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モータースLIVE

『なんでも屋山崎猛太』10-2

2020.06.19 02:33

第十話

「島からの追手」中編 

青色1号 仮屋想



かつて松尾は、歌唱力もあり細身の高身長イケメンだった。


しかし今、猛太の目の前にいる松尾は顔こそイケメンだが髪型がおかしい。


耳までかかっていた髪は刈り上げられ頭頂部は真っ平、頭の四隅には鋭利なカドができている。


「お前、それ!角刈りやないかい!」


猛太が松尾の髪を触る。


「痛っ!!なんやこの角刈り!角が鋭すぎて、指切ってもうた!」


猛太の指先からじんわりと血が流れる。


「気をつけてください。これは奴らにやられたんです。奴らは急にロングアイランド島に攻めてきました。

そして、島民を皆、無理やり角刈りに変えていきました。

僕は命からがら島を抜け出し、追ってから逃げながら先輩を頼ってここまできました」


「なんやて!?大変やったなぁ俺がなんとかしたる!でも奴らってなんや?」


「ありがとうございます!先輩!奴らのことについてはゆっくり説明します」


松尾も自ら立ち上がり全員で基地の中へ帰ろうとした時、どこからともなく野太い声が聞こえてきた。


「男!男!男!男!男!男!男!」


「なんやこの声は!?」


「奴らだ!しまった!こんなところまで追ってくるなんて!」


複数の野太い声は地響きとともに近づいてくる。


「男!男!男!男!男!男!男!男!」


「ねぇ!どうしよう!敵だよ!僕はこの世でピクルスと敵が大っ嫌いなんだ!」


真中田の手振りが大きくなる。


「ねぇ!あれみて!?すごーい!馬車だ!」


目を大きく開けた真中田の指す方向から馬車に乗った角刈りの集団が勢いよく向かってきた。


「あれはただの馬車やない!カボチャや!カボチャの馬車や!!」


「男!男!男!男!男!おとこーーーー!!」


勢いよくカボチャの馬車たちは猛太達の前に止まる。


そして1番先頭のカボチャの馬車のカボチャの部分から恰幅のいい角刈りの男がゆっくりと出てきて言い放った。


「おとこーーーー!!!ロングアイランド島からの逃走!反逆の罪で松尾侑治郎!貴様を処刑しに来た!!」


「なんやて!絶対にそんなことはさせへんで!だいたいお前ら誰なんや!?」


「俺たちはカリスマ男集団、男デラックス!

そして俺が最上級でスペシャルなデラックス男!

丼福太一(どんぷくたいち)様だ!!」


「あかん全然何言ってるかわからへん!」


「さぁ!そこのじじぃ!松尾をこっちによこしな!

そいつはいまから頭だけじゃなく!身体中のありとあらゆる場所を角刈りにして、角しかない角刈り人間にするのさ!!」


「それもようわからんけど!絶対に渡さへんで!帰れ!!」


「そうだよ!そんなジャパニーズ角刈りなんてダサイ髪型!

考えただけでヘドがでちゃう!僕がこの世で角刈りとピクルスが大っ嫌いなんだよ!」

「お前ピクルス以外の嫌いものすぐ変わりすぎやで!」


猛太と真中田のやりとりを聞いた丼福は角を整えながらこう言い放つ。


「面白い!だったらお前らと俺様とで勝負だ!この俺様に勝つことができれば松尾はくれてやる!」


「よっしゃ!絶対に勝ったる!大喜利なら絶対に負けへん!!」


このフルスイング帝国では大喜利が強いものだけが生き残る大喜利至上主義国である。


猛太は大喜利には絶対の自信を持っていた。


「誰が大喜利なんかするか!俺様との勝負はこれだよ!モノマネだ!!」


すっかり角が整えきった丼福が言う。


「なんやて!?モノマネなんかあかん、俺のレパートリーにはまったくないで、どないしよう」


猛太の額から冷や汗が出始めるが丼福は有無を言わさず喋りだす。


「さっそく俺様から行かせてもらうぜ!オラ!この角刈りをみよ!必殺!大江裕(おおえゆたか)!!!」


「大江裕?誰やっけ?それ?」


猛太はキョトンとしている。


「ほら!あのさんまのスーパーからくりTVで人気なった北島三郎に弟子入りした、高校生の子!覚えてません?」


松尾が解説をしてくれた。


「あーハイハイ!思い出したわ!んー確かに似てるっていうか、髪型だけやないか!!」


猛太の強烈なツッコミがはいる。


「なに!?俺様のモノマネが理解されない!?くそーこうなったら!これだ!おとこーーーー!!」


そういうと丼福の髪が眩い光を放ち、黄金に輝き出した。


「スーパー角刈りモード!!これでお前たちは終わりだ!!!」


「なんや!金髪の角刈りなんて見たことあらへん!ど、どうなるんや!!」


丼福の周りの風が砂埃をまとい吹きあれる。


「いくぜ!!最終奥義モノマネ!たわしー!!」


場は静寂に包まれた。ピンと張り詰めた空気。


「いやだから髪型だけやないか!!!」


猛太がすかさずツッコミを入れ、その空気を一瞬にして打ち破る。



続く