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COVID-19とアフガニスタン-身近に迫る新たな危機-

2020.06.11 11:09

アフガニスタンでは今年2月下旬にイランとの国境を接する西部のヘラート州で初めてCOVID-19の感染者(イランから戻ってきたアフガン人)が見つかった後、徐々に国内に広がっていき、6月7日時点では全国34州で2万人以上の感染が公式に確認され、非常に深刻な状況です(死者は357人)。

https://reliefweb.int/report/afghanistan/afghanistan-flash-update-daily-brief-covid-19-no-51-7-june-2020


さらに懸念されることに、アフガニスタンではCOVID-19の検査のキャパシティが低く、かつCOVID-19の深刻さを理解しない人々も未だに多いため、公式に発表されているよりも多くの感染者がいるだろう、ともアフガン人の友人はいいます。実際に身近にCOVID-19のケースがあるそうです。

(検査のキャパシティや質の課題、現地の写真などについては5月21日付BBC記事に詳しくあります https://www.bbc.com/news/world-asia-52741433)



COVID-19かどうかは検査をしていないので定かではないのですが、以前アフガニスタンでお会いしたことのある政府の方が、COVID-19と思われる症状が出た後、大変残念ながら先週急に亡くなられた、という訃報がありました。


私は現地の言葉(公用語はパシュトゥー語とダリ語)を話せず、彼は英語を話さなかったので、挨拶ぐらいしか個人的には直接話せませんでした。私がかれこれ10年も前に首都カブールにいた頃、彼は気さくに会議や研修のときにお茶を運ぶのを手伝ってくれたりしました。彼の人なつこい笑顔を思い出します。


彼と一緒に仕事をしたことのあるアフガニスタンの友人は、

「彼はとてもSupportiveな人でした。仕事を進める上であるドキュメントが必要となった際、正式に要請するレターを政府より求められました。レターを準備するには時間がかかるので、彼に相談したところ、すぐに担当のオフィスのスタッフに電話で頼んでくれ、必要なドキュメントを借りることができたのです」

と、教えてくれました。親切な人柄が偲ばれます。



別の友人の70歳になるヘラート在住の親戚の方は、もともと心臓に持病があり呼吸に問題があったが、COVID-19と思われる症状でさらに呼吸が困難になり、20日間も病状が改善していないといいます。

私自身、インドの甚大な大気汚染の影響で4年前に気管支ぜんそくを患っており、状況は異なりますが、友人のおじさんの呼吸困難の苦しさを想像するとこちらまで胸が苦しくなります(余談ですがCOVID-19の影響によるロックダウンで世界で大気汚染が以前より改善しているというのは皮肉な結果です)。


また、医療従事者やヘルスワーカーの感染も確認されていて、たとえCOVID-19と疑わしき症状(発熱やせき、喉の痛みなど)があっても、病院での感染を恐れ、自宅療養・自主隔離を独自に行う人たちもいるので、実際の感染状況は計り知れません。だんだん友人の身近に(疑わしい例も含め)感染の危機が迫っており、心配しているところです(多くの友人たちはもちろんとても気を付けているのですが、たとえば日々の買い物や親戚のお葬式など、人との接触もあるようです)。


COVID-19がなくても、アフガニスタンでは40年以上にわたる紛争、度重なる自然災害(洪水や干ばつ)等により、すでに人々は様々な危機に直面していました。2018年には学校に行けない子どもは370万人(https://www.unicef.org/afghanistan/media/2471/file/afg-report-oocs2018.pdf%20.pdf)、文字の読み書きができない15歳以上の成人は1,200万人以上(うち6割が女性)も存在し、識字率は43% (女性は 29.8% のみ) にすぎないとも推定されていたのです(http://uis.unesco.org/country/AF)。


十分な教育を受けておらず基礎的な読み書きができないと、感染症や保健・衛生などの適切な情報を理解・認識することが難しいほか、教育を受けた人でさえも、COVID-19の深刻さを理解せず予防策を講じない人も多いといいます。



識字能力を「基礎的スキル(foundation skills)」(https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000217509)としつつ、それを基に人々が正確な情報を「識別」し、行動に移すよう、広い意味での教育・学習がますます重要となっています。


別の友人で教育活動に取り組むラフマットさんは、「批判的思考を身に着けるためには、質の高い教育が必要です。多くの質問や議論をあらゆる教育カリキュラムに採り入れ、生徒・学習者の思考を活性化することが重要なのです」と提言しています。


質の高い教育・学習を進めるためには、アフガニスタン国内での努力はもちろん、国際社会の支援が欠かせません。COVID-19危機下の教育対応(特に識字)をアフガン政府・パートナー団体・人々が尽力している事例もあり、今後その様子を共有できたらと思います。


2020年6月11日

小荒井理恵 


本文は個人として投稿します。

2001年よりアフガニスタンの支援、特に基礎教育、識字支援に携わる機会がありました。

僭越ですが、日本の方々にアフガニスタンの教育状況、人々、子どもたちの声を伝えたいと思い執筆した書籍をご紹介させていただきます。

「アフガニスタン復興への教育支援―子どもたちに生きる希望を」(2011年、明石書店)

Amazonなどからも購入できますので、もしよろしかったらご覧いただけたら幸いです。

▼COVID-19の啓発に取り組む人々(写真提供:教育省識字局)