、避難元や避難時期の違いなどで賠償の差がある等問題が多く、控訴して、裁判は継続しています。
今年3月12日には、初めての控訴審判決が仙台高裁でありました。福島地裁いわき支部の1審は、「ふるさと喪失」の慰謝料を避難に伴う他の慰謝料と合算していましたが、仙台高裁では「ふるさと喪失」を独立して認めました。
関西では京都・兵庫・関西の3つの賠償裁判が取り組まれています。京都訴訟は、1審で賠償金額・対象に問題があったものの国・東電の責任が認められ勝訴、現在大阪高裁で控訴審が進んでいます。3つの訴訟は、協力し合いながら取り組まれています。関西訴訟は、常に大阪地裁大法廷を満席にしながら、アピール行動や法廷後の熱気ある報告集会などを基本に学習会や交流会など、原告と支援者の積極的な活動が展開されています。
子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会は、これからも関西訴訟の勝利のために連帯しともにたたかっていきます。
避難指示基準を問う裁判
公衆の被ばく基準「1mSv/年」
を守れ!
事故後、政府の決めた避難指示または避難勧奨の基準20mSv/年は、放射線管理区域(5mSv/年以下)より高く、住民の健康を守れ守れるものではありません。避難の放射線量基準そのものを問題にしている裁判があります。
【子ども脱被ばく裁判】は、「子どもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利が保障されていることの確認」(子ども人権裁判)をそれぞれが居住する自治体(福島市、川俣町、伊達市、田村市、郡山市、いわき市、会津若松市)に求めるとともに、事故後、県外に避難した人たちとも力を合わせて、国と福島県に対し、「原発事故後、子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り、無用な被ばくをさせた責任」(親子裁判)を追及するために、2014年8月29日福島地方裁判所に提訴した裁判です。
【南相馬・避難20ミリ基準撤回訴訟】は、南相馬の避難勧奨の解除(2014年12月28日)にあたって、政府から一方的に基準を押し付けられた住民が、基準の撤回を求めて2015年4月に提訴した裁判です。避難指示の解除には住民からたくさんの疑問や反対の声があがり、政府は、「理解を求めるために努力する」「説明をつくす」等としながらも、これらの声を意思決定に反映することはありませんでした。「一定期間」(特定避難勧奨地点の場合は3ヶ月)後、賠償も打ち切られてしまうため、避難の継続を希望する住民は、経済的な困難に直面するという現状があります。
避難指示が解除されても、高線量の地域に戻るのは高齢者の一部に過ぎません。しかし、原発推進派は緊急時の基準である20mSv/年を国際基準にすることを目論んでいます。
「子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会」はこの二つの裁判を支援して、年20mSv基準を撤回させるまでともに闘います。