『なんでも屋山崎猛太』10-3
第十話
「島からの追手」後編
青色1号 仮屋想
するとしばらく黙っていた真中田の口が開いた。
「トイストーリーに出てくる恐竜。
ウッディ!大変だ!アンディが帰ってきたーー!!」
それは見事なモノマネだった。
動き、声、セリフ、あるある、全てを兼ね備え、それを一瞬で伝える。そこにいる全ての人が感心した。
「うっうわーーーー!!」
丼福のからだが少しづつ消えてく。
「まさか、この俺様が負けただと!!くそー!お前たち一体何者だ!!?」
「ぼくはただのアメリカ人!そしてこの人は!」
「わいはフルスイング帝国の王、山崎猛太や!!」
猛太が威勢のいい声で叫ぶ。
「なに!?お前があのフルスイング帝国の王だったのか!
てことはここが損マサハルの父がつくったと言われている。
フルスイング帝国だったのか!」
丼福の身体は半分消えている。
「なに!?お前損マサハルの事知ってるんか!?
教えてくれ!今損マサハルはどこにいるんや!?」
猛太が慌てて聞き返す。
「フハハ!最後に教えてやろう!俺様は損マサハルの命令により、ロングアイランド島を侵略したのさ。あの薬を大量につくるために!でもここまでだな!」
「なんやて!?薬ってなんや!?」
「フハハ俺様も詳しくはわからない!ただ損マサハルの居場所はわかるぞ!それはな、、」
損マサハルの居場所言いかけたところで
丼福の体は完全に消え、いつのまにかたくさんいたあったカボチャの馬車軍団も消えていた。
「くそーー!損マサハルはどこにおるんや!
あの薬ってなんや!?」
すると松尾が小さな瓶を取り出した。
「先輩、あの薬ってのはきっとこの事だと思います」
「これは、、バイアグラやないか!!!!」
猛太の今日1番の声が出た。
松尾が続けて喋りだす。
「ぼくもよくわからないのですが、島ではこれが大量に出回っています。
しかし、この薬を飲むと副作用もあるとか、ネットではお腹が痛くなるとか、身長が縮むとか、あとは飼ってた犬や猫が人間になるなんていう変な事も書かれてます。
とにかく飲まない方がいいかも」
「なんやそれ?怖いバイアグラやなぁ」
「そのーバイアグラっていうやつ?似たようなもの確かレッド軍曹もたくさん集めていたような気が!」
真中田はクビをかしげながら呟く。
「なんやて?この薬と損マサハルとレッド軍曹、何か関係がありそうやな!とにかく損マサハルを探してみなあかんな」
「でもどうやって探すのさ!そんなの無理に決まってるだろ!?絶対無理だよー!無理だ!無理無理無理!」
真中田はいろいろな声色の無理を言い続ける。
「なんで急にそんなネガティブなんねん!せっかく今日のお前はカッコよかったんになぁ。まさかモノマネができるとは知らんかったわ!助かったわ!」
猛太は真中田の背中を叩く。
「ホントに!?それはサイコーだ!
昔おじいちゃんにお前なら似てそうだなって言われて始めたんだ。
このモノマネがあるのはおじいちゃんのおかげなんだ!」
「おじいちゃんって、あの菊池組の組長か?まだ生きてんのかいな!」
真中田はかつて歌舞伎町の取り締まっていたヤクザの組長の孫である。
「組自体はもうなくなってるんだけどおじいちゃんはまだ生きてるよ!
最近は会ってないけど、おじいちゃんはレッド軍曹ともなかよかしだったからね。
僕がフルスイング帝国に入ったのもおじいちゃんのおかげさ!」
「そうか、それならこのフルスイング帝国のことも詳しいかもしれへんな!
よし!組長のところに話を聞きに行こう!」
「オッケー!そうと決まれば!ミスター松尾も来るかい!?」
「いや、僕はまずこの髪型をどうにかしたいので、やめときます!」
松尾は恥ずかしそうに髪型をぐしゃぐしゃにするそぶりをみせる。
「ええやんか!似合ってるで!もしかしたら菊池組にスカウトされたりしてな!」
「絶対いやですよー!」
ここはフルスイング帝国、眩いネオンの光はまったくないが、夜空にかがやく星が三人の帰る道を少し照らしてくれているようだった。
続く