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紺碧の採掘師

第8章 03

2020.06.15 05:06

その頃、カルロスはターさんの木箱に乗って吊り下げ飛行中。

カルロス「…んー…。」と唸ると「ちょっと誤算が発生。黒船に見つかった。流石は私の後継機。」

護「アンタに珍しく探知ミスとか?」

カルロス「いや。しかし後継機なのだから本来は雲海越えが出来る筈なのに…向いてる方向が違う!管理とベッタリくっつきやがって全く…。」

ターさん「なになにどしたん?」

カルロス「とりあえず、アンバーが物凄い速度でこっちにブッ飛んでくる。船の燃料が心許無いので採掘して持って行こう。」と言い「ターさん、ちょっとあっちへ」と方向指示する

ターさん「ほいさー」

カルロス「護、採掘するぞ」

護、妖精と一緒に「ほい?」(・∀・)

カルロス「…お前こんな時に妖精と遊んでんじゃねぇ!」

護「遊んでねぇよ!交流してんだよ!」

ターさんはそんな二人が載った木箱を吊り下げて飛んでいく

カルロス「よーしこの辺で、雲海切りだ!」と立ち上がる。

護「ほいさー」という言葉と同時に護&カルロス雲海切り。すると周囲の霧が晴れて下の崖の木立の中に光るものが見える

カルロス「ターさんあそこ!」

ターさん「…って飛び降りたら?」

カルロス「なるほど!」と言うと木箱から飛び降りる。続いて護も飛び降りる。

護、イェソド鉱石の層がある崖下に走りつつ「行きます!」と言うと白石斧でガンガンと鉱石に斧の刃を入れ、ゴロンと塊を採る

カルロスも黒石剣でクラスター状の塊を切り取る。

ターさんも木箱を置くと、やや崖上の方の鉱石を切り採る。

妖精はポリポリと鉱石の欠片を食べている。

護「イェソド鉱石の採掘って、ラクだー!」

カルロス「だな。石材用じゃないから多少荒く採っても問題ない。」

ターさん「でも大事に採ってあげた方がエネルギー上がるよ」

そしてあっという間に木箱がイェソド鉱石で一杯になる。

護「よーし。お土産が出来た。」

カルロス「いいタイミングでアンバーが来た。」

ターさん「じゃあ出迎えに行くか。木箱に乗って」

護「ほいさ!」カルロスと護は鉱石山積みの木箱の端に立ち乗りする。ターさん、それを吊り下げて飛び立つ

護(皆に会える…ちょっと恥ずかしいな…)とニコニコ


アンバーでは

マリア「近づいてきた、もう少し…わぁ、凄い!」と至極嬉しそう

ネイビー「…どしたの?」

マリア、ニコニコしつつ「行けば分かるの!速度を落として!」

剣菱「…何が何やら」

穣「あ。霧が晴れて来た。」

マリア「この辺りで止まって!もうすぐ来るから」

ネイビー「はーい。停船します。」

穣「ん。…なんか飛んでる…ええ?!」

剣菱「ええ?!」

穣「護!」と前方を指差す

透「護だぁぁぁ!」その騒ぎにメンバー達がブリッジに次々と入って来る

マゼンタ「ほぁー…飛んでるぅ」遠くからターさんが吊り下げる木箱に乗って護たちがやって来るのが見える。

ネイビー「人が飛んでる!」

マリア、船窓の一番前に行き「すごい、ホントに有翼種だ、ホントに翼がある!」

悠斗「なんてこった…」

剣宮「それよりあれイェソド鉱石ですよ!燃料、持ってきてくれたぁぁ」

マリア「さすがカルロスさん、そこまで探知したのね…。」

穣「なんつー登場の仕方を…。」

健「かぁっこいーい!」


ターさんはアンバーのブリッジ前方に近づきつつ「こんにちはーはじめましてー」

護「みんなー久しぶりぃー!」

カルロスは仏頂面で立っている。


アンバー船内では剣菱が「出迎えだ皆!」

穣「上、上だ護!」と言うと右手で上を指し示す「上部甲板、行くぞみんな!」と言いブリッジから走り出る。


護「ターさん、船の上へ。」

ターさん「了解。」と言うとアンバーの上部甲板の方へ飛びつつ「これが君達の採掘船か…。凄いね、思ってたよりずっと大きい」

その時、アンバーの甲板のハッチが開くと、穣たちが出て来て「護!」と手を振る

護「穣さん!」

ターさんはその近くに木箱を降ろす。護とカルロス、甲板に着地。

同時に穣が護に「護ううう!!」と叫びつつ駆け寄り護をハグする。続いて透も駆け寄り穣ごと護をハグする。

穣「お前…もう二度と会えんと思った」と言い、護の肩を掴むと「無事で良かった!」

護「ゴメン、心配かけた。皆、元気そうで良かった!」と言うと「俺、川に流された後、この人に助けてもらったんだ」と言いターさんを自分の傍に連れて来ると「有翼種のターメリックさん。」

ターさん「初めまして。ターメリック・エン・セバスと申します。」

護「今、この人の家にお世話になってる。彼が居なかったら俺は死んでたかも」

穣、ターさんの手を取り、固い握手をしつつ「護を助けてくれて、本当に、本当にありがとう。俺は十六夜穣と申します。」

ターさん、穣と握手しつつ「ようこそ、死然雲海へ。」

穣「死然…やっぱり、ここが?」

ターさん「ここは死然雲海というエリア。」と言うと、護に「護君、彼は何番目のお兄さん?」

護「次男だよ。コッチが末子」と透を指差す

透「十六夜透と申します。どうぞ宜しく」

ターさん「ああ、スイーツが好きだっていう」

護「そうそう。」と言い「あ、ところで燃料用の鉱石採って来たよ!」

穣「うんうん!もしかしてアイツが探知してくれたのかな!」とカルロスを指差す

護「そうそう!アイツが探知した!」

穣、カルロスに「アンタも無事だったかー!」

カルロス「…護と、ターさんのお蔭で無事だった。」

穣「ほぅ!じゃあ早速、中へ!…怪力メンバー」

悠斗&健「了解!」と言うと木箱を抱えて中に入れようとした所で

悠斗「わぁ!こいつ、あの時の!」と驚く。妖精がポンと悠斗の頭に乗る。

カルロス「鉱石の妖精だ。」

悠斗&健「妖精?!」

カルロス「私と護を助けてくれた奴らだ。」

悠斗「これが?」

健、妖精に「あ、ありがとう…」

マリア「かわいい…。」そんな話をしつつ一同はハッチから船内に降りる。

護、穣に「鉱石だけコンテナに移してくれ。鉱石の下に箱があって、そこに荷物とか入ってるから」

穣「悠斗、頼むわ」

悠斗「ほいさ!」

穣、護達に「お前らはとにかくブリッジへ。船長が待ってる」

護「うん。ターさん、カルさん、こっちだ」と2人を呼び、通路への階段を降りていく。

穣「カルさん…?」

護は通路を小走りに走ってブリッジへ。後に続くターさんたち

ブリッジの入り口には剣菱が立っていて「護!」

護「船長!」

剣菱、護に駆け寄ると肩を抱いて「お前、良く無事で…!」

護「大変ご迷惑をおかけしました!」

剣菱、護を真っ直ぐ見ると「なんだ随分と元気だな。あれから一体どうなったんだ?」

護「彼に助けて頂きまして」とターさんを紹介する「有翼種のターメリックさんです。」

剣菱「おお…。私は人間の剣菱と申します」と言い「有翼種。本当に飛ぶんだな、いや驚いた!」

ターさん「私も人間にお会いしたのは初めてです。」と言い「そして人間と人工種が乗る採掘船も初めて見ました。有翼種の採掘船とは全然違う」

剣菱「有翼種の採掘船?」

護「彼も採掘師なんです。俺達は今、向こうでターさん達と採掘師をしています。」

剣菱「ええ?」と驚いて「お前、採掘が嫌だったんじゃ」

護「今は楽しい!向こうの採掘はこっちと全然違うんです。この斧が採掘道具」

穣「それ、採掘に使う奴だったのか!」

護「うん。白石斧っていうんだ。カルさんは黒石剣だけど。」

するとカルロスが黒石剣をホルダーから取り出す。

穣「それ!」

護「これイェソド鉱石の変種なんだってさ。」

すると剣菱が「え、イェソド鉱石?!」

ターさん「黒石剣は人間が触っても大丈夫ですよ。」

剣菱「よ、よかった。」と言い「ちなみにアンタも無事でよかった。」とカルロスを見る。

カルロス「ところでアンバーはなぜここへ?」

剣菱「アンタと護に会いに来た。アンタはどうして黒船から逃げたんだ?」

カルロス「…護の所へ行きたかった。」

穣「なんで」

カルロス「まぁ、黒船という狭い世界を飛び出して新しい世界に行きたかった、という所かな。」

穣「俺達も同じだ。護やアンタが行った世界に行ってみたくて飛び出した。可能性を広げたくて」

すると護が「可能性…。」と呟いて「あっ、なぁカルさん!船が来たよ船が!これで木箱でターさんに運んでもらわなくても移動が出来る、しかも大量の石を運べる!長距離飛べるから、あらゆる所で石を採って色んな所で売れる!」

カルロス「まぁ、それはそうだが。」と言うと「私はターさんのような個人採掘師として立ちたい。それでアンバーや有翼種の採掘船と契約するというならアリだが。」

護「なるほ。するとやっぱり船が要るねぇ。」

すると穣が「ちょ、ちょい待て。…あらゆる所で石を採って売るって。」

護「例えばケテル石なんか、ジャスパー側では鉱砂しか採れなくて貴重だけどイェソドだと鉱石柱が生えててメジャーな石材なんだよ!逆にマルクト石はジャスパー側だとメジャーな石だけどイェソドでは滅多にない貴重な石だし。アッチとコッチを橋渡しするような仕事が出来たらいいなあと。」

剣菱「…。」驚いた目で護を見る

穣「それだ。…護、それだよ!それ、やろう!」

護「でも俺、やっぱりなぁ…。」

穣「何か問題が?」

護「実は俺さ、ターさんの家の近くに自分の家を建てたいんだ。だからアンバーと一緒にってのは無理だなぁ。」

穣「…は?」と驚いて「お前が、家?」

護「うん。俺、イェソドで暮らすから。」と言い「俺の家はアンバーがイェソドに来た時の休憩所にするんだ!」とニコニコする。

穣たち、唖然として護をみる。

穣「…お前、変わったな…。」と呟く

護「そういや穣さん、どうしたのその服!キチンとして」

穣「えっ。…まぁ、その」

護「似合ってる!やっぱりアンバーの採掘監督は穣さんだよね!」

穣たち「…。」唖然。

透「こんな明るい護、初めて見た…。」

穣「お前、ホントに変わったな…。向こうで何があったん!?」

護「何って…」

カルロス「ドンブラコしたな」

剣菱「ま、護。…お前一体、どんな所で暮らしてるんだ?お前が暮らす世界を是非見たい!これから早速そこへ」

カルロス「その前に一つ問題がある。」

剣菱「何か」

カルロス「黒船が管理を連れてウロウロしてる。私がずっと探知妨害してるがしつこい。このままだと奴らもイェソドに来る。」

剣菱たち「!」

護「それだけは許さない。黒船はともかく、管理は絶対イェソドに入れない!」

カルロス「ならば、護。一旦ジャスパーに戻らないか?」

護「え?」

カルロス「向こうには貯金がある。それで船を買って、そこからスタートした方がいい。」と言い「今なら向こうに戻れる。」

護「…でも」

カルロス「そもそもお前の願いは死然雲海を跨いでアッチとコッチを繋ぐ採掘だろう?管理を気にしてたら何も出来ないぞ。」

護「確かにな…。」

カルロス「どのみちアンバーは向こうへ戻って管理と対峙する事になる。その覚悟で来た筈。であれば私も行くしかない…。自分がやりたい事の為に最善を尽くしてその結果どのようになろうとも、今はイェソドというもう一つの生きる世界があるし。」と言い「私は管理に捕まって向こうへ行く。そしていつか必ず船を買ってターさんの所へ戻る」

護「ってカッコつけて何言ってんだか全くもう。」

カルロス「うるさい。お前なんか何の覚悟も無くただドンブラコと川を流れてイェソドに来ただけだろうが」

護「しょうがないじゃん!」

カルロス「お前は向こうに戻っても大して責められんからいいよなぁ!」

護「ていうかアンタよく黒船から逃げたよね!俺なら絶対出来ないんですけど!」

穣、唖然としながら「…護、マジで変わったな…。」

透、あははと笑いつつ「もう護じゃないみたいだ…。」

ターさん「うん。随分変わった。」

透、ターさんに「やっぱ、そう思います?」

ターさん「だって護君と出会った当初は。」と言い、ため息ついて「人工種って、どんだけ過酷な状況で生きてるのかと思いました。」

穣たち「・・・・・・・・・・。」

穣(わかるわ…)

そこへ剣菱が「そうか…。…もう一つの生きる世界。そう、それだ…。」と言い「選択の幅が狭い、『これしかない』と思ってしまえば怖くて挑戦できなくなるが、沢山の可能性、沢山の選択肢があるとなれば…。」と言い「アンタと護は今、それを拓いてくれたんだ!例え全てを失ったとしてもまた新たな人生を生きられるという事を!」

カルロス「全て失った訳じゃ無い。貯金をこれから取りに戻る!」

護「よしわかった俺も一緒に行ってやる。だって家を建てたい。」

カルロス「その前に船だ!私とお前で一緒に買うんだ!」

護「えー。アンタ黒船勤続13年だから1隻くらい買えるんじゃ」

カルロス「ってお前、人の船にタダで乗るつもりだったのか!ドンブラコめ」

護「わかりましたキッチリ折半しませう!」

剣菱「…もしもし。あのな、船買うのって大変だぞ。俺の知り合いに中古船の販売屋いるから紹介…ってアンタら操船免許どうすんだ。免許ないと船買えないぞ」

カルロス「やはりそうなのか。」

護「免許とらなきゃー」

透「でも人工種は船長になれないし、船なんか買えるのかな」

護、透に「やってみなきゃわっからーん!」

穣、笑って「すげぇ…護の言葉とは思えん」と言うと護の肩を抱きよせて「可愛くなったなぁ、お前!」

護「はぁ?」

カルロス「そろそろ黒船の探知妨害するのがめんどくさくなってきた。」

穣「話しながらよく妨害できるわな。」と言うと剣菱に「じゃあ船長、Uターンしてジャスパーに戻りますか」

剣菱「うん」

護「え」

穣「だってお前ら船買いに行くんだろ!…自分の船を持つまでアンバーに乗ってろよ。」

剣菱「2人で船を持たせろと騒ぐより、皆で騒いだ方がいい。それでダメだったらまた皆で逃亡すりゃいい。」

ターさん「…俺も一緒に行った方がいいのかな?」

護「いや、ターさんはイェソドで待っててほしい。俺、ターさんにはまだ、向こうの世界を見せたくないんだ。」

穣「んー、でも一緒に行った方がいいんでは? 管理の奴らに有翼種の実在の証明が出来るし」

剣菱「どうだかな。いきなり連れて行くと混乱するかもだぞ。実在の証明ならこの2人で十分だと思う。」と護を指差し「こんな長期間、行方不明だったのに元気いっぱいな奴らを見たら、有翼種の存在を否定も出来ないだろ。」

穣「確かに。まぁ管理とのゴタゴタに彼を巻き込むのも申し訳ない。」

ターさん「分かった。じゃあ妖精と一緒にイェソドで待ってる。」

護「船買ったらすぐ戻るから!」

穣「ってかウチの船、また来ますんで、その時こそイェソドへ。」

ターさん「ほい。それじゃ木箱持って家に戻るね。君達の船、楽しみにしてるよ!」と言い「では船長、失礼します」

剣菱「貴方のお蔭で本当に助かりました。またお会いしましょう!」

悠斗「木箱はこっちです。」と案内する。通路を歩いて階段の方へ。

採掘準備室の一画に置いてある木箱。ターさん、中から弁当袋を取り出すと、護に「弁当いる?」

カルロス「要る。ハラが減った…。」

ターさん「だよね。じゃあこれ」と言い葉に包んだおにぎりをカルロスと護に渡す。

護「水筒はいいよ。」

ターさん「ほい。じゃあ俺は途中で妖精と一緒に雲海ランチして帰ろうっと。」

そこへ穣が「採掘口開けまーす。」と言い操作盤のレバーを引くと採掘口が開く

ターさん「おお!スゴイ!」

護「今度、人工種の採掘をターさんに見せてあげるよ」

ターさん「楽しみにしてる」と言って妖精が入った木箱を吊り下げて飛び上がり、開いた採掘口の真上へ

カルロス「必ず戻って来る。それまで暫しのお別れです。」

ターさん「うん。待ってる」と笑うと「頑張って!じゃあまたねー!」と言うと手を振りつつ採掘口から降下して外へ。アンバーの一同も手を振って見送る。

護「またね、ターさん!」

ターさんを見送ってから穣「よっしゃ。じゃあ黒船や管理の皆様に会いに戻るか!」と言いつつレバーを引いて「採掘口閉じるぞー」

カルロス「ではそろそろ探知妨害やめてもいいかな」

穣「続けてもいいよ!」

カルロス「流石にちと疲れた。これ食ってもいいか」とおにぎりを指差す

穣「ん、そうだ!ここで軽食タイムにしよう。皆がおにぎりとか食べ終わるまで探知妨害続行よろしう!」

カルロス「なんだと…。仕方がない食べながら妨害してやる。」

穣「さっすがあ!」


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