文庫本を読みたくなるとき
2016.05.23 12:21
昔ながらの喫茶店。
ホットサンドを頼んだら、サンドイッチ用のパンをトースターで焼いてくれました。
中身の卵サラダも、ゆで卵をほぐすところから……
奥の席には、鉄分多めのおじさまたちが集まって
山手線の車両の話で盛り上がっていました。
連結部に詳しい人が事細かに説明しては、質問攻めに合っていて。
その、楽しそうな様子を背中に感じて
初老のマスターが、わたしのサンドイッチを
丁寧に丁寧に作ってくれてるのを眺めていたら、
なんだかものすごく、幸せな気分になりました。
今どき風の見方で言ったら、ぜんぜん効率的ではないのだけどね。
でも、この待ってる間の、特に何もすることなく
ただその場でのんびりしてることが許容されてる。
この感じが、喫茶店だよなあって。
ひとつだけちょっと残念だったのは、文庫本を持っていなかったこと。笑
スマホのアプリには、読みさしの本が引っかかっているんだけど
こういう場で開くなら、やっぱり文庫本が相応しい。
薄くて少ししっとりした書籍用紙を、さらりさらりと捲りながら読んでいくのが。
そうそう。
これはね、文章を書こうというとき、
よくよく理解をしておく必要のあることなのですが。
「読む」というのは、とても個人的な行為なのです。
夜、寝る前に袖を通すパジャマの着心地が、
とても個人的な体験であるのと同じように。
話者と聞き手が共同の体験をしていく対話のコミュニケーションとは大きく違う点なので、注意していただけたらと思います。