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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

バロックの時代1-光と闇の画家カラヴァッジオ

2020.06.11 11:41

宗教戦争の時代でもローマの威光は衰えなかった。むしろカトリックの総本山として権威を増していたといえる。新教と旧教は各国で争っており、教皇と対等の立場に立つはずの神聖ローマ皇帝はもはや名目上の存在にすぎなかった。そして神の威光を積極的に表現する新しい芸術を欲していた。

芸術に造詣の深いデル・モンテ枢機卿は、1599年コンタレッリ礼拝堂の室内絵画を、28歳の画家に依頼した、その名はミケランジェロ・メリージ・カラヴァッジオ。彼はミラノに生まれ、ダ・ヴィンチの絵を見、ヴェネツィア派の画家のもとで修行した。ところが、役人とケンカして飛び出してしまう。

ローマでも工房を解雇されるが、その精緻すぎる写実性と人間心理の描写は、デル・モンテのサロンに評価され、枢機卿はこの画家を後援しようと考える。ところがその頃、彼はローマのブラック社会に染まっていたのである。

1600年に完成した「聖マタイの召命」と「聖マタイの殉教」はまさに新時代の絵画だった。写実性に加え、シュールともいえる光と闇が、神の聖性と人間の闇を劇的に現していたのだ。彼はこの絵画によって新しいバロックの扉を開き、時代の寵児となったが、光と闇は彼自身の中にあった。

下はコンタレッリ礼拝堂の聖マタイ連作