複合すること
横浜伊勢佐木町の商店街のシンボル的な歴史建築物「横浜松坂屋」が創業144年、建物は築87年をもっていよいよ閉店します。(2008.10.26)
閉店直前の今でこそ閉店セールとオールドファンで大盛況ですが、普段の閑散とした状況や耐震的にも厳しそうな感じをよく知っているので、25期連続赤字だったということを聞くとよくぞ今まで持ったものだとも思えます。
建替え後の内容はまだはっきり決まってないようですが、どうやら低層部に商業施設、高層部に集合住宅(あるいは宿泊施設)という複合施設となるそうです。こういった形式の複合施設は空間利用的に最も効率的な再開発手法なのでしょう、全国各地で定番化している模様でどこにいっても同じような複合ビルがあります。おそらくこの複合施設も他と同じような施設やテナントが同じようなバランスで効率的にうまく配分されるに違いありません。
商店街の他の商店や事務所、古い映画館もどんどん建替えが進んでいて、チェーン型の店舗やビジネスホテル、マンションへとどんどん生まれ変わっていますが空き店舗もかなり多いようです。他の古い商店街と同様に、みなとみらいや郊外の巨大ショッピングモールへと完全に集客を奪われていて商店街としての長かった寿命もいよいよなのかも知れません。
商店街には例えば本屋には本屋らしい、デパートにはデパートらしい、ホテルにはホテルらしい外観やスケールがあったはずですが、複合化・集積化によって施設がどんどん巨大化してしまって、そういった多様な建物が立ち並ぶ風景は奪われてしまいました。商店街自体が一つの敷地一つの建物のインテリアに丸ごと飲み込まれてしまって、その中にいるとなんだかフィクションの内側にいるようでどうにも薄気味悪くて仕方ありません。
そんなことを考えていると現代の住宅における住宅を小さな個室へと分節、解体していこうとする試みは、こういう複合化、集積化へのアンチテーゼのようにも何だか思えてきました。
(水口裕之)