射場天体観測所(11)
2026.05.19 11:00
金星と土星の掩蔽
1933年(昭和8)12月20日、月齢3の月に、金星と土星が次々に隠されるという珍しい現象が起こりました。上は、「天界」(1933年12月号、東亜天文協会)に掲載された解説記事です。この現象の様子を、「日本アマチュア天文史」(日本アマチュア天文史編纂会編、恒星社厚生閣、P.90)から抜粋してご紹介します。
「当日は晴れて澄んだ師走の西空の夕映の残るあたり、相模大山のシルエットの上に三日月をはさんで、土星と金星のならんだ景色は実に美しい眺めであった。(中略)石井重雄が「天文月報」Vol.27(1934)No.3に要約して報告している。冒頭に石井はその美しい光景を「天の海に雲の波立ち月の船、星の林にこぎかくる見ゆ」なる万葉集の古歌をひき賞でている。」
この珍しい天文現象を、射場保昭氏が撮影しています。1920年代が、日本のアマチュア天文家による天体写真の幕開けの時代でしたから、射場氏は静岡の清水氏と並ぶ天体写真のパイオニア的存在でした。
上の2枚の写真は、金星が月の明るい部分から出現したところです。それぞれ別のカメラで撮影されています。(写真の手書きのサインは、射場氏によるものです。)
土星が月の暗部側に潜入しようとしています。微妙に露出が違うのか、上の写真には対日照がよく写っています。
土星が月の明部から出現してきたところです。
伊達英太郎氏も、当時少なかった天体写真撮影者でしたから、射場氏から貴重な資料の提供を受けたのでしょう。
(写真は伊達英太郎氏天文写真帖より)
参考文献:日本アマチュア天文史,日本アマチュア天文史編纂会,恒星社厚生閣,1987