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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロシア帝国の道5-ボリス・ゴドゥノフ戴冠

2020.06.03 11:36

ロシアでは1598年1月、フョードル1世が子供なく崩御し、帝位は皇妃イリーナ移った、もちろん黙っていないのは兄の摂政ボリス・ゴドゥノフである。彼はこのために89年にロシア正教のモスクワ総主教座を設置し、自分の息のかかった主教を置いたのである。

しかしボリスはタタールといわれ、帝位を受ける血筋ではない。貴族の中にはロマノフ家はじめ反対意見が多かった。そこでイリーナが俗世を捨て修道院に入ると、共に修道院に引きこもった。すると民衆がそこに押しかけ、帝位に就くよう嘆願した。恐らくは主教の仕掛けと考えられる。

同年2月17日、主教の手によって全国会議が開催された。これは600人ほどの全国の大規模会議だったようだ。ここで総主教は大貴族に有無をいわさず、ボリスの皇帝選出を決定した。翌日市民らと共に、総主教は修道院に向かい、ボリスは帝位を受けたが、また修道院に戻ってしまった。

ボリスは大貴族の反対が強いのを危惧していた。5月、かねてより敵対してきたクリミアでモスクワ襲撃の噂があり、ボリスはこの鎮圧目的に、数万の軍勢で遠征を行い、戦わず屈服させた。ボリスはモスクワに凱旋したが、さらに貴族の懐柔に時間をかけ、9月3日ようやく皇帝を戴冠した。

下はオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」より戴冠