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紺碧の採掘師

第6章 02

2020.06.13 05:49

その頃、イェソドでは

浮島にてケテル石を採掘中。護は白石斧、カルロスは黒石剣を持って妖精と共に走り回っている。

カルロス「今度こそ当ててやる…アレだ、あの柱!」と言いつつダダダと柱の方へ走って行く

護「今度はあっちかーい」と言いつつ妖精と共にカルロスを追う。

カルロス、とある柱の前に来ると「コレだコイツは売れる、間違いない!どうだ妖精!」

妖精「…(・・)…」

護「微妙な顔してる。って事は」

カルロス「切り方次第って事だな。護!」

護「ほいさ!」カンカンと活かし切り。

カルロス「…なんか微妙な光り方だな」

護「こういう時は思い切って…!」ガンと切り込みを入れる

カルロス「あああ石が死んだ!」

護「待て!まだ戦いは終わっちゃいない!」

カルロス「何の戦いだ」

護「ここをガンと切ったら活きるんじゃあぁぁぁ!」と叫びつつガンと斧を入れて石柱を切り倒す。

カルロス「お」と驚いて「活きた。」

護「フッ…流石は俺!」

カルロスそれを無視して「次はアレだ!」と言うとダダッと走って行く

護「ちょっと待ってー!」と言いつつ切った鉱石柱を担いで走って行く

そこへ上から「おーい」とターさんが木箱を吊り下げつつ飛んで来て「そろそろ時間だよー」

カルロス「あと一本!これはどうだ妖精!」

すると妖精ちょっとニコニコ(^^)

カルロス「お!ちょっと笑った!」

護、担いでいた石をターさんの木箱に入れると「それならアンタでも行ける!」

カルロス「私か!」と言うと黒石剣を構えるとカンカンと活かし切りをする。石が輝く

護「上手い!」

カルロス「後は頼んだ」

護「よっしゃあ!」と言うと白石斧でガンと鉱石柱を切る。「上手く切れた、流石は俺!」

カルロス「何がだ!」護は石を担いで木箱に入れる。

ターさん、そんな二人を見つつ(しっかしまぁ二人とも元気になっちゃって…。)と思いながら「じゃあ木箱に乗って。急がないと。」

カルロスと護、木箱に乗る。ターさんは木箱を吊り下げて飛び始める。

ターさん「もー。今日はこれからカルナギさんの採掘船に行って、夕方から街に行くのに。君達が遊んでるから昼飯食べるヒマがなくなったじゃないかー。」

護、カルロスを指差して「この人が探知しまくるから」

カルロス、護を指差して「コイツが切りまくるから」

ターさん「君達そこで食っちゃえ。俺は採掘船に着いたら食べる」

護「ほい」と言い巾着からサンドイッチと水筒を一本取り出すとカルロスに渡す。護とカルロスは昼飯を食べ始める。

ターさん、そんな二人を見つつ「うぅ。お腹がすいたぁ!」と言うと「こんな時は飛べない奴が羨ましい。」

護「スマンよターさん」

ターさん「ねぇねぇ君達、そのうち船、買おうよ。小型船」

護「え。」

ターさん「そしたら俺もラクだしさ。君達も自由に移動できるじゃん。」

カルロス&護「…。」

護「船…。」

カルロス「…確かに船は必須だな…。しかし」

護「人工種が個人船を持っていいのかな」

カルロス「ここは有翼種の世界だ。」

ターさん「でも船って高いけどね。小型船でも相当なお値段。」

護「船かぁ…。でもさ、俺は船よりも…、自分の家、持ちたいなぁ。」

カルロス「ほぉー。」と言い「人工種で持ち家ってのは、かなり高いハードルだが。」

護「ターさんの家の近くに自分の家、建てたい。」

カルロス「すると向こうにはもう戻らないのか?」

護「アンタは戻るのか?」

カルロス「…ワカラン。」

ターさん「まぁ、船にしても家にしても、資金が必要なんだけど。」

護「そうなんだよ。」と言いため息ついて「向こうに俺の貯金あるんだけどなぁ。今まで一生懸命働いて貯めた金がぁ…。向こうに戻る気はないけど貯金を手放すのはチト惜しい…。」

カルロス「確かにな。」

護「アンタ、相当な貯金ありそうだな。」

カルロス「何の事かな」

護「だってアンタ、天下のオブシディアンの採掘監督だったやん。」

カルロス「監督は1年半だが基本的に黒船勤続13年。」

護「おおー」

カルロス「だけど仮に貯金を持ってきたとしても、人間側の金はここでは使えないからなぁ。」

護「何とか有翼種側の金と交換できませんかね。」

ターさん「難しいねぇ」

カルロス「交流無いしな。仕方が無いのでここで地道に稼ごう。」

護、遠方の船影を指差し「見えて来た。アレだよ、採掘船ブルートパーズ。」

カルロス、ちと驚いて「あれが、有翼種の採掘船?」

護「俺達の船とは全然違うよな」

ターさんは採掘船の有翼種の指示通りに木箱を甲板に降ろす。

護「こんにちは!お久しぶりです!」

トゥインタ「やぁ人工種。」と言い、カルロスを見て「一人増えた奴って、アンタか」

ターさん「そう。彼が護君を探してイェソドまで来ちゃった人工種。」

そこへカルナギが来て「ター!お前また困ったモンを連れて来ちまって!」

ターさん「俺が連れてきた訳じゃなーい!」

カルロス「私が自らここに来ました。」と言うと「…初めまして。人工種のカルロスと申します。」

カルナギ「ここはそんなに簡単に来れる場所じゃないんだけどなぁ。なぜ来たんだ?」

カルロス「…どうしても行きたかったので」

カルナギ「なんで」

カルロス「…護を探していた時に、ここを探知しまして。…行けば二度と戻れないと分かっていながら飛び出してきました。」

カルナギ「…。」

カルロス「宜しくお願いします!」と頭を下げる。

するとカルナギ「俺はハッキリ言わない奴は嫌いなんだよ。」と言い「お前、護の仲間の採掘師らしいが、仕事が嫌で逃げて来たのかそれとも、人間が嫌で逃げて来たのか、どっちなんだ。」

カルロス、「…。それは」と言い暫し黙ると、意を決したようにカルナギを見て「どっちもです。」

カルナギ「ほぉ」

カルロス「あそこで、延々といつまでもイェソド鉱石ばかり探知するのも、人間の言いなりになるのも、嫌だと思いました。」

カルナギ「正直、迷惑なんだよなぁ。嫌だからって、こっちに逃げて来られても」

カルロス「死ぬ気で逃げないとここには辿り着けません。それだけの気概のある奴が一体何人いるのか。」と吐き捨てるように言い「コイツはたまたま流されてここに辿り着いたらしいけれども」と護を指差す

護「仕方ないやん!」

カルナギ「ふーん。」と言うと「まぁ分かった。じゃあ…。あ、待て」と言い、木箱の中のケテル石を見て「これ、お前らが採ったのか。」

護「うん。この人と二人で採った。」とカルロスを指差す。

カルナギ「前よりちょっとマシになった。」と言い、一同に「じゃあ皆、出発だ!」

動き出す採掘船。

暫く飛ぶと雲海の中に突っ込む。辺りは真っ白。

カルナギ、カルロスに「探知の奴は、ドゥリーの仕事を良く見とけ。」

ドゥリー、黒石剣を担いで「ドゥリーでーす。よろしくー!」

護、カルナギに「俺、手伝ってもいい?」

カルナギ「モノによる。ちょい待て」

ドゥリー、探知をかけて「あった。この辺り」と黒石剣で、雲海の中のとある方向を指し示すと「これは一本採りだー。そこそこの奴だから、護も助っ人出来る。」

カルナギ「じゃあ護は根元を切る。切り所は任せる」

護、喜々として「了解です!」

ドゥリー、やや船の前方を飛びつつ「行きます!」と言い、黒石剣を斜めに振り下ろす。すると物凄いエネルギーが放散され雲海が切り拓かれる。前方に巨大なケテル鉱石柱が現れる。

カルロス「!」ビックリ。

護、カルロスに「行ってきまーす」と言うと、タタッと走って船から落ちる。

カルロス思わず「はぅ?!」と目を更に丸くする。

その間に有翼種達は活かし切りをして鉱石柱を少し切り刻み、石を輝かせる。

カルナギ「あとは怪力野郎次第だ!」と言うと、ピィーと笛を吹く。

護は地面に着地すると、狙いを定めて鉱石柱にガンッと斧の刃を入れる。その瞬間、鉱石柱が眩く輝く。

カルナギ達は柱を支えつつ倒すように一本まるごと船に載せる。

カルロス、唖然。

そこへドゥリーがやってきて、カルロスに「こんな感じ。」

カルロス「…ほー…。」

さらにターさんに抱えられた護が船の上に戻って来る。

ドゥリー「人工種は落ちると拾い上げなきゃならないのが面倒。」

ターさん「そこがネックなんだよねぇ。」

ドゥリー「ただ護レベルの怪力は、有翼種では珍しい。」

ターさん「この柱を一気に切れるんだもんな。」

ドゥリー、カルロスに「貴方はまず、その黒石剣で雲海切りできるようになる事から。」

カルロス、自分の黒石剣を見て「…どうやって」

ドゥリー「石を切るのと同じ要領で、切る事を意識する。…で、探知しながら正確な位置を切れるようになればまぁ合格。さらに他の人と同調探知できるようになると」

カルロス「同調探知?」

ドゥリー「同じ対象物を一緒に探す。何人かの探知エネルギーを一点に集めて、皆で一気に雲海切りする。」

カルロス「…。」目をぱちくり

ドゥリー「それが出来るとアチコチの採掘船からお呼びがかかる。」

ターさん「まぁゆっくり行こう。」

そこへカルナギの「そろそろいいかな。次行くぞー!」という声

ドゥリー、カルナギに「うん」

ターさん「じゃあカルロスさんは、落ちる練習しよう!」

護、カルロスの腕を掴むと「こっちおいで」

カルロス「え。ちょっ…、おい!」護に引っ張られて船の縁へ

護「ここから落ちる!」

カルロス「って、待て押すなバカ!」と必死に縁にしがみつく

護「覚悟はいいかな!」

カルロス「待て!…船から落ちるのは慣れているが、…この高さは流石に」

護「一緒に落ちてあげようか!」

カルロス「この高さは!初めて…っ」その瞬間、護がガッとカルロスを抱き抱えるようにして船から飛び降りる。

カルロス「ちょっ…アホーーーーーー!」絶叫

ターさんは落ちる二人を追いかけて、ゆっくり落下しながら「やれやれ」とニコニコ

地面の近くで浮き石を使って減速した護は、カルロスと共にふわりと着地。カルロス思わずその場にぺたんと正座してしまう。

カルロス「…もぅ、このバカ力め!ビックリしただろう!」

護「上に上がるから、立って」

カルロスが立ち上がると、護はカルロスを背後から抱き抱える。

その護をさらに背後から抱いて飛び上がるターさん。

その様子を見ているドゥリーたち、笑いつつ「面白い光景だ!」

カルロス「……。」メチャ不機嫌そうな顔。甲板に戻ると、護に「今度は一人で落ちる!」

護「黒石剣を構えなきゃダメだよー」

カルロス「はぁ?」

護「空中で態勢を整えてさぁ、雲海切りできるようにならないと!」

ヤケッパチなカルロス「とりあえず落ちる!」と言って船からジャンプする。

落下するカルロスに、ターさんが飛びながら「態勢、態勢!」

カルロス「…!!」殆ど涙目


その後、護はカルナギ達の採掘の手伝いを始めるが、

カルロスは何度も落ちる練習を繰り返す。黒石剣を持って船から落ちてはターさんに引き揚げてもらって…。


そして夕方。

船の甲板には何本もの鉱石柱が積んである。

その鉱石柱の束にワイヤーを括りつけて船に固定している護やカルナギ達。

カルロスは船の隅の方で雲海切りの練習をしている。

そこへ護がやって来て「どんな感じ?」

カルロス「少し光るようになった」と黒石剣を振ってみせる。すると剣が淡く光る。

護「おー。」

カルロス「何となくコツが分かって来た。」

そこへカルナギの「よし、じゃあ今日の作業は終了!街に戻るぞ」という声がする。

ターさん、護たちに「予定通りこのまま船に乗って街まで行くよ。」

カルロス「…街。私は許可されるだろうか。」

ターさん「心配ないって。」


暫し後。イェソド山の麓に近づくブルートパーズ

トゥインタ、街を指差し「あれがイェソド山の麓の街、ケセドだ。」

カルロス、山を見ながら(…凄いな…。イェソドエネルギーが溢れてる。特に山の上の方が)

そこへドゥリーが「山の頂上、スゴイだろ。」

カルロス「はい。」

ドゥリー「源泉があるんだ。一般人立ち入り禁止だから行った事ないけど。」

カルロス「源泉…。」

ターさん、時計を見て「そろそろ約束の時間だな…。」

船が街に近づくと、街の方から数人の有翼種が飛んできて、船に近づく。

カルナギ「お迎えが来たようだ。」

ターさん「行こう、護君、カルロスさん。」

カルロスと護は木箱に入る。

護「今日はありがとうございました!」

カルロス「お世話になりました。」

カルナギ「またな人工種。頑張れよ!」

護「はい!」

木箱を吊り下げて飛ぶターさん。迎えの有翼種たちの方へ飛んでいく。すると有翼種の一人が「止まれ!」と言いカルロスを見て「その金髪の方だな、新しく来た奴は」

ターさん「はい」

有翼種「よし、じゃあ行こう」と言い木箱を囲むようにして街の中へ降下し、とある建物の屋上に着陸すると「降りて。」

護とカルロス、木箱から降りる。そしてターさんを残して有翼種と共に屋上のドアから建物の中へ。

中に入ると螺旋階段、護たちは階段を降りるが有翼種たちは螺旋階段の中の吹き抜け部分を飛んで進む。暫し行った所で階段脇の廊下へ。廊下を少し進むと、数人の有翼種がいる部屋に通される。

護&カルロス「失礼します」と言い中に入ると、あの初老の有翼種が進み出て来る。

初老の有翼種、呆れたように「また来たのか。」

護「お久しぶりです、ガーリックさん」

ガーリック「人工種は歓迎しないと言った筈だがなぁ。あまり来られると」

カルロス「申し訳ありません。どうしてもイェソドに来たくて、来てしまいました。」

ガーリック「どうやってここへ」

カルロス「私は探知人工種ですので、探知しながら歩いてきました。」

ガーリック「歩いて?! 本当に?!」と驚いて「どうやって死然雲海を」

カルロス「雲海で迷いましたが、ターメリックさんと彼が雲海を切り拓いて助けてくれました。」と護を指し示す。

ガーリック、暫し黙ると「イェソドを目指した動機は?」

カルロス「自由になりたかったからです。…人間の支配から」その言葉に

思わず護「えっ」と驚く

カルロス「だってそうだろう。こんなものを付けて。」とタグリングを指差す。

護「で、でも、別に全ての人間がそうだという訳では」

カルロス「まぁ人間だろうが人工種だろうが色んな奴がいる。でもとにかく私は自由になりたかった。しかし単に場所を移動しただけでは自由になったとは言えない。私は今、それを痛感しています。」と言い「どこに居ようと自分が確たる一人の個人として立たないと、自由になったとは言えない…。」

ガーリック「ほぉ…。」と言って(こりゃまた、しっかりした奴だな…。)と思いつつ「…あなた方を探して今後ここに仲間の人工種や人間が来る可能性もある訳ですが」

カルロス「その時はその時に考えるしかありません。」

ガーリック「まぁそれはそうだな。」

カルロス「ただ、個人的には、人間がここに来るのは至難の業だと思います。人工種にしても相当な覚悟が無ければ来る事は出来ない。体験から断言します。」

ガーリック「うむ。」と言い、暫し黙ってカルロスを見ると「それでは、貴方がケセドの街に出入りする事を許可する事にしましょう。」

カルロス「ありがとうございます。」

護、カルロスを見つつ(…かっこいい…。流石は黒船の採掘監督。俺もこのくらい堂々としたい…。)


暫し後。

ガーリックの部屋のドアが開いて有翼種を先頭に護とカルロスが出て来る。

有翼種、2人に「下の正面玄関にターメリックが待ってる。その階段を降りて行けばいい。」

カルロス「はい。」と言って階段に向かって廊下を歩きつつ、ちょっとため息ついて「やれやれ。許可が下りてよかった。」

護「下りると思ってたよ」と言うと「あ、ターさん」見れば階段の所にターさんがいる。

ターさん「迎えに来た。…どうだった?」

護「何も問題なかったよ。この人、凄くカッコよかった」とカルロスを指差す。

カルロス「はぁ?」

ターさん、笑って「そっか。じゃあ石屋に行ってからご飯にしよう!君達が採った石に高値が付くといいねぇ。」

護「高値ついたら美味いもの食べよう」

カルロス「貯金しろよお前…」

護「ちょっとは貯金するよ!」

カルロス「ちょっとじゃ貯まらんだろ」

護「貯まる。いつか!」

カルロス「いつかっていつだ!」

護「いつかだ!…ってターさん笑ってるし!」

カルロス「アホな会話してるからだ!」


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