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A recollection with you

満ちた月の夜編

2016.05.22 12:54

僕のお店に来るお客さんは、多くはない。

なんせ、ここは都会の喧騒を離れた森の中だからね。看板に気付いた方は、よく周りを見てるなあと思う。

たまに、迷って来るお客さんも、居るんだけどね。


今夜は満月らしい。


カランカラン

「いらっしゃ…」

『もう。何言ってるんですか?祐月さんが、今日はお店閉めるって』

「…そうだった。看板、ありがとね」

『いえいえ~』


このお店には天窓がある。

こんな満月の夜くらい、たまには詩歩とゆっくり過ごしても良いじゃないか。そんな風に思っていることを彼女は知らない。知られては、いけない。


「適当に片付いたら、何か作るよ」

『じゃあ、片付ける前に作ってください』

「…そういうことじゃなくてさ」

『わかってます~。』


この他愛もないやり取りがあるだけで、僕は、幸せに感じる。


『何ですか?祐月さん。あたしのこと見ててもダメですよ?』

「…え?」

『ち・ゃ・ん・と!片付けしてください!』

「は、はい。します」


コトコト


「ところで、どうしようか」

『アイス食べながらお月さま見たいなぁ』

「ははは、お姫様じゃないか」

『良いじゃないですか、たまにはー』

「フフフ。じゃあ、君にはこれをあげよう」

『…?』

「カフェ特製、月の夜アイス」

『…相変わらず、クサいですよね』

「…良いだろ。」

『ふふふ』


美味しいから良いって、君が言うから、きっと今夜も幸せな夜だ。