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紺碧の採掘師

第7章 03

2020.06.14 07:54

次の日…。

護とカルロス入りの木箱を吊り下げて飛んでいるターさん。眼下には山腹の街が点々と見える。山の上に近づくにつれて、航空貨物船や、飛んでいる有翼種の数が多くなる。

やや大きな街が見えて来る。ターさんはそこに近づきつつ「…あ、あれがコクマの街か。それにしても上の方のエネルギーが凄い…。」

カルロス「…源泉があるとか」

ターさん「そう。上には源泉と、イェソドの首都ケテルがある。…ここでこんなエネルギーって事は、山頂はどんななんだろ」

カルロス「いつか行ってみたいな。」

ターさん「だねぇ」と言いつつ街に近づいて「ええと…中央広場はどこだ。」

カルロス「真っ直ぐ」と前方を指差す

地図をみていた護「流石。よく分かるねぇ。」

カルロス「人型探知機ですから。なんかこっちを気にしてる人がいるぞ」

ターさん「あ。ほんとだ。来た」

…前方から2人の有翼種が近づいて来る。

有翼種「おはよう。ターメリックさんですね。」と言うと「…そんな木箱で来るとは…。」と困ったように言う。

ターさん「え」

有翼種、笑いをかみ殺しつつ「定期連絡船に言えば乗せてくれたのに」

ターさん「そういうのあるんですか」

有翼種「うん。遠距離とか荷物が多い時には皆、船を使うよ。」

ターさん「…いつも遠距離を、コレ吊るして飛んでるもんで…。」と木箱を見る

有翼種は笑いながら「流石、採掘師」と言うと「その木箱、どこに置こうかな…。」

すると同じく笑っていたもう一人の有翼種が「図書館の裏庭に置こう。」


大きな建物の裏庭に着地するターさんたち。

護、建物を見て「大きな図書館ですね」

有翼種「イェソドで一番大きな図書館です。コクマは学問の街ですから」と言うと「じゃあ図書館の中を通って表通りへ行きます。あ、その前に身分証明書を」

護たちは身分証明書を有翼種に見せ、古い方を渡す。

カルロス「ところで我々に会いたい方とは?一体どんな用件で」

すると有翼種「それは現地についてからお話しします。」とニコニコしながら言う。

カルロス「はぁ」

それから立派な図書館の中を通って表通りに出る。通りを歩くと『カナンの店』という看板の石茶カフェが見えて来る。有翼種はその店の前で立ち止まると「ここに、人工種に会いたいという方が居るんです。」と言ってドアを開け中に入る。パンが焼ける時のようないい匂いがする。窓際にテーブル席があり、店の棚には石茶用の道具やカップ、そして小さな袋に小分けにした様々な石茶の石が売り物として並んでいる。

壮年の男の店員が奥から出て来て「いらっしゃいま…」と言いかけて一同を見ると「おや!」と酷く驚く

有翼種「おはようございます。噂の2人を連れて来ちゃいました」と笑う

店員、驚いたまま「…まぁ…。」と呟くと「何てこった。わざわざ…大変だったんじゃ」

有翼種「いいんですよ。ちなみに、彼らにはまだ何も教えていません!」

店員「え。」と言うと護達を見て「しかしまぁ…。よくいらっしゃって…。」とカルロスと護を交互に見ると「ともかく中へ…皆、好きな所へ座って」と護達を促す。

するとカルロスが、「失礼ですが、あの、…貴方は…。」と驚きを隠せないという表情で言うと「…翼が無い」

すると店員がフ、と笑って「翼を隠すのが特技なんですよ。ねぇ?」と笑って有翼種達をみる

有翼種たち、クスクスと笑う

カルロス「そ、…そう…ですか。」と腑に落ちない顔で答える

店員「さてさて座って下さいな」と言い窓際の席を勧めるが、

そこで有翼種が店員に「我々は仕事の時間なので、この辺で失礼します。」

店員「え。そうなの?」

有翼種「はい。」と言うと護達に「では皆さん、ごゆっくり!」

店員、有翼種に「わざわざ本当にありがとう。」

有翼種たちは「またねー」と手を振って店のドアから出ていく。

護達はそれを見送り、それから窓際の席に着く。

店員「じゃあまず、皆さんのお名前を聞かせて下さいな。」

カルロス「MF SU MA1023周防カルロスです。」

護「ALF IZ ALAd454十六夜護です。」

ターさん「ターメリック・エン・セバスです。」

店員、ニコニコして「それでは今から、一番美味しい石茶を淹れてあげるから、ちょっと待っててくれ」

ターさん戸惑って「えっ、あの…いいんですか?」

店員「うん」

と、そこへ店の奥から壮年の有翼種の女性が焼きたてスコーンを乗せたトレーを持って出て来てカウンター脇のパン類が置いてある棚にトレーを置くと、ふと護達の方を見て「あら?」と少し驚く

男の店員、女性に「この子達、人工種の子だよ!さっきレシュさん達がわざわざ連れてきてくれたんだ。」

すると女性、驚いて「あらまぁ!よくイェソドへ…。」というと「スコーン食べる?焼きたての」

護「はい!」と言ってから「…あっ、お代はちゃんと払いますから」

店員「いいよ今日はサービスだ」

女性「そうよ。ちょっと待ってね」と言うと皿を出してスコーンとクリームを盛り付けると護たちのテーブルに持ってきて置きながら、「私はセフィリア。宜しく」と言いターさんに「貴方は彼らのお友達?」

ターさん「はい。」

護「俺たちを助けてくれたのが彼なんです。今、2人で彼の家にお世話になってます。」と言うと早速スコーンをパクリと一口。幸せそうな顔をする

セフィリア「お家はどこなの?」

そこへ男の店員がやってきて3人それぞれの前に石茶が入ったマグカップを置く。

ターさん「イェソドの『壁』の外です。」

すると男の店員とセフィリアが「え?」と同時に言う

セフィリア「『壁』の外って…」

ターさん「珍しいでしょう。そんなの俺だけですから」

男の店員、ふと何かに気づいて「ん?そういえば…以前、ニュースで『壁』の外に家を建てた人がいると」

ターさん「それ俺です。」

男の店員「君なのか!」

カルロス「…ターさん意外と有名人だな」

護「彼が『壁』の外に暮らしてたお蔭で、俺達、助けてもらえました。」

男の店員「そうか、なるほどそうだよねぇ…」

カルロス、石茶を飲むと「美味い…!これ、凄く美味しいです」

すると男の店員「だろ!君なら分かると思った。」

護、カルロスを指差して「この人、最近すっかり石茶にハマってしまって」

ターさん「でもこれ本当に美味しい。こんな美味しい石茶、初めて飲んだ。」

護、ちょっとお茶を飲んで「…う、うん。でも俺、スコーンの方が美味い」

すると店員が笑って「いいんだ、石茶の感じ方は人による。」

護「感じ方?」

店員「エネルギーを感じるのが石茶の醍醐味だからね!」と言いつつ自分も椅子に腰掛ける。

セフィリアはカウンターの方に戻る。

店員、護達に「いやぁしかし、本当によくここへ来たねぇ。」

護「俺はたまたま事故で川に流されて来たんですけど、この人は自力で歩いてきましたからね…。」

店員「歩いて? …2人で川に流されたって聞いたけど?」

カルロス「いえ、私は自分からここに来ました。人間に管理されるのが嫌になったもんで」

その途端、店員がアッハッハッと笑う「そうかそうか!しかし大変だったろう…。よく辿り着いたなぁ」とカルロスを見つめて「自分で探知して、ここへねぇ…。」

カルロス「…なぜ私が探知人工種だとわかるんです?」

店員「ん?まぁ勘かな」

カルロス、店員を見て「…私には、わかるんです。教えて頂けませんか、貴方の人工種ナンバーを」

ターさん&護「!」

店員、ニコニコしながら「いやぁバレちゃったかー」と言うと「私はATL KA B01神谷可南と申します。カナンと呼んでくれ」

その瞬間、カルロスが驚いた顔になると「B01…。」と呟く

護「首輪はどうしたんですか、タグリングは!」

カナン「取れちゃった。」

護「ええ?! どうやって?!」

カナン「ある日、ポロッと取れた。まぁ全然メンテしてなかったから壊れたんだろうねぇ」

護、唖然

ターさん「な、なぜイェソドへ?」

カナン「たまたま流されて来たのさ。君達と同じ。」

そこへカルロスが「あっ、あの!」と言い、「…実は私の製造師の名は、ATL SK-KA B02周防和也と」

その瞬間、カナンが「えっ!」と目を見開いて驚く

カルロス「ご存知ですか?」

カナン「…製造師?…B02が、君の?」

カルロス「はい。」

カナン「…あの子が、製造師になって、…君を作ったと…?」

カルロス「…あの子…まぁ、周防先生が、作りました。はい。」

カナン、感慨深げに「おぉ…」と言い、立ち上がるとカルロスの肩に手を置き「君はあの子の息子なのか!」

カルロス、若干きまり悪げに「…息子…、です。」

カナン、目頭を熱くして「あの子の息子がここに…」と言うと「お父さんは、元気?」

カルロス、渋い顔で「…お父さんでは…」

カナン笑って「そうか人工種は『お父さん』とは言わないか!」

カルロス渋々「はぁ。…製造師は元気ですよ。まだ現役ですし」

カナン「おお!」

そこでターさんが「あのー、つまりB01とB02で兄弟だから、カナンさんはカルロスさんの叔父さん、という事…?」

カナン笑って「うん、そういう事だ」

護、首をかしげて「…人工種の、叔父さん。いまいちピンと来ない…」

カルロスも首をかしげて「でも叔父さんがいるなんて話は今まで全く…。」と言ってカナンに「貴方がここに居る事を、周防先生は知っているんですか?」

カナン「…さぁねぇ。私がここに来たのは遥かに昔の話だしねぇ。」と言うと「知らないと思うよ。」

護「向こうに戻りたいと思った事は」

カナン「無いねぇ。ここで色んな人に助けてもらったし、妻も居るしな」とカウンターの奥で仕事をしているセフィリアを指差す

護、思わず「え、奥さんだったの?!」

セフィリア「そうよ?」にこにこ

カナン「何だと思ってたんだ」

護「いやその、有翼種と人工種が結婚なんて」

カナン「子供は出来なかったが、代わりに養子を育てた」

ターさん&護「へぇぇー…!」

カナン「好きな石茶で店も持てたし。ここでは全ては自分次第さ」

ターさん「凄い…」

護「頑張ろうカルさん!アンタも石茶を極めれば店が持てる!」

カルロス「え。…いや、そこまでは。」

カナン「君達は今、イェソドで何をしてるの?」

カルロス「採掘師です。ここに来る前から採掘師でしたので。」

カナン「ああそうか。イェソド鉱石を採ってたのか。」

カルロス「はい。」

護「今は死然雲海でターさんとケテル石を採ってます。」

カナン「二人とも飛べないから有翼種と一緒に採掘するのは大変だろう?」

護「いや、浮き石が使えるので問題ありません!」

カルロス「ただ移動が問題で。いつも木箱に乗ってターさんに運んでもらうのが」

カナン「木箱!」

カルロス「そのうち何とか小型船を買って自由に移動しつつ採掘しようと計画中です。」

カナン「うん。もうアチコチ探知して好きな所に飛んでくといい!」

ターさん「彼の探知は凄いですよ。雲海を超えてイェソドを探知する位ですから。」

カナン「じゃあそのうち雲海でダアトでも見つけちゃうかな」

カルロス&ターさん「ダアト?」

カナン、ターさんに「ダアトって知らない?」

ターさん「…ダアト…?」と考え「ああ…もしかして人工有翼種の遺跡」

カナン「それ。今もう探す人、居なくなったろ。」

護「人工有翼種?」

カナン「うん。遥か昔、人間と有翼種を掛け合わせて人工有翼種を作ったの。」

護「え」

カルロス「な、なぜ」

カナン、フッと笑って「愛の力だよ。」と言い「とある御剣って人間と、どっかの有翼種が自分達の子供を作りたいって情熱燃やして出来上がったのが人工有翼種。しかし!愛の力で出来た人工有翼種を、人間は私利私欲の為に改造し、人間の操り人形にしてしまった!それで有翼種は怒って人間を追っ払って『壁』を作っちまったと。」

護「はぁ。」

カルロス「『壁』が出来たのは人工種と人間が源泉を攻めたからでは?」

カナン「色んな伝説があるんだよ。」

ターさん「何にせよ人間って悪役なんだね」

護「そうだねぇ」

カナン「とにかく人工有翼種が暮らした街がダアトでね。もしその遺跡を見つけたらイェソド中の大ニュースになるかもしれない」

カルロス、護を見て指差しながら「…以前、護を探知してた時に、人工建造物が沢山ある場所を探知したけれども…あれは何だったのか」

護「お」

ターさん「お」

カルロス、カナンに「何かそのダアトの特徴というか、決め手になるものは」

カナン「んー?そうだねぇ」と考えて「伝説通りなら、多分、その御剣っていう人が作った人工種の研究所か何かの跡があるんじゃないかなぁ」

カルロス「なるほど」

護、カルロスに「人型探知機の血が騒ぐ?」

カルロス「…んん?まぁ…確認はしてみたい。」

ターさん「じゃあ明日、行ってみようか」

護「行こう!面白そうだ!」


暫し後、カナンの店から出て来る護たち。カルロスは石茶石が沢山入った布袋を持っている。

カナン、見送りのセフィリアに「ちょっと行って来る。彼らの木箱が見たい」

護、セフィリアに「ランチすごく美味しかったです!」

カルロス「色々とご馳走になりました。ありがとうございます。」

ターさん「また来ます!」と言いつつ歩きながらカナンに「木箱は図書館の裏庭に置いてあります。」

カナン「そんなとこに置いとくと、誰かに持っていかれるぞ」と笑う

ターさん「アレを持っていかれても」

カルロス、布袋を大事そうに持って歩きつつ、嬉しそうに護に「…こんなに石茶石をもらってしまった」

護「よかったなー」

カナン、カルロスに「石茶で何かワカラン事があったら聞いておくれ。」と話しつつ、一同は図書館の中へ。

カルロス「しかし立派な図書館ですね。」

カナン「ここのオススメはこんなデッカイ『鉱石大図鑑』だ。見ごたえがある。」

護「それは絶対見たい」と言いつつ裏庭の木箱の所に来る

カナン「これか!」

護「うん。」と言いつつカルロスと2人で木箱に入る

ターさん、それを吊り上げて「こんな感じです!」

カナン、笑って「ステキだ!流石は採掘師だ!」

護「カナンさん笑ってるし!」

カナン「皆、カッコイイぞ!」

ターさん「じゃあカナンさん、また!」

カナン「いつでもおいで!」

護「はーいっ!」と手を振る。

カルロス「また来ます!」

ターさん、空へ飛び立つ。

カナン、それに向かって「かーっこいい!」と叫ぶ。



そして、翌日…。

カルロスと護入りの木箱を吊り下げて飛んでいるターさん。天気が悪くなり周囲が曇って来る。

ターさん「そろそろ死然雲海だ」と言い「ダアト見つかるといいね」

探知を掛けているカルロス「見つけても、かなり遠いので今日は行けないが」

ターさん「いいよ。とにかく探知したいんだろ」

カルロス「うむ。ちょっと確認したいんだ」と言い「とりあえずこのまま直進」

護「人型ナビ大活躍」

カルロス「うるさい」

カルロス、暫し探知をかけて「…しかしホントに遺跡が多いな」

護「頑張れカルさん。ダアト見つけてニュースになろう」

カルロス、探知しつつ「あの時感じた人工建造物の場所は…」と考えて「そうだ湖だ!湖を基点として探知をすれば…いいが…」と言い、「あの湖は雲海の向こうなんだよな。ターさん、一旦止まって」

ターさんが停止するとカルロスはエネルギー全開で、本気モードで探知する。

護「おお」

ターさん「雲海越え探知か!」

カルロス、暫し探知をかけて「お!湖あった!…この湖を基点に…。んー、僅かに感じる、あの時の感覚。」と言い、黒石剣を手に取り「多分、恐らくダアトはあっちの方、かもしれない!」と黒石剣で方角を指し示す。

ターさん「何て曖昧な」

護「カルさんには珍しく推測で終わった」

カルロス「何せ雲海のエネルギーが不安定で」

ターさん「そうだねぇ。この先、かなり濃くなってるし。」と言い「また日を改めて来ようか。次回は早朝から」

カルロス「そうしよう。」

ターさん「んじゃ、雲海切りの練習しよう、カルさん。」

カルロス「うむ」と言うと、エイッと黒石剣で雲海切りをすると視界が拓ける。

ターさん、その中に着地。カルロス、再度雲海切りをする。周囲が更に拓ける。

ターさん「さて採掘だー。」

護は近くのケテル鉱石柱に近づくと、コンコンと叩いてから、活かし切りしてガンと切り落とすと、それを担いで周囲を見て「あれ。カルさんどこ行った。カルさーん!」

すると護の後ろの方から「護!」と言う声。振り向くとカルロスが走って来て「美味い石、採ったぞ!」と手に持った石を見せつつ喜々として「石茶では爽快石って呼ばれる奴だ。このエネルギー、いい感じだろ?!」

護「う、うん。」

カルロス「お前にはワカラン。」と言うと木箱へ走って行く。

護も鉱石を担いだまま木箱へ走りつつ「って俺の採ったケテル石も見てくれよ!いい感じだろ?!」

カルロス「うん。まぁまぁ」

護「って!じゃあアンタ探知してくれよ!売れる石!」

カルロス、探知をかけて「…アレだ!」と鉱石柱の所へ走って行き「コレ!」と石を叩く

護「えー。それ違うよこっちだよ」と別の柱を叩く。

カルロス「お前、私の探知が信頼できんってのか!」

護「アンタの探知は美味い石じゃん!俺は売れる石が」

カルロス「コレ売れるって!ほら妖精がニコニコしてる!」

ターさん爆笑


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