【映画紹介】“ANNA”リュック・ベッソン
本日の映画紹介として、リュック・ベッソン監督作品“ANNA”を取り上げます。
今後、ロシア関係の映画を当ブログで取り上げるテーマの一つに加えます。
第1回目にご紹介するのは、現在上映中のフランス人映画作家・監督リュック・ベッソンによる“ANNA”. 日本語題名は「アナ」となっていて、ロシアに親しんでいる我々には、なぜ「アンナ」にしなかったのか、日本配給元のキノフィルムズに聞きたいところです。 はじめからこういう扱いだと、翻訳もいい加減だろうと思うと、さにあらず。 1980年―1990年の犯罪多発時代のロシア語を忠実に和訳している訳者の仕事にまず敬意を払います。
映画冒頭のモスクワの風景は、まさに1980年代のそれ。 VFXを使ったのか、本当にロシア国外にモスクワの街並みを再現してロケしたのか、とにかくリアル。また、出てくる車の時代考証も正確で、NIVA4X4がパトカーとしてたくさん出てきますが、これはかなりのロシア好きか、ロシア人そのものが映画制作に関わっているか、どちらかでしょう。 もっともモスクワ市警はNIVAをパトカーには使っていなかったと思いますが。
映画のストーリーは奇想天外で、一人の女性が自由を求めてKGBとCIAの二重スパイとして両者を手玉にとる、というお話。 この監督はどうやら強い女性がお好きなようで、彼の作品は1995年の「レオン」から女性キャラがシリーズ化されています。
1990-1995年のモスクワというのは、ある意味無法地帯で、殺人などは枚挙に暇がない時代でした。 私が定宿として使っていたラディソンホテルの支配人が暗殺されたとか、上院議員がクレムリンの近くの道路で信号待ちをしている時に、バイクから狙撃され即死、とかもうそういうニュースが毎日のように流れていました。 したがい、この映画は007映画的サスペンス要素が実はこの時代背景においては実にリアルな話に聞こえます。
ソ連時代末期からロシア勃興の初期をモスクワで過ごした方々には、絶対のおすすめ映画です。 それにしても、フランス人のロシアへの理解、共感というのは群を抜いています。 アメリカ人には絶対に作れない映画だと感心しましたが、その理由はぜひ、この映画を見て感じてください。